チェストー! 伊佐高龍舟チーム!!

奏音 美都

文字の大きさ
20 / 72
第四章 「チェストー!ズ」始動

しおりを挟む
 翌日からは夏休み間近にも関わらず、文化祭を終えたため通常授業になった。しかも、朝の課外授業もあるし、忙しい。

 7限めを終えると、郁美と一緒にボート部の部室へと向かった。ちなみに顧問は松元先生なので、既にライフジャケットやパドルを借りる許可はもらっていた。

 集まったのは半分ほどで、他の子は部活があって来られないということだった。郁美もこれからボート部の練習があるのだと話していた。

 さすがにボート部の部室らしく、狭い室内にはライフジャケットがぎっしりと掛けられていて、3つのドラム缶にはそれぞれカヌー用、カヤック用、そしてドラゴンボート用のパドルが分けられて入っていた。水を使う競技のためか、部室は湿っぽくて生臭い匂いが充満していて息苦しい。

 郁美はそんな部室の匂いになれてるせいか涼しい顔で、集まったメンバーにライフジャケットをハンガーから外して渡していった。

「はい。これがライフジャケットで、こっちがパドルね。パドルは海くんは背丈に合ったものがいいって言ってたけど、ここにあるんはみーんな同じ高さの木製のパドルしかないし、スポーツ協会に申請して借りるんも同じ感じよ」

 せっかくパドルを借りたので、今集まっているメンバーだけで、昨日海くんから習った漕ぎ方の復習をすることになった。

 グラウンドの空いているスペースを借り、昨日決めた順番に漕手が並ぶ。漕手は2列になって一方だけを漕ぐので、右側に座る漕手は右側を、左側の漕手は当然左側を漕ぐことになる。この時、どちらか一方の漕ぐ力が強いとボートは旋回してしまい、真っ直ぐに進まなくなる。そこを調整するのが舵取りの役だけど、もちろん力の均衡は揃っているのが理想的だ。

 昨日みたいに座ろうとした本田くんに、海くんが声をかける。

「座るとパドルが漕げなくなるから、今日は立って練習しよう」

 漕手が4人も欠けているので、かなり穴が空いている。

「悪いんだけど、補欠の2人も入ってくれるかな?」

 海くんの指示に、由美子と真紀も緊張した面持ちでパドルを握って漕手に加わった。私が列の前に立ち、海くんは一番後ろに立つ。

 漕手が舟側の手でパドルの上部グリップを握り、川側の手でパドルの下側シャフトを握る。漕ぐ時のポイントは、ゆっくりのリズムの時は大きく長く、早いリズムの時は 強く短く漕ぐことだ。

 漕ぎ方は、4種類ある。前進するためのフォワードストローク、後進するためのバックストローク、横移動の為のドローストローク、プライストローク。それから、一番重要な、危機回避の為のストップだ。

 太鼓を叩く代わりに手拍子を打ち、それに合わせてパドルを漕いでもらうことにした。正規のメンバーでないってこともあるし、立っての練習ということもあるし、グラウンドでみんなに注目されながら気恥ずかしさを感じることもあってか、みんなの動きがバラバラで息が合わない。

「何やってんだ本田! ちゃんと耳を集中して手のリズムに合わせて漕ぐんだ。樋口さんと今村さんも補欠だからって、大会に出ないとは限らないからしっかり漕いで!! 鈴木さんは、みんなが聞こえるぐらい、大きく手を叩きながら声も出して!!」
『は、はいっっ……』

 海くんのダメ出しが何度も出され、日が暮れるまで練習が続けられた。

「じゃあ、今日の練習は終わり!」

 その声を聞き、みんなの口から大きな息が吐き出される。私は掌が真っ赤になってヒリヒリし、声が掠れ、漕手のみんなは何度もパドルを漕がされたせいで腕が上がらなくなっていた。

 それからも練習は重ねられたけど、平日はみんな部活が入ってたりして忙しく、メンバーが全員揃うことがない。

 名前だけならと補欠メンバーに入った由美子と真紀は自分たちもメンバーに入れられて不満を募らせていたし、ドラゴンボート未経験の本田くんと中村くんは、

「こんなにキツイ練習があるって知っとったら、やらんかったがよ……」

 と、陰で文句を言っていた。

 どうしよう……
 なんか、チームの雰囲気が悪くなってきちゃってる……

 このままで大丈夫なのか、一抹の不安が過ぎった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

処理中です...