53 / 72
第九章 異空間へのトリップ
5
しおりを挟む
まだお腹は空いてないけど、ちょっと喉が渇いてきた。
「ねぇっ! ここ寄ろっっ!!」
神社の近くに和風の綺麗な建物の『かっぱ茶屋』というのを見つけ、私たちはそこで休憩することにした。家紋のようなカッパのマークが可愛い。
あ、あれ……『ガラッパ茶屋』じゃないんだ。
店内に入ると、食事スペースの他にお土産コーナーも設けられていて、たくさんのカッパグッズが置かれている。そこで何より目を惹かれたのが、『福姫神社』だった。可愛いカッパの人形が祀られた、小さな神社だ。私と郁美はきゃぁきゃぁ言いながら、鈴を鳴らした。
「はよなんか食わんね。腹ぁ減ったがよ!」
勇気くんに文句を言われ、お土産コーナーに未練を残しつつ、テーブルに座った。お品書きを見て、郁美と声を上げる。
「迷うがー」
「どれも美味しそう!」
かき氷にどら焼き、アイスクリームを挟んだどら焼きもある。注文を聞きにきたおばちゃんがお茶を出しながらニコニコした。
「うちのかっぱどらはフランシーズっちゅう有名な店のグランドパティシエがぁプロデュースしとってぇ、TVでも紹介されたことも何回もあるんね」
「えっ、そうなんだ! じゃあどら焼きにしようかな」
「あぁ、でもぉこの甘酒のかき氷も女の子には人気よぉ。美肌効果があって綺麗になるっちゅう言われてるがよ。しかも、ここでしか食べれん夏限定ね」
『甘酒かき氷にする!!』
郁美と興奮して叫ぶと、海くんが目を丸くしてから笑った。
「ふたりとも、目の色変わったね」
結局、私と郁美は氷甘酒、勇気くんは紫芋アイスどら、海くんは小豆と芋どら、勇気くんのお母さんは抹茶あずきのかき氷を頼んだ。
甘酒のかき氷の上にはイチゴ、みかん、パイナップルが載っていて、見た目も可愛くてテンションが上がる。口に入れるとすぐに舌の温度に蕩かされて、ほんのりとした自然の甘みが口内に広がっていき、心までほんわりしてくる。
「うわーっ、綺麗になってく気がするがよ! ほらぁ、お肌スベスベ!!」
「気のせいじゃぁ、郁美」
「わっぜ、ムカツクー!」
郁美が勇気くんの手を取り、持っていたアイスドラにかぶりつく。
「んーっ、これも美味しい!!」
「うわっ、だったら郁美んかき氷も寄越すがー!」
「こらぁ、あんたたちゃ高校生にもなってなんね、げんなかよぉ」
お母さんがハァと大きく息を吐き、クスクスと笑う。
「鈴木さんも、食べてみたい?」
海くんが私の前に、食べかけのかっぱどらを向けた。
こ、この近さでいうと、手で受け取るよりも口で齧る方が自然、だよね。
口を近づけ、端っこを遠慮がちに食べる。小豆とお芋の甘みにしっとりとしたどら焼きの皮がすごくあっていて、ほっこりした幸せな気分に包まれた。
「うん、美味しい……」
「俺もそれ、食べてみていい?」
言われて、氷甘酒の載ったお盆を海くんの目の前へと滑らせた。
さすがに、スプーン持ってってアーンとかはしないよね。うん、しない。
海くんが、さっきまで私の使っていたスプーンでかき氷を食べてる口元を見てたら、なんか恥ずかしくなって俯いた。
「ねぇっ! ここ寄ろっっ!!」
神社の近くに和風の綺麗な建物の『かっぱ茶屋』というのを見つけ、私たちはそこで休憩することにした。家紋のようなカッパのマークが可愛い。
あ、あれ……『ガラッパ茶屋』じゃないんだ。
店内に入ると、食事スペースの他にお土産コーナーも設けられていて、たくさんのカッパグッズが置かれている。そこで何より目を惹かれたのが、『福姫神社』だった。可愛いカッパの人形が祀られた、小さな神社だ。私と郁美はきゃぁきゃぁ言いながら、鈴を鳴らした。
