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第八章 いさドラゴンカップ
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記念レースでも一致団結して頑張り、タイムとしては決勝の時よりもいい結果を残せたものの、さすがに招待チームは強くて歯が立たず、私たちは9チーム中6位となり、決勝に進むことは出来なかった。
それでも、やり切ったという充実感に包まれていた。
全てのレースが終わると休憩を挟み、閉会式を迎える。各部門の結果が発表され、授賞式が行われた。
「コミュニティミックスの部優勝、『チェストー! 伊佐高龍舟チーム!!』チーム」
いや、そこはチームが既に入ってるんだから、二回目のそれは必要ないと思うけど……
そんなツッコミを心の中で入れながら、メンバーで壇上を目指す。
「おめでとう!」
「やったが!!」
そんな声を掛けてもらいながら列の一番後ろを歩いていると、視界にある人の姿が入り、慌てて腕を取った。
「松元先生も、一緒にお願いします!!」
私の声を聞き、みんなが振り返って立ち止まると松元先生を囲んだ。
「先生も一緒に上がるが!!」
「そうそう! 松元先生も俺たちのチームね!!」
松元先生は「おいはええがよ」と言ってたものの、みんなの熱に押されて一緒に壇上に上がった。
チームリーダーである海くんに賞状とトロフィーが渡され、各メンバーにメダルが授与される。
本当に私たち……優勝したんだ。
感激していると、すぐ隣に立った海くんが私にしか聞こえない小さな声でボソッと告げた。
「鈴木さん、ありがとう」
「ッッ……こちら、こそ……ありがとう」
みんな、みんなありがとう。本当に、嬉しい……
このチームの一員になれて、良かった。
早速優勝の報告をするため、賞状とトロフィーを掲げ、それぞれがメダルを手にした集合写真をインスタにアップした途端、秒速で『いいね!』がババーッとつき、『おめでとう!』『すごいじゃん!』『日本でもドラゴンボート大会あるんだ!』といったコメントがついた。
「インスタ、アップしたが?」
郁美にスマホを覗き込まれ、よく見えるように画面を見せていると、それを聞いて「チェストー!ズ」のメンバーがわらわらと集まってきて、気付くとみんなに囲まれていた。
「なん、これ!? 全部英語で読めんがよ!!」
「美和子さん、ほんとにカナダ住んどんね!」
「てか俺ら、国際的に有名になったってことじゃろ。わっぜ、すげー!!」
すると、WhatsAppからビデオチャットがかかってきた。日本では殆どの人がメッセージのやり取りにLINEを利用してるけど、北米やヨーロッパではWhatsAppの方が圧倒的にユーザーが多い。基本的な機能はあまり変わらないけど、WhatsAppにはスタンプがなかったり、既読機能がなかったり、タイムラインがないというような細かい違いはある。
「Hello?」
『Congrats, Miwa!!』
リサからお祝いの言葉をもらう。『ミワコ』という発音が難しいため、カナダの友達には『ミワ』と呼んでもらってる。
「うおぉーっ、カナダ人の女が映っとるが!」
「金髪碧眼!!」
「わっぜ、すげー! 伊佐とカナダが繋がっとるー!!」
「西郷どん、『かすたどん』やれやれ!」
「アホぉ! 通じるわけないだが」
私が喋ってる側から、画面を覗き込む男子達が浮き足立っているのを感じる。
それにしても、こんな時間になんでみんな起きてるの……
時計を見ると、今は午後2時半。トロントは夜中の1時半だ。
『フフッ……今ね、パジャマパーティーしてて、ジェシカとサナも一緒なの』
リサがそういった途端、いきなり画面にジェシカとサナが現れて手を振った。
「今度は黒人の女の子とインド系の女の子! まこち、カナダは国際色豊かねぇ」
郁美が感心したようにホォと息を吐いた。
『ミワー、優勝おめでとう! 日本にもドラゴンボート大会があるなんて、知らなかった! トロントで果たせなかった夢を日本で叶えるなんてミワ、凄い! 来年は期待してるからね!』
『カナダの大会と全然雰囲気が違うのね。私も出てみたい!!』
早口で捲し立てる彼女達の英語が全く聞き取れず、みんなキョトンとした顔をしていた。
「ジャパンしか分からんかったがよ。なんて言ったが?」
「日本にドラゴンボート大会があるの知ってびっくりしたって言ってて、ぜひ参加してみたいって」
そう言った途端、男子たちから『うぉぉぉ!!』と歓声が上がる。私からスマホを奪い、勇気くんが画面に映りこむ。
「ウェルカム、ウェルカムー。ウェルカムトゥーイサ!!」
「おぉー、西郷どんやるが!」
「英語、英語!!」
とても高校生とは思えないレベルだ。画面の3人が顔を見合わせ、クスクスと笑った。
『みんな面白いわね。日本人の男の子って興味ある。ところで、今日もインスタにアップされてたカッコいい男の子、どこにいるの?』
カッコいい、男の子?
考えてると、前田くんが私に顔を向けた。
「なぁ、今なんて言ったが?」
「えっと……インスタにアップした集合写真に写ってるイケメンはどこ? って聞かれたんだけど……」
勇気くんが手を挙げる。
「それ、俺のことだが!」
「さっき勇気は話したのに、なーんも言われんかったが。いくら外国とはいえ、勇気がイケメンに見えることは地球がひっくり返ってもないね」
郁美が即座に否定する。
「え、もしかして俺のことが?」
「うんにゃー! 俺のことだろ」
「んなわけあるが!」
男子達で揉めてるうちに、リサが思い出したように「Oh!」と叫んだ。
『ほら! 学校のイベントでミワがメイドになって、その隣でバトラー(執事)やってた男の子!!』
『ミワ』、『メイド』、『ボーイ』の単語が繋がって、一斉にみんなが後ろを振り向いた。遠く離れた木に凭れ掛かって寝ている海くんに、視線がジーッと注がれる。
「イケメンが全世界共通認識って、不公平だが……」
勇気くんの悲しい声が、静かに落とされた。男子達は黙って頷いた。
それでも、やり切ったという充実感に包まれていた。
全てのレースが終わると休憩を挟み、閉会式を迎える。各部門の結果が発表され、授賞式が行われた。
「コミュニティミックスの部優勝、『チェストー! 伊佐高龍舟チーム!!』チーム」
いや、そこはチームが既に入ってるんだから、二回目のそれは必要ないと思うけど……
そんなツッコミを心の中で入れながら、メンバーで壇上を目指す。
「おめでとう!」
「やったが!!」
そんな声を掛けてもらいながら列の一番後ろを歩いていると、視界にある人の姿が入り、慌てて腕を取った。
「松元先生も、一緒にお願いします!!」
私の声を聞き、みんなが振り返って立ち止まると松元先生を囲んだ。
「先生も一緒に上がるが!!」
「そうそう! 松元先生も俺たちのチームね!!」
松元先生は「おいはええがよ」と言ってたものの、みんなの熱に押されて一緒に壇上に上がった。
チームリーダーである海くんに賞状とトロフィーが渡され、各メンバーにメダルが授与される。
本当に私たち……優勝したんだ。
感激していると、すぐ隣に立った海くんが私にしか聞こえない小さな声でボソッと告げた。
「鈴木さん、ありがとう」
「ッッ……こちら、こそ……ありがとう」
みんな、みんなありがとう。本当に、嬉しい……
このチームの一員になれて、良かった。
早速優勝の報告をするため、賞状とトロフィーを掲げ、それぞれがメダルを手にした集合写真をインスタにアップした途端、秒速で『いいね!』がババーッとつき、『おめでとう!』『すごいじゃん!』『日本でもドラゴンボート大会あるんだ!』といったコメントがついた。
「インスタ、アップしたが?」
郁美にスマホを覗き込まれ、よく見えるように画面を見せていると、それを聞いて「チェストー!ズ」のメンバーがわらわらと集まってきて、気付くとみんなに囲まれていた。
「なん、これ!? 全部英語で読めんがよ!!」
「美和子さん、ほんとにカナダ住んどんね!」
「てか俺ら、国際的に有名になったってことじゃろ。わっぜ、すげー!!」
