チェストー! 伊佐高龍舟チーム!!

奏音 美都

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第三章 文化祭

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 4階に上がると、入口に『歴史民俗鉄道記念資料館』という看板が掲げられていたものの、暗い。よく見ると、ガラス張りのドアに『入館される方は左側のスイッチを押して下さい』と書かれた紙が貼ってあった。

「これだよね」

 側にあった赤いボタンを押そうとして、郁美と勇気くんが「あぁっ!!」と叫んだ。よく見ると、『このボタンは防火点検用ですので押さないで下さい』とある。危うく非常ベルを鳴らすところだった。

 中に入ると大人用と子供用に分かれたカウンターが置かれていて、これを自分で押すシステムらしい。それで、入場者が何人いたのか調べているのだとか。なんとも田舎らしいなぁと、ほのぼのした。その側には『入館についてのお願い』が掲げられていて、海くんが読み上げる。

「おしゃべりだけをする人、休憩所ではありません。館内を走り回る人、運動場ではありません。カウンターだけを押す人、ゲーム機ではありません。いたずらをする人、遊ぶところではありません。
 プッ……なんか、お笑いネタみたいだな、これ、ククッ……」
「ほんと、ウケるー! 写真撮っとこー!」

 郁美と勇気くんは何度も来たことがあるけど、海くんはここに来るのは初めてだと言って、物珍しそうにキョロキョロしてた。

 さすがに鉄道資料館と名が付くだけあって、鉄道に関するものがたくさん展示されていた。実際に使われていた『薩摩大口さつまおおくち』という駅名が書かれた駅名板が立っていて、その横には大きな電車のパネルが飾られていた。ポイントの切り替え装置なんかもあって、海くんと勇気くんは興味深そうに見入っていた。そんな姿を見ていると、やっぱ男の子だなぁと感じてしまう。

 薩摩大口駅は、九州旅客鉄道(JR九州)の駅で、かつては山野線と宮之城線が乗り入れていた要衝だったが、昭和63年に廃液となった。平成2年に駅舎が解体撤去された後に建てられたのが、このふれあいセンターなのだそうだ。

 鉄道の他にも民俗資料館として、昔の街並みが再現されていた。実際に使われた瓶や柄杓、釜なんかの道具が展示されていて、等身大の人形も置かれている。

 囲炉裏の上には枝に小さく切った丸い小餅を刺したものがぶら下がっていた。

「なんかあれ、白とかピンクのお餅が刺さってて可愛いね」

 私が見上げてると、郁美も横で見上げた。

「あーあれは、メの餅言って、小正月の飾り木よ。豊作を祈って飾るって、昔遠足でここに来た時に言ってたがよ」
「俺ん家は、今でも飾っとるがよ」
「あぁ、勇気ぃん家は、古い家だけぇね」

 木製のガラス張りのケースには大きな秤量機(てんびん)が置かれている。大口鉱山で生産された青金(金と銀の合金)や純金の重さを測定するために、昭和12年から、最近まで使用され、日本に3台しかない貴重なものだそうだ。大口鉱山は昭和52年に閉山された。

 昔の伊佐の風景に思いを馳せながら写真を撮ってると、少し離れたところにいた海くんが突然叫んだ。

「勇気、お前の写真があるぞ!」

 みんなで振り返ると、そこには西郷隆盛のパネルがあった。その下には銃や軍刀が並んでいて、物々しい雰囲気だ。

 けど、郁美はそんなのは構わず、「西郷どん! 西郷どん!」と囃し立てた。私と海くんも一緒になって囃し立てる。

『西郷どん! 西郷どん!』

 すると、勇気くんが凛々しい顔立ちになって、ピシッと指を差した。

「命もいらぬ、名もいらぬ、官位も金もいらぬ!!」
『わぁーっっ!!』

 その後、パネルをバックに西郷隆盛に扮した勇気くんを真ん中に、海くんと郁美の写真を撮る。

「これ、インスタ載せていい?」
『ええがよー!』

 勇気くんと郁美の即答を受けて、海くんを見上げた。

「別に、いいけど」
「ふふっ、ありがとう」

 何の気なしに入った資料館だったけど思いがけず楽しくて、あっというまに時間が過ぎていた。
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