「はよなんか食わんね。腹ぁ減ったがよ!」
勇気くんに文句を言われ、お土産コーナーに未練を残しつつ、テーブルに座った。お品書きを見て、郁美と声を上げる。
「迷うがー」
「どれも美味しそう!」
かき氷にどら焼き、アイスクリームを挟んだどら焼きもある。注文を聞きにきたおばちゃんがお茶を出しながらニコニコした。
「うちのかっぱどらはフランシーズっちゅう有名な店のグランドパティシエがぁプロデュースしとってぇ、TVでも紹介されたことも何回もあるんね」
「えっ、そうなんだ! じゃあどら焼きにしようかな」
「あぁ、でもぉこの甘酒のかき氷も女の子には人気よぉ。美肌効果があって綺麗になるっちゅう言われてるがよ。しかも、ここでしか食べれん夏限定ね」
『甘酒かき氷にする!!』
郁美と興奮して叫ぶと、海くんが目を丸くしてから笑った。
「ふたりとも、目の色変わったね」
結局、私と郁美は氷甘酒、勇気くんは紫芋アイスどら、海くんは小豆と芋どら、勇気くんのお母さんは抹茶あずきのかき氷を頼んだ。
甘酒のかき氷の上にはイチゴ、みかん、パイナップルが載っていて、見た目も可愛くてテンションが上がる。口に入れるとすぐに舌の温度に蕩かされて、ほんのりとした自然の甘みが口内に広がっていき、心までほんわりしてくる。
「うわーっ、綺麗になってく気がするがよ! ほらぁ、お肌スベスベ!!」
「気のせいじゃぁ、郁美」
「わっぜ、ムカツクー!」
郁美が勇気くんの手を取り、持っていたアイスドラにかぶりつく。
「んーっ、これも美味しい!!」
「うわっ、だったら郁美んかき氷も寄越すがー!」
「こらぁ、あんたたちゃ高校生にもなってなんね、げんなかよぉ」
お母さんがハァと大きく息を吐き、クスクスと笑う。
「鈴木さんも、食べてみたい?」
海くんが私の前に、食べかけのかっぱどらを向けた。
こ、この近さでいうと、手で受け取るよりも口で齧る方が自然、だよね。
口を近づけ、端っこを遠慮がちに食べる。小豆とお芋の甘みにしっとりとしたどら焼きの皮がすごくあっていて、ほっこりした幸せな気分に包まれた。
「うん、美味しい……」
「俺もそれ、食べてみていい?」
言われて、氷甘酒の載ったお盆を海くんの目の前へと滑らせた。
さすがに、スプーン持ってってアーンとかはしないよね。うん、しない。
海くんが、さっきまで私の使っていたスプーンでかき氷を食べてる口元を見てたら、なんか恥ずかしくなって俯いた。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

優等生の裏の顔クラスの優等生がヤンデレオタク女子だった件
石原唯人
ライト文芸
「秘密にしてくれるならいい思い、させてあげるよ?」
隣の席の優等生・出宮紗英が“オタク女子”だと偶然知ってしまった岡田康平は、彼女に口封じをされる形で推し活に付き合うことになる。
紗英と過ごす秘密の放課後。初めは推し活に付き合うだけだったのに、気づけば二人は一緒に帰るようになり、休日も一緒に出掛けるようになっていた。
「ねえ、もっと凄いことしようよ」
そうして積み重ねた時間が徐々に紗英の裏側を知るきっかけとなり、不純な秘密を守るための関係が、いつしか淡く甘い恋へと発展する。
表と裏。二つのカオを持つ彼女との刺激的な秘密のラブコメディ。

クールな生徒会長のオンとオフが違いすぎるっ!?
ブレイブ
恋愛
政治家、資産家の子供だけが通える高校。上流高校がある。上流高校の一年生にして生徒会長。神童燐は普段は冷静に動き、正確な指示を出すが、家族と、恋人、新の前では

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる