チェストー! 伊佐高龍舟チーム!!

奏音 美都

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第八章 いさドラゴンカップ

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 時間となり、ライフジャケットを装着し、2列になって招集場へと向かう。スタッフから乗艇前の確認を受け、配艇係が割り当てた艇に乗り込む。私たちの艇は青い綺麗な龍艇だった。しっかりと太鼓を脚に挟み、バチを握ると顔を上げた。

 私たちがつくのは2レーンめ。とは言っても、1レーンと5レーンは空いているので、一番端っこになる。競技レーンは互いに平行し、各チームは決められたレーンの中央を進まなければいけない。レーンを外れた場合は、失格またはペナルティとなることもある。もしレーンを外れてしまった場合は、他のチームの邪魔にならないよう、速やかに停止しなければならない。なので、パドリングにおいて『停止』を覚えることは事故を起こさないためにも重要なのだ。停止後、決められたレーンに戻ればレースに復帰することが出来る。けれど、それは避けたい事態だ。

 艇がレース開始位置に着いた。3レーンのチームも開始位置へと近づいていて、4レーンのチームは艇に乗り込んだところだった。レース開始を待つ間に緊張が高まってきて、手に汗が滲んでくる。

 全ての艇がレース開始位置に着いた。耳を澄まし、スターターの合図に意識を集中する。騒めきが、遠のいていく。

「パドルを上げー」
「みんなー、構えてー!」

 私の合図に『はいっ!』と漕手から声が上がる。

「レディー……」
「行くよー」
『おぉ!』

 みんなの気迫を、感じる。

『Go!』

 一斉にパドルが水につく。

「チェストォー!!」

 勇気くんが唸り、一枚目のパドルを大きく深く漕いでいく。隣の郁美も歯を食いしばり、みんながいいスタートを切ろうとしてる。

 グッとバチを握り、太鼓を叩く。

「いーーち、にーー、さーーん」

 ッ……早い。

 私のカウントより、勇気くんのパドリングが微妙に早い。おそらく、気合いが入ってるがゆえに、艇を前に進ませようとパドリングが知らず知らずのうちに早くなってしまってるんだ。続く漕手が合わせようとするから、勇気くん側の漕手のパドリングが郁美側のとずれている。海くんが顔を上げ、私に視線を投げた。

「ペーサー! カウント聞いてっ!!」

 あえて勇気くんとは呼ばず『ペーサー』と呼ぶと、勇気くんがハッとした。

「いーち、にー、いーち、にー」

 すると、私の声に合わせて勇気くんもカウントを取り始めた。

『いちっ! いちっ! いちっ!』

 いつの間にか、漕手全員が声を揃えてカウントしてる。みんなの息が合ってきた。まだ最初のレースだからか、体力もありそうだ。視界の端に隣の艇の龍尾が見えてきた。

 追いつける!!

「ラストせーの!」
「チェストー!」
『チェストー!!』

 皆が叫び、最後の力を振り絞る。

「いちっ! にっ! さんっ!」

 隣の艇の舵取りが、漕手が見えてくる。

 どうか、追いついて……

 祈るような気持ちで声を張り上げた。

 ゴールを切った。

 私たちの艇は隣のチームを追い越すことは出来なかった。ほんの、僅差きんさだった。7チーム中、4チームが決勝に行くことができ、それはタイムによって決まる。私たちは、結果を待つことになった。
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