43 / 72
第八章 いさドラゴンカップ
3
しおりを挟む
時間となり、ライフジャケットを装着し、2列になって招集場へと向かう。スタッフから乗艇前の確認を受け、配艇係が割り当てた艇に乗り込む。私たちの艇は青い綺麗な龍艇だった。しっかりと太鼓を脚に挟み、バチを握ると顔を上げた。
私たちがつくのは2レーンめ。とは言っても、1レーンと5レーンは空いているので、一番端っこになる。競技レーンは互いに平行し、各チームは決められたレーンの中央を進まなければいけない。レーンを外れた場合は、失格またはペナルティとなることもある。もしレーンを外れてしまった場合は、他のチームの邪魔にならないよう、速やかに停止しなければならない。なので、パドリングにおいて『停止』を覚えることは事故を起こさないためにも重要なのだ。停止後、決められたレーンに戻ればレースに復帰することが出来る。けれど、それは避けたい事態だ。
艇がレース開始位置に着いた。3レーンのチームも開始位置へと近づいていて、4レーンのチームは艇に乗り込んだところだった。レース開始を待つ間に緊張が高まってきて、手に汗が滲んでくる。
全ての艇がレース開始位置に着いた。耳を澄まし、スターターの合図に意識を集中する。騒めきが、遠のいていく。
「パドルを上げー」
「みんなー、構えてー!」
私の合図に『はいっ!』と漕手から声が上がる。
「レディー……」
「行くよー」
『おぉ!』
みんなの気迫を、感じる。
『Go!』
一斉にパドルが水につく。
「チェストォー!!」
勇気くんが唸り、一枚目のパドルを大きく深く漕いでいく。隣の郁美も歯を食いしばり、みんながいいスタートを切ろうとしてる。
グッとバチを握り、太鼓を叩く。
「いーーち、にーー、さーーん」
ッ……早い。
私のカウントより、勇気くんのパドリングが微妙に早い。おそらく、気合いが入ってるがゆえに、艇を前に進ませようとパドリングが知らず知らずのうちに早くなってしまってるんだ。続く漕手が合わせようとするから、勇気くん側の漕手のパドリングが郁美側のとずれている。海くんが顔を上げ、私に視線を投げた。
「ペーサー! カウント聞いてっ!!」
あえて勇気くんとは呼ばず『ペーサー』と呼ぶと、勇気くんがハッとした。
「いーち、にー、いーち、にー」
すると、私の声に合わせて勇気くんもカウントを取り始めた。
『いちっ! いちっ! いちっ!』
いつの間にか、漕手全員が声を揃えてカウントしてる。みんなの息が合ってきた。まだ最初のレースだからか、体力もありそうだ。視界の端に隣の艇の龍尾が見えてきた。
追いつける!!
「ラストせーの!」
「チェストー!」
『チェストー!!』
皆が叫び、最後の力を振り絞る。
「いちっ! にっ! さんっ!」
隣の艇の舵取りが、漕手が見えてくる。
どうか、追いついて……
祈るような気持ちで声を張り上げた。
ゴールを切った。
私たちの艇は隣のチームを追い越すことは出来なかった。ほんの、僅差だった。7チーム中、4チームが決勝に行くことができ、それはタイムによって決まる。私たちは、結果を待つことになった。
私たちがつくのは2レーンめ。とは言っても、1レーンと5レーンは空いているので、一番端っこになる。競技レーンは互いに平行し、各チームは決められたレーンの中央を進まなければいけない。レーンを外れた場合は、失格またはペナルティとなることもある。もしレーンを外れてしまった場合は、他のチームの邪魔にならないよう、速やかに停止しなければならない。なので、パドリングにおいて『停止』を覚えることは事故を起こさないためにも重要なのだ。停止後、決められたレーンに戻ればレースに復帰することが出来る。けれど、それは避けたい事態だ。
艇がレース開始位置に着いた。3レーンのチームも開始位置へと近づいていて、4レーンのチームは艇に乗り込んだところだった。レース開始を待つ間に緊張が高まってきて、手に汗が滲んでくる。
全ての艇がレース開始位置に着いた。耳を澄まし、スターターの合図に意識を集中する。騒めきが、遠のいていく。
「パドルを上げー」
「みんなー、構えてー!」
私の合図に『はいっ!』と漕手から声が上がる。
「レディー……」
「行くよー」
『おぉ!』
みんなの気迫を、感じる。
『Go!』
一斉にパドルが水につく。
「チェストォー!!」
勇気くんが唸り、一枚目のパドルを大きく深く漕いでいく。隣の郁美も歯を食いしばり、みんながいいスタートを切ろうとしてる。
グッとバチを握り、太鼓を叩く。
「いーーち、にーー、さーーん」
ッ……早い。
私のカウントより、勇気くんのパドリングが微妙に早い。おそらく、気合いが入ってるがゆえに、艇を前に進ませようとパドリングが知らず知らずのうちに早くなってしまってるんだ。続く漕手が合わせようとするから、勇気くん側の漕手のパドリングが郁美側のとずれている。海くんが顔を上げ、私に視線を投げた。
「ペーサー! カウント聞いてっ!!」
あえて勇気くんとは呼ばず『ペーサー』と呼ぶと、勇気くんがハッとした。
「いーち、にー、いーち、にー」
すると、私の声に合わせて勇気くんもカウントを取り始めた。
『いちっ! いちっ! いちっ!』
いつの間にか、漕手全員が声を揃えてカウントしてる。みんなの息が合ってきた。まだ最初のレースだからか、体力もありそうだ。視界の端に隣の艇の龍尾が見えてきた。
追いつける!!
「ラストせーの!」
「チェストー!」
『チェストー!!』
皆が叫び、最後の力を振り絞る。
「いちっ! にっ! さんっ!」
隣の艇の舵取りが、漕手が見えてくる。
どうか、追いついて……
祈るような気持ちで声を張り上げた。
ゴールを切った。
私たちの艇は隣のチームを追い越すことは出来なかった。ほんの、僅差だった。7チーム中、4チームが決勝に行くことができ、それはタイムによって決まる。私たちは、結果を待つことになった。
0
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる