チェストー! 伊佐高龍舟チーム!!

奏音 美都

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第十章 同じ空の下

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 夕飯はピザとバーベキューにするので、2班に分かれて行動することになった。私と由美子と真紀と勇気くんと海くんと田中くんがピザ班、郁美と涼子と前田くん、吉元くん、本田くん、中村くんがバーベキュー班となった。先生方は、生徒主体でやるのがいいからと、食事が出来たら呼ぶように言われた。おいしい役だ。

 私たちピザ班は材料を持って、まずは炊事場へと向かうんだけど、ピザ釜が熱されるまでは時間がかかるらしいので、薪担当の勇気くんと田中くんには先にピザ釜に行って火をつけてもらうことにした。

「さぁ、張り切って作るがよ!」

 由美子が腕まくりをして、ピザ生地をジップロックから粉を敷いたまな板の上に乗せる。それを4等分し、それぞれ丸めてこねると綿棒で伸ばし、ピザ生地を作る。

「うわっ、海くん薄く伸ばしたねぇ。すごく大きい!」
「ねぇねぇ、あたしの見てぇ。ハート形のピザ!」
「かーわいい! あたしも真紀みたいに、違う形にしてみるがよ」

 みんなでわいわい言いながらピザ生地を捏ねるのは楽しい。生地が出来上がるとピザソースを塗り、用意してきた材料から好きなものを選び、載せていく。材料にはソーセージ、ハム、ベーコン、玉ねぎ、ピーマン、ブロッコリー、アスパラガス、トマト、コーン、ゆで卵、モッツァレラチーズなんかがあって、どれを入れるか迷う。4枚のピザが用意できたところで、勇気くんが様子を見に来た。

「そっちはどうが? おっ、ピザ旨そうだが!!」
「へへーっ、上手くできてるでしょ?」

 ピザ釜の方はまだ完全には準備できていないけど、出来たピザから持っていくということで、勇気くんに運んでもらうことにした。由美子は生地の入った袋を3つ用意してくれていたので、合計12枚作った。

「ちょ……バーベキューもあるのに、大丈夫かなぁ。作りすぎじゃない?」
「いや。男が9人もいるし、これぐらい楽勝だろ。残ったら明日の朝食べればいいし」
「そうだね。朝ごはんにも出来るし、いっか」

 この時は知らなかったのだ。男子高校生の食欲がどんなものなのか……

 最後の4枚を持ってピザ釜に行くと、ちょうどピザをピールという道具にピザを載せ、釜に入れているところだった。田中くんはずっと薪を見ててくれたせいか、顔が真っ赤だった。

「十分火が通ってるけぇ、すぐに焼けるがよ!」

 田中くんの言う通り、ピザは2分もしないうちにすぐ焼け、次々に入れていく。

「凄い! 本格的だねぇ」
「田中くん、ピザ職人みたい!!」

 女子たちの熱烈な視線を受け、田中くんの顔は耳まで真っ赤になっていた。焼きあがったピザをテントまで運ぶと、バーベキューの方も焼き上がっているようで、白い煙が上がり、肉の焼ける匂いが漂ってきて、食欲を刺激された。

「ピザ焼けたよー!」
「おぉっっ!!」
「すげー、旨そう!!」

 歓声が上がり、みんなに取り囲まれていると、その輪の外から声がかかった。

「前田ぁ、吉元ぉ、肉焼けたけぇ、皿持ってきて!」

 郁美は、バーベキュー班をしっかり取りまとめていた。

 全てのピザが運ばれると、1.5リットルのペットボトルからコップにお茶をそそぐ。

「ほれ、『チェストー!ズ』チームリーダー!!」

 勇気くんの掛け声に、みんなからイェーイと歓声が湧く。

「えっ、もう大会は終わったんだし勇気が……」
「なん言うとぉが! 俺らん中では海ぃがチームリーダーじゃろが! それにこれは、優勝祝勝会でもあるがよ!!」

 勇気くんの強い後押しに海くんが立ち上がると、少し俯いてから顔を上げた。

「みんな、いさドラゴンカップではそれぞれの力を出し切って優勝という結果を残せたことを、誇りに思う。そして、チームを支えてくれた樋口さんと今村さんもありがとう」

 由美子と真紀は互いに顔を見合わせ、微笑んだ。

「松元先生と赤井先生も、ボート部の道具を貸し出してくれたり、スペースを使わせてくれたり、実践練習の際には付き添いまでしていただき、本当にありがとうございました」

 松元先生と赤井先生はピクニックチェアに座り、その間にクーラーボックスを置き、そこから出したビールを手に腕を上げた。スゥッと息を吸い、海くんが叫ぶ。

「『チェストー! 伊佐高龍舟チーム!!』優勝!! かんぱーい!!」
『かんぱーい!!』

 みんながコップを持ちあげる中、勇気くんががっくりと項垂れる。

「やられたがよ……」

 そんな勇気くんに海くんがニヤッと笑い、コップを突き出す。

「乾杯!」
「乾杯!」

 紙コップがぶつかり、お茶が揺れた。
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