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第四章 「チェストー!ズ」始動
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翌日からは夏休み間近にも関わらず、文化祭を終えたため通常授業になった。しかも、朝の課外授業もあるし、忙しい。
7限めを終えると、郁美と一緒にボート部の部室へと向かった。ちなみに顧問は松元先生なので、既にライフジャケットやパドルを借りる許可はもらっていた。
集まったのは半分ほどで、他の子は部活があって来られないということだった。郁美もこれからボート部の練習があるのだと話していた。
さすがにボート部の部室らしく、狭い室内にはライフジャケットがぎっしりと掛けられていて、3つのドラム缶にはそれぞれカヌー用、カヤック用、そしてドラゴンボート用のパドルが分けられて入っていた。水を使う競技のためか、部室は湿っぽくて生臭い匂いが充満していて息苦しい。
郁美はそんな部室の匂いになれてるせいか涼しい顔で、集まったメンバーにライフジャケットをハンガーから外して渡していった。
「はい。これがライフジャケットで、こっちがパドルね。パドルは海くんは背丈に合ったものがいいって言ってたけど、ここにあるんはみーんな同じ高さの木製のパドルしかないし、スポーツ協会に申請して借りるんも同じ感じよ」
せっかくパドルを借りたので、今集まっているメンバーだけで、昨日海くんから習った漕ぎ方の復習をすることになった。
グラウンドの空いているスペースを借り、昨日決めた順番に漕手が並ぶ。漕手は2列になって一方だけを漕ぐので、右側に座る漕手は右側を、左側の漕手は当然左側を漕ぐことになる。この時、どちらか一方の漕ぐ力が強いとボートは旋回してしまい、真っ直ぐに進まなくなる。そこを調整するのが舵取りの役だけど、もちろん力の均衡は揃っているのが理想的だ。
昨日みたいに座ろうとした本田くんに、海くんが声をかける。
「座るとパドルが漕げなくなるから、今日は立って練習しよう」
漕手が4人も欠けているので、かなり穴が空いている。
「悪いんだけど、補欠の2人も入ってくれるかな?」
海くんの指示に、由美子と真紀も緊張した面持ちでパドルを握って漕手に加わった。私が列の前に立ち、海くんは一番後ろに立つ。
漕手が舟側の手でパドルの上部グリップを握り、川側の手でパドルの下側シャフトを握る。漕ぐ時のポイントは、ゆっくりのリズムの時は大きく長く、早いリズムの時は 強く短く漕ぐことだ。
漕ぎ方は、4種類ある。前進するためのフォワードストローク、後進するためのバックストローク、横移動の為のドローストローク、プライストローク。それから、一番重要な、危機回避の為のストップだ。
太鼓を叩く代わりに手拍子を打ち、それに合わせてパドルを漕いでもらうことにした。正規のメンバーでないってこともあるし、立っての練習ということもあるし、グラウンドでみんなに注目されながら気恥ずかしさを感じることもあってか、みんなの動きがバラバラで息が合わない。
「何やってんだ本田! ちゃんと耳を集中して手のリズムに合わせて漕ぐんだ。樋口さんと今村さんも補欠だからって、大会に出ないとは限らないからしっかり漕いで!! 鈴木さんは、みんなが聞こえるぐらい、大きく手を叩きながら声も出して!!」
『は、はいっっ……』
海くんのダメ出しが何度も出され、日が暮れるまで練習が続けられた。
「じゃあ、今日の練習は終わり!」
その声を聞き、みんなの口から大きな息が吐き出される。私は掌が真っ赤になってヒリヒリし、声が掠れ、漕手のみんなは何度もパドルを漕がされたせいで腕が上がらなくなっていた。
それからも練習は重ねられたけど、平日はみんな部活が入ってたりして忙しく、メンバーが全員揃うことがない。
名前だけならと補欠メンバーに入った由美子と真紀は自分たちもメンバーに入れられて不満を募らせていたし、ドラゴンボート未経験の本田くんと中村くんは、
「こんなにキツイ練習があるって知っとったら、やらんかったがよ……」
と、陰で文句を言っていた。
どうしよう……
なんか、チームの雰囲気が悪くなってきちゃってる……
このままで大丈夫なのか、一抹の不安が過ぎった。
7限めを終えると、郁美と一緒にボート部の部室へと向かった。ちなみに顧問は松元先生なので、既にライフジャケットやパドルを借りる許可はもらっていた。
集まったのは半分ほどで、他の子は部活があって来られないということだった。郁美もこれからボート部の練習があるのだと話していた。
さすがにボート部の部室らしく、狭い室内にはライフジャケットがぎっしりと掛けられていて、3つのドラム缶にはそれぞれカヌー用、カヤック用、そしてドラゴンボート用のパドルが分けられて入っていた。水を使う競技のためか、部室は湿っぽくて生臭い匂いが充満していて息苦しい。
郁美はそんな部室の匂いになれてるせいか涼しい顔で、集まったメンバーにライフジャケットをハンガーから外して渡していった。
「はい。これがライフジャケットで、こっちがパドルね。パドルは海くんは背丈に合ったものがいいって言ってたけど、ここにあるんはみーんな同じ高さの木製のパドルしかないし、スポーツ協会に申請して借りるんも同じ感じよ」
せっかくパドルを借りたので、今集まっているメンバーだけで、昨日海くんから習った漕ぎ方の復習をすることになった。
グラウンドの空いているスペースを借り、昨日決めた順番に漕手が並ぶ。漕手は2列になって一方だけを漕ぐので、右側に座る漕手は右側を、左側の漕手は当然左側を漕ぐことになる。この時、どちらか一方の漕ぐ力が強いとボートは旋回してしまい、真っ直ぐに進まなくなる。そこを調整するのが舵取りの役だけど、もちろん力の均衡は揃っているのが理想的だ。
昨日みたいに座ろうとした本田くんに、海くんが声をかける。
「座るとパドルが漕げなくなるから、今日は立って練習しよう」
漕手が4人も欠けているので、かなり穴が空いている。
「悪いんだけど、補欠の2人も入ってくれるかな?」
海くんの指示に、由美子と真紀も緊張した面持ちでパドルを握って漕手に加わった。私が列の前に立ち、海くんは一番後ろに立つ。
漕手が舟側の手でパドルの上部グリップを握り、川側の手でパドルの下側シャフトを握る。漕ぐ時のポイントは、ゆっくりのリズムの時は大きく長く、早いリズムの時は 強く短く漕ぐことだ。
漕ぎ方は、4種類ある。前進するためのフォワードストローク、後進するためのバックストローク、横移動の為のドローストローク、プライストローク。それから、一番重要な、危機回避の為のストップだ。
太鼓を叩く代わりに手拍子を打ち、それに合わせてパドルを漕いでもらうことにした。正規のメンバーでないってこともあるし、立っての練習ということもあるし、グラウンドでみんなに注目されながら気恥ずかしさを感じることもあってか、みんなの動きがバラバラで息が合わない。
「何やってんだ本田! ちゃんと耳を集中して手のリズムに合わせて漕ぐんだ。樋口さんと今村さんも補欠だからって、大会に出ないとは限らないからしっかり漕いで!! 鈴木さんは、みんなが聞こえるぐらい、大きく手を叩きながら声も出して!!」
『は、はいっっ……』
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その声を聞き、みんなの口から大きな息が吐き出される。私は掌が真っ赤になってヒリヒリし、声が掠れ、漕手のみんなは何度もパドルを漕がされたせいで腕が上がらなくなっていた。
それからも練習は重ねられたけど、平日はみんな部活が入ってたりして忙しく、メンバーが全員揃うことがない。
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「こんなにキツイ練習があるって知っとったら、やらんかったがよ……」
と、陰で文句を言っていた。
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