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第九章 異空間へのトリップ
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からりと晴れ上がった青空の下、おばあちゃんの家の前に1台のワンボックスカーが停まった。おばあちゃんに手を振られて、運転席から勇気くんのお母さんが出てきた。
「こん前はおいもよがっで温泉さぁ連れでっでくれで、あいがとさげもした」
「いえいえ、私もうちのおばあちゃん連れてくついでだったし、美和子ちゃんにも湯之尾温泉連れてってあげたかったから、良かったがよ」
「今日はぁ、運転いわっぜしんどいけど、頼んもす」
「心配せんでええがよ。うちの勇気ぃと比べたら、美和子ちゃんなんて大人しいもんやけぇ、楽ね」
「おばさん、すみません。どうぞよろしくお願いします」
「はいはい、じゃ乗って」
おばさんに急かされてドアを開けてスライドすると、助手席には勇気くんが、真ん中の席には郁美が乗っていた。
「美和子ぉ、おはよー! 昨日は大雨だったけぇ、どうなるか思ったけど、晴れて良かったー!! 『チェストー!ズ』のみんなでキャンプなんて、楽しみね!」
「ほんと、楽しみ!」
郁美の隣に座ると荷物を下に下ろし、二人で微笑み合う。
「勇気くんもおはよう」
「ふぁぁ、おはよう」
勇気くんは大きなあくびをすると助手席の窓を開け、ずっとおばあちゃんと話し込んでるおばさんに向かって叫んだ。
「母ちゃーん、はよ行かんと! いつまでも喋っとると昼になるがよ」
「はいはい、分かっとるね! じゃあ、おばあちゃん、またねー」
その声を聞き、窓を開けておばあちゃんに手を振った。
「おばあちゃん、いってきまーす!」
「美和子ちゃん、楽しんでねぇ」
車は伊佐高校の方に向かって走っていた。
「これから、海ぃ拾っていくがよ」
勇気くんの言葉に頷いた。
団地の下には既に海くんが立っていた。スライドドアが開くと、『おはよう』と声を掛け合う。海くんは、後ろの席に1人で座った。
「そいじゃ、出発ー!」
「チェストー!ズ」のメンバーとは楠本川渓流自然公園で午後3時に集合することになってるんだけど、私たちはその前に伊佐の観光名所を回る予定だ。
「これから行く曽木の滝は、川内川《せんだいがわ》の上流にあって『東洋のナイアガラ』ぁ言われてるとこよ」
「へぇ。じゃあ曽木の滝っていさドラゴンカップの会場に近いの?」
運転席から、おばさんの声が飛んできた。
「いやいやー、あっこからは車で20分ぐらいかかるだがよ」
そっか、結構遠いんだ……
車はいつの間にか『ふぁみり庵はいから亭』の前を過ぎていた。そこから国道267号に入る。川内川を越えると、まっすぐに開けた豪快な道が続く。
「この道は、こがねロード呼ばれてるがよ」
夏休みにも関わらず、あまり車の量がなく快適に進んで行く。
車窓を眺めていると、大きな案内板が見えてきた。丸太を何本も並べて作った流線型の大きな看板で、『東洋のナイアガラ 曽木の滝公園 2.4Km』とある。いよいよ近づいてきたんだと思うと、胸が高鳴った。
車が広い駐車場へと入っていく。混んでいたらどうしようかと心配だったけど、平日のせいか、まばらだった。勇気くんのお母さんが、『もみじ祭り』の際には、ここにおさまりきらないぐらいの車で溢れかえるのだと話してくれた。そんなことを聞いていると、紅葉の時期にも来たくなる。駐車場の近くにはお土産屋さんとお食事処が三軒並んで建っていて、いずれも鯉料理が名物なのだそうだ。鯉って、どんな味がするんだろう……
綺麗に整備された公園の中を通って滝へと向かっていると、途中になだらかな階段が続く展望台があった。展望台に上ると、そこから曽木の滝が一望できた。広いスペースにベンチも置かれていて、そこからゆっくり座って景色を眺めることができるようになっているのだけど、私たちは手摺まで歩いて行き、そこから滝を眺めた。
持ってきたパンフレットを確認すると、幅210m、高さ12mとある。カナダのトロントからナイアガラの滝は車で1時間半ほどの距離にあるため、本物のナイアガラの滝を見たことがある。その時には幅も高さも桁違いで、水飛沫が遠くに設置されている柵までかかるほどの大迫力に圧倒された。それに対し、曽木の滝はひとつの滝というより小さな滝が幾つも横に連なっているような印象で、確かに幅や高さではナイアガラの滝に劣るかもしれない。けれど、岩がところどころに剥き出しになっていて、四方八方から勢い良く水が流れていて、美しく幻想的な光景を魅せていた。
「昨日たくさん雨が降ったから、いつもより迫力があるね!」
「あぁ、そうだなぁ。美和子ぉ、ラッキーだなぁ」
もっと近くで見てみようということで、展望台を下り、その先へと向かった。
「うわーっっ!!」
思わず歓声を上げる。
「こん前はおいもよがっで温泉さぁ連れでっでくれで、あいがとさげもした」
「いえいえ、私もうちのおばあちゃん連れてくついでだったし、美和子ちゃんにも湯之尾温泉連れてってあげたかったから、良かったがよ」
「今日はぁ、運転いわっぜしんどいけど、頼んもす」
「心配せんでええがよ。うちの勇気ぃと比べたら、美和子ちゃんなんて大人しいもんやけぇ、楽ね」
「おばさん、すみません。どうぞよろしくお願いします」
「はいはい、じゃ乗って」
おばさんに急かされてドアを開けてスライドすると、助手席には勇気くんが、真ん中の席には郁美が乗っていた。
「美和子ぉ、おはよー! 昨日は大雨だったけぇ、どうなるか思ったけど、晴れて良かったー!! 『チェストー!ズ』のみんなでキャンプなんて、楽しみね!」
「ほんと、楽しみ!」
郁美の隣に座ると荷物を下に下ろし、二人で微笑み合う。
「勇気くんもおはよう」
「ふぁぁ、おはよう」
勇気くんは大きなあくびをすると助手席の窓を開け、ずっとおばあちゃんと話し込んでるおばさんに向かって叫んだ。
「母ちゃーん、はよ行かんと! いつまでも喋っとると昼になるがよ」
「はいはい、分かっとるね! じゃあ、おばあちゃん、またねー」
その声を聞き、窓を開けておばあちゃんに手を振った。
「おばあちゃん、いってきまーす!」
「美和子ちゃん、楽しんでねぇ」
車は伊佐高校の方に向かって走っていた。
「これから、海ぃ拾っていくがよ」
勇気くんの言葉に頷いた。
団地の下には既に海くんが立っていた。スライドドアが開くと、『おはよう』と声を掛け合う。海くんは、後ろの席に1人で座った。
「そいじゃ、出発ー!」
「チェストー!ズ」のメンバーとは楠本川渓流自然公園で午後3時に集合することになってるんだけど、私たちはその前に伊佐の観光名所を回る予定だ。
「これから行く曽木の滝は、川内川《せんだいがわ》の上流にあって『東洋のナイアガラ』ぁ言われてるとこよ」
「へぇ。じゃあ曽木の滝っていさドラゴンカップの会場に近いの?」
運転席から、おばさんの声が飛んできた。
「いやいやー、あっこからは車で20分ぐらいかかるだがよ」
そっか、結構遠いんだ……
車はいつの間にか『ふぁみり庵はいから亭』の前を過ぎていた。そこから国道267号に入る。川内川を越えると、まっすぐに開けた豪快な道が続く。
「この道は、こがねロード呼ばれてるがよ」
夏休みにも関わらず、あまり車の量がなく快適に進んで行く。
車窓を眺めていると、大きな案内板が見えてきた。丸太を何本も並べて作った流線型の大きな看板で、『東洋のナイアガラ 曽木の滝公園 2.4Km』とある。いよいよ近づいてきたんだと思うと、胸が高鳴った。
車が広い駐車場へと入っていく。混んでいたらどうしようかと心配だったけど、平日のせいか、まばらだった。勇気くんのお母さんが、『もみじ祭り』の際には、ここにおさまりきらないぐらいの車で溢れかえるのだと話してくれた。そんなことを聞いていると、紅葉の時期にも来たくなる。駐車場の近くにはお土産屋さんとお食事処が三軒並んで建っていて、いずれも鯉料理が名物なのだそうだ。鯉って、どんな味がするんだろう……
綺麗に整備された公園の中を通って滝へと向かっていると、途中になだらかな階段が続く展望台があった。展望台に上ると、そこから曽木の滝が一望できた。広いスペースにベンチも置かれていて、そこからゆっくり座って景色を眺めることができるようになっているのだけど、私たちは手摺まで歩いて行き、そこから滝を眺めた。
持ってきたパンフレットを確認すると、幅210m、高さ12mとある。カナダのトロントからナイアガラの滝は車で1時間半ほどの距離にあるため、本物のナイアガラの滝を見たことがある。その時には幅も高さも桁違いで、水飛沫が遠くに設置されている柵までかかるほどの大迫力に圧倒された。それに対し、曽木の滝はひとつの滝というより小さな滝が幾つも横に連なっているような印象で、確かに幅や高さではナイアガラの滝に劣るかもしれない。けれど、岩がところどころに剥き出しになっていて、四方八方から勢い良く水が流れていて、美しく幻想的な光景を魅せていた。
「昨日たくさん雨が降ったから、いつもより迫力があるね!」
「あぁ、そうだなぁ。美和子ぉ、ラッキーだなぁ」
もっと近くで見てみようということで、展望台を下り、その先へと向かった。
「うわーっっ!!」
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