すると、WhatsAppからビデオチャットがかかってきた。日本では殆どの人がメッセージのやり取りにLINEを利用してるけど、北米やヨーロッパではWhatsAppの方が圧倒的にユーザーが多い。基本的な機能はあまり変わらないけど、WhatsAppにはスタンプがなかったり、既読機能がなかったり、タイムラインがないというような細かい違いはある。
「Hello?」
『Congrats, Miwa!!』
リサからお祝いの言葉をもらう。『ミワコ』という発音が難しいため、カナダの友達には『ミワ』と呼んでもらってる。
「うおぉーっ、カナダ人の女が映っとるが!」
「金髪碧眼!!」
「わっぜ、すげー! 伊佐とカナダが繋がっとるー!!」
「西郷どん、『かすたどん』やれやれ!」
「アホぉ! 通じるわけないだが」
私が喋ってる側から、画面を覗き込む男子達が浮き足立っているのを感じる。
それにしても、こんな時間になんでみんな起きてるの……
時計を見ると、今は午後2時半。トロントは夜中の1時半だ。
『フフッ……今ね、パジャマパーティーしてて、ジェシカとサナも一緒なの』
リサがそういった途端、いきなり画面にジェシカとサナが現れて手を振った。
「今度は黒人の女の子とインド系の女の子! まこち、カナダは国際色豊かねぇ」
郁美が感心したようにホォと息を吐いた。
『ミワー、優勝おめでとう! 日本にもドラゴンボート大会があるなんて、知らなかった! トロントで果たせなかった夢を日本で叶えるなんてミワ、凄い! 来年は期待してるからね!』
『カナダの大会と全然雰囲気が違うのね。私も出てみたい!!』
早口で捲し立てる彼女達の英語が全く聞き取れず、みんなキョトンとした顔をしていた。
「ジャパンしか分からんかったがよ。なんて言ったが?」
「日本にドラゴンボート大会があるの知ってびっくりしたって言ってて、ぜひ参加してみたいって」
そう言った途端、男子たちから『うぉぉぉ!!』と歓声が上がる。私からスマホを奪い、勇気くんが画面に映りこむ。
「ウェルカム、ウェルカムー。ウェルカムトゥーイサ!!」
「おぉー、西郷どんやるが!」
「英語、英語!!」
とても高校生とは思えないレベルだ。画面の3人が顔を見合わせ、クスクスと笑った。
『みんな面白いわね。日本人の男の子って興味ある。ところで、今日もインスタにアップされてたカッコいい男の子、どこにいるの?』
カッコいい、男の子?
考えてると、前田くんが私に顔を向けた。
「なぁ、今なんて言ったが?」
「えっと……インスタにアップした集合写真に写ってるイケメンはどこ? って聞かれたんだけど……」
勇気くんが手を挙げる。
「それ、俺のことだが!」
「さっき勇気は話したのに、なーんも言われんかったが。いくら外国とはいえ、勇気がイケメンに見えることは地球がひっくり返ってもないね」
郁美が即座に否定する。
「え、もしかして俺のことが?」
「うんにゃー! 俺のことだろ」
「んなわけあるが!」
男子達で揉めてるうちに、リサが思い出したように「Oh!」と叫んだ。
『ほら! 学校のイベントでミワがメイドになって、その隣でバトラー(執事)やってた男の子!!』
『ミワ』、『メイド』、『ボーイ』の単語が繋がって、一斉にみんなが後ろを振り向いた。遠く離れた木に凭れ掛かって寝ている海くんに、視線がジーッと注がれる。
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