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第十章 同じ空の下
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曽木発電所遺構から来た道を戻る形で車が進み、途中でお昼ご飯を食べたり、スーパー『タイヨー』に寄った後、楠本川渓流公園に着いた時には、既に4時を回っていた。
「時間だいぶ過ぎちゃったけど、大丈夫かなぁ」
「みんなそんなもんだが! 時間なんてぇ、てげてげで大丈夫が」
相変わらず勇気くんは気楽だ。
キャンプサイトまで車の乗り入れができるということで、駐車場を通り越し、キャンプサイトを目指す。緑の芝が一面に生えた、開けた広大な土地全てがキャンプサイトになっていた。目の前には渓流が流れていて、せせらぎが聞こえてきて気持ち良い。そこでは、親子連れが遊びに来ていた。
楠の下に張られた大きな2つのテントのうちの1つから人が出てくるのが見えた。前田くんと吉元くんだ。
「もぉテント張ったか! わっぜ、早いなぁ!」
「あんたたちゃなんね! 今何時やと思ちょっと? キャンプは薩摩時間やなかどー!」
前田くんが松元先生の真似をして、それが凄くそっくりで、「松元先生、すいませんでしたー」「もぉ遅刻しませーん!」とみんなでふざけ合った。
今回、私たちは4つのテントを張ることになっている。女子5人が寝るための女子用テントが1つと男子7人が寝るための男子用テントが2つ。それと、松元先生と赤井先生が寝るための教師用のテントが1つ。今回もまた、赤井先生は巻き添えになっていた。
よく見ると、少し離れたところに小さめのテントが設営されていて、それが先生たちのテントみたいだった。
勇気くんのお母さんが先生のテントに行って挨拶をすませると、みんなで車から買い物袋やテント、クーラーボックス等のキャンプ用品を全て下ろした。
「じゃ、明後日ぇ迎えに行くでぇ」
「おぉ」
『ありがとうございました』
「おばちゃん、ありがとね!」
みんなで見送った後、これからテントの設営……なんだけど、郁美が私の腕を引っ張った。
「勇気と海くんおるし、他にも男子おるから大丈夫やけぇ、あたしたちは女子テントに荷物置いたら、ここらへんの散策すんね! 美和子に見せたいとこがいっぱいあるがよ」
えっ、いいのかなぁ?
勇気くんを見上げると、手で軽く追い払われた。
「おぉ美和子ぉ、郁美に案内してもらえ」
「俺たちは大丈夫だから」
海くんにも後押ししてもらい、まずは女子テントに荷物を置くため、テントの前で声をかける。
「開けるねー」
『ええよー』
ジッパーを開き、蚊が入ってこないように素早く中に入ると、既に涼子と由美子、真紀もいた。
「あれ? もしかしてあたしたちがどべだったね?」
「そうがよー。まぁ、テントは男衆がやってくれたけぇ、なぁんもしとらんけどね」
6人用のテントの中は意外と広く、5人で寝ても全然余裕だ。女の子らしく、みんなきちんと荷物をまとめて隅に置いてるし、快適なスペースとなっていた。
「これから美和子案内しようと思うけど、みんなも行くね?」
『行く行く!』
「時間だいぶ過ぎちゃったけど、大丈夫かなぁ」
「みんなそんなもんだが! 時間なんてぇ、てげてげで大丈夫が」
相変わらず勇気くんは気楽だ。
キャンプサイトまで車の乗り入れができるということで、駐車場を通り越し、キャンプサイトを目指す。緑の芝が一面に生えた、開けた広大な土地全てがキャンプサイトになっていた。目の前には渓流が流れていて、せせらぎが聞こえてきて気持ち良い。そこでは、親子連れが遊びに来ていた。
楠の下に張られた大きな2つのテントのうちの1つから人が出てくるのが見えた。前田くんと吉元くんだ。
「もぉテント張ったか! わっぜ、早いなぁ!」
「あんたたちゃなんね! 今何時やと思ちょっと? キャンプは薩摩時間やなかどー!」
前田くんが松元先生の真似をして、それが凄くそっくりで、「松元先生、すいませんでしたー」「もぉ遅刻しませーん!」とみんなでふざけ合った。
今回、私たちは4つのテントを張ることになっている。女子5人が寝るための女子用テントが1つと男子7人が寝るための男子用テントが2つ。それと、松元先生と赤井先生が寝るための教師用のテントが1つ。今回もまた、赤井先生は巻き添えになっていた。
よく見ると、少し離れたところに小さめのテントが設営されていて、それが先生たちのテントみたいだった。
勇気くんのお母さんが先生のテントに行って挨拶をすませると、みんなで車から買い物袋やテント、クーラーボックス等のキャンプ用品を全て下ろした。
「じゃ、明後日ぇ迎えに行くでぇ」
「おぉ」
『ありがとうございました』
「おばちゃん、ありがとね!」
みんなで見送った後、これからテントの設営……なんだけど、郁美が私の腕を引っ張った。
「勇気と海くんおるし、他にも男子おるから大丈夫やけぇ、あたしたちは女子テントに荷物置いたら、ここらへんの散策すんね! 美和子に見せたいとこがいっぱいあるがよ」
えっ、いいのかなぁ?
勇気くんを見上げると、手で軽く追い払われた。
「おぉ美和子ぉ、郁美に案内してもらえ」
「俺たちは大丈夫だから」
海くんにも後押ししてもらい、まずは女子テントに荷物を置くため、テントの前で声をかける。
「開けるねー」
『ええよー』
ジッパーを開き、蚊が入ってこないように素早く中に入ると、既に涼子と由美子、真紀もいた。
「あれ? もしかしてあたしたちがどべだったね?」
「そうがよー。まぁ、テントは男衆がやってくれたけぇ、なぁんもしとらんけどね」
6人用のテントの中は意外と広く、5人で寝ても全然余裕だ。女の子らしく、みんなきちんと荷物をまとめて隅に置いてるし、快適なスペースとなっていた。
「これから美和子案内しようと思うけど、みんなも行くね?」
『行く行く!』
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