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第四章 「チェストー!ズ」始動
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帰り際、郁美が家まで送ってくれると言ったけど、海くんに送ってもらうことにしたから大丈夫だと話すと、郁美は「ほんならねぇ!」と手を振った。
海くんも自転車で来ていたので、並走しながら話をしようとするものの、車が通ったり、道が狭かったりするところは1列になったりすることもあるので、話が途切れ途切れになってしまう。
「鈴木さんの家の近くにある諏訪神社に寄って、話しようか」
海くんの提案に、頷いた。
伊佐にはここの他にも諏訪神社があるらしい。おばあちゃんは諏訪神社のことを「おすわさん」と呼んでいる。それを聞いて、伊佐のお年寄りにとって、神社はとても身近な存在なんだと感じた。
既に夕暮れが迫っていて、ミンミンゼミやアブラゼミに代わり、ヒグラシの少し寂しげなカナカナカナ……という鳴き声が響いていた。頭上を包み込むような鬱蒼と樹々が茂る坂道を自転車で駆け抜けていく。涼しい風が顔に当たって髪を揺らし、汗が滲み上がるそばからひいていくのを感じる。遠くからは、カラスの鳴き声が聞こえて来た。
赤く塗られた橋が目の前に現れ、幻想的な光景に胸をときめかせる。自転車をそこに停め、歩いて橋を渡って行くと、視界が徐々に開けていく。目の前の視界が全てクリアになった途端、息を呑んだ。
「綺麗……」
空一面が真っ赤に染まり、灰色とも紫とも形容しがたい雲が陰影を作り出し、まるでキャンバスのように見事な絵がそこに映し出されていた。もうそこに、どんな言葉を足すことも出来ず、私と海くんはただ立ち尽くし、自然が創り上げた美しい景色に見惚れた。
どれくらい経ったのか、空の明るさよりも家やビル、看板の灯りの方が強い光を放ち始めたのに気付き、改めて眼下の景色に視界を移した。
右側は田んぼを中心にして固まった家が並び、左側は家やビルがもっと並んでいて、ところどろこにスーパー、本屋、ガソリンスタンドの看板が見える。街並みを越すと形のいいこんもりとした山が聳え、その後ろにはなだらかな山脈の稜線がうっすらと見える。
「座ろうか」
海くんに声をかけられ、初めてそこにベンチが二つ置かれているのに気づいた。と同時に、背後にお社が祀られていることも。
「鈴木さん、話があったんでしょ」
「う、うん……」
頷いてからスカートを整え、既に座っている海くんの隣に少しスペースを空けて座った。改まった気持ちになり、緊張してしまう。
私は伊佐高の生徒じゃないし、海くんとも付き合いが長いわけでもないのに、こんなこと言うのは失礼かもしれない……
呼び出しておきながら今更躊躇していると、海くんが口を開いた。
「チームのこと、だよな。俺、メンバーに対して厳しすぎるよな……ごめん、自分でも気づいてはいるんだ」
海くん、私が何を言おうとしてたのか、分かってたんだ……
「そ、そうなの。私がこんなこと言える立場じゃないかもしれないけど、気になって。海くんも分かってると思うけど、ドラゴンボートはチーム競技だから、技術や体力も大切だけど、何よりチームワークが大切だから、このままじゃよくないと思う……」
「そうだよな。俺も分かってるんだけど、どうしてもドラゴンボートのこととなると熱くなっちゃって……ごめん」
「わ、私に謝る必要はないよ! でも、一度みんなでちゃんと話し合った方がいいかも」
「分かった。そうするよ……」
海くんも自転車で来ていたので、並走しながら話をしようとするものの、車が通ったり、道が狭かったりするところは1列になったりすることもあるので、話が途切れ途切れになってしまう。
「鈴木さんの家の近くにある諏訪神社に寄って、話しようか」
海くんの提案に、頷いた。
伊佐にはここの他にも諏訪神社があるらしい。おばあちゃんは諏訪神社のことを「おすわさん」と呼んでいる。それを聞いて、伊佐のお年寄りにとって、神社はとても身近な存在なんだと感じた。
既に夕暮れが迫っていて、ミンミンゼミやアブラゼミに代わり、ヒグラシの少し寂しげなカナカナカナ……という鳴き声が響いていた。頭上を包み込むような鬱蒼と樹々が茂る坂道を自転車で駆け抜けていく。涼しい風が顔に当たって髪を揺らし、汗が滲み上がるそばからひいていくのを感じる。遠くからは、カラスの鳴き声が聞こえて来た。
赤く塗られた橋が目の前に現れ、幻想的な光景に胸をときめかせる。自転車をそこに停め、歩いて橋を渡って行くと、視界が徐々に開けていく。目の前の視界が全てクリアになった途端、息を呑んだ。
「綺麗……」
空一面が真っ赤に染まり、灰色とも紫とも形容しがたい雲が陰影を作り出し、まるでキャンバスのように見事な絵がそこに映し出されていた。もうそこに、どんな言葉を足すことも出来ず、私と海くんはただ立ち尽くし、自然が創り上げた美しい景色に見惚れた。
どれくらい経ったのか、空の明るさよりも家やビル、看板の灯りの方が強い光を放ち始めたのに気付き、改めて眼下の景色に視界を移した。
右側は田んぼを中心にして固まった家が並び、左側は家やビルがもっと並んでいて、ところどろこにスーパー、本屋、ガソリンスタンドの看板が見える。街並みを越すと形のいいこんもりとした山が聳え、その後ろにはなだらかな山脈の稜線がうっすらと見える。
「座ろうか」
海くんに声をかけられ、初めてそこにベンチが二つ置かれているのに気づいた。と同時に、背後にお社が祀られていることも。
「鈴木さん、話があったんでしょ」
「う、うん……」
頷いてからスカートを整え、既に座っている海くんの隣に少しスペースを空けて座った。改まった気持ちになり、緊張してしまう。
私は伊佐高の生徒じゃないし、海くんとも付き合いが長いわけでもないのに、こんなこと言うのは失礼かもしれない……
呼び出しておきながら今更躊躇していると、海くんが口を開いた。
「チームのこと、だよな。俺、メンバーに対して厳しすぎるよな……ごめん、自分でも気づいてはいるんだ」
海くん、私が何を言おうとしてたのか、分かってたんだ……
「そ、そうなの。私がこんなこと言える立場じゃないかもしれないけど、気になって。海くんも分かってると思うけど、ドラゴンボートはチーム競技だから、技術や体力も大切だけど、何よりチームワークが大切だから、このままじゃよくないと思う……」
「そうだよな。俺も分かってるんだけど、どうしてもドラゴンボートのこととなると熱くなっちゃって……ごめん」
「わ、私に謝る必要はないよ! でも、一度みんなでちゃんと話し合った方がいいかも」
「分かった。そうするよ……」
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