12 / 72
第三章 文化祭
3
しおりを挟む
4階に上がると、入口に『歴史民俗鉄道記念資料館』という看板が掲げられていたものの、暗い。よく見ると、ガラス張りのドアに『入館される方は左側のスイッチを押して下さい』と書かれた紙が貼ってあった。
「これだよね」
側にあった赤いボタンを押そうとして、郁美と勇気くんが「あぁっ!!」と叫んだ。よく見ると、『このボタンは防火点検用ですので押さないで下さい』とある。危うく非常ベルを鳴らすところだった。
中に入ると大人用と子供用に分かれたカウンターが置かれていて、これを自分で押すシステムらしい。それで、入場者が何人いたのか調べているのだとか。なんとも田舎らしいなぁと、ほのぼのした。その側には『入館についてのお願い』が掲げられていて、海くんが読み上げる。
「おしゃべりだけをする人、休憩所ではありません。館内を走り回る人、運動場ではありません。カウンターだけを押す人、ゲーム機ではありません。いたずらをする人、遊ぶところではありません。
プッ……なんか、お笑いネタみたいだな、これ、ククッ……」
「ほんと、ウケるー! 写真撮っとこー!」
郁美と勇気くんは何度も来たことがあるけど、海くんはここに来るのは初めてだと言って、物珍しそうにキョロキョロしてた。
さすがに鉄道資料館と名が付くだけあって、鉄道に関するものがたくさん展示されていた。実際に使われていた『薩摩大口』という駅名が書かれた駅名板が立っていて、その横には大きな電車のパネルが飾られていた。ポイントの切り替え装置なんかもあって、海くんと勇気くんは興味深そうに見入っていた。そんな姿を見ていると、やっぱ男の子だなぁと感じてしまう。
薩摩大口駅は、九州旅客鉄道(JR九州)の駅で、かつては山野線と宮之城線が乗り入れていた要衝だったが、昭和63年に廃液となった。平成2年に駅舎が解体撤去された後に建てられたのが、このふれあいセンターなのだそうだ。
鉄道の他にも民俗資料館として、昔の街並みが再現されていた。実際に使われた瓶や柄杓、釜なんかの道具が展示されていて、等身大の人形も置かれている。
囲炉裏の上には枝に小さく切った丸い小餅を刺したものがぶら下がっていた。
「なんかあれ、白とかピンクのお餅が刺さってて可愛いね」
私が見上げてると、郁美も横で見上げた。
「あーあれは、メの餅言って、小正月の飾り木よ。豊作を祈って飾るって、昔遠足でここに来た時に言ってたがよ」
「俺ん家は、今でも飾っとるがよ」
「あぁ、勇気ぃん家は、古い家だけぇね」
木製のガラス張りのケースには大きな秤量機(てんびん)が置かれている。大口鉱山で生産された青金(金と銀の合金)や純金の重さを測定するために、昭和12年から、最近まで使用され、日本に3台しかない貴重なものだそうだ。大口鉱山は昭和52年に閉山された。
昔の伊佐の風景に思いを馳せながら写真を撮ってると、少し離れたところにいた海くんが突然叫んだ。
「勇気、お前の写真があるぞ!」
みんなで振り返ると、そこには西郷隆盛のパネルがあった。その下には銃や軍刀が並んでいて、物々しい雰囲気だ。
けど、郁美はそんなのは構わず、「西郷どん! 西郷どん!」と囃し立てた。私と海くんも一緒になって囃し立てる。
『西郷どん! 西郷どん!』
すると、勇気くんが凛々しい顔立ちになって、ピシッと指を差した。
「命もいらぬ、名もいらぬ、官位も金もいらぬ!!」
『わぁーっっ!!』
その後、パネルをバックに西郷隆盛に扮した勇気くんを真ん中に、海くんと郁美の写真を撮る。
「これ、インスタ載せていい?」
『ええがよー!』
勇気くんと郁美の即答を受けて、海くんを見上げた。
「別に、いいけど」
「ふふっ、ありがとう」
何の気なしに入った資料館だったけど思いがけず楽しくて、あっというまに時間が過ぎていた。
「これだよね」
側にあった赤いボタンを押そうとして、郁美と勇気くんが「あぁっ!!」と叫んだ。よく見ると、『このボタンは防火点検用ですので押さないで下さい』とある。危うく非常ベルを鳴らすところだった。
中に入ると大人用と子供用に分かれたカウンターが置かれていて、これを自分で押すシステムらしい。それで、入場者が何人いたのか調べているのだとか。なんとも田舎らしいなぁと、ほのぼのした。その側には『入館についてのお願い』が掲げられていて、海くんが読み上げる。
「おしゃべりだけをする人、休憩所ではありません。館内を走り回る人、運動場ではありません。カウンターだけを押す人、ゲーム機ではありません。いたずらをする人、遊ぶところではありません。
プッ……なんか、お笑いネタみたいだな、これ、ククッ……」
「ほんと、ウケるー! 写真撮っとこー!」
郁美と勇気くんは何度も来たことがあるけど、海くんはここに来るのは初めてだと言って、物珍しそうにキョロキョロしてた。
さすがに鉄道資料館と名が付くだけあって、鉄道に関するものがたくさん展示されていた。実際に使われていた『薩摩大口』という駅名が書かれた駅名板が立っていて、その横には大きな電車のパネルが飾られていた。ポイントの切り替え装置なんかもあって、海くんと勇気くんは興味深そうに見入っていた。そんな姿を見ていると、やっぱ男の子だなぁと感じてしまう。
薩摩大口駅は、九州旅客鉄道(JR九州)の駅で、かつては山野線と宮之城線が乗り入れていた要衝だったが、昭和63年に廃液となった。平成2年に駅舎が解体撤去された後に建てられたのが、このふれあいセンターなのだそうだ。
鉄道の他にも民俗資料館として、昔の街並みが再現されていた。実際に使われた瓶や柄杓、釜なんかの道具が展示されていて、等身大の人形も置かれている。
囲炉裏の上には枝に小さく切った丸い小餅を刺したものがぶら下がっていた。
「なんかあれ、白とかピンクのお餅が刺さってて可愛いね」
私が見上げてると、郁美も横で見上げた。
「あーあれは、メの餅言って、小正月の飾り木よ。豊作を祈って飾るって、昔遠足でここに来た時に言ってたがよ」
「俺ん家は、今でも飾っとるがよ」
「あぁ、勇気ぃん家は、古い家だけぇね」
木製のガラス張りのケースには大きな秤量機(てんびん)が置かれている。大口鉱山で生産された青金(金と銀の合金)や純金の重さを測定するために、昭和12年から、最近まで使用され、日本に3台しかない貴重なものだそうだ。大口鉱山は昭和52年に閉山された。
昔の伊佐の風景に思いを馳せながら写真を撮ってると、少し離れたところにいた海くんが突然叫んだ。
「勇気、お前の写真があるぞ!」
みんなで振り返ると、そこには西郷隆盛のパネルがあった。その下には銃や軍刀が並んでいて、物々しい雰囲気だ。
けど、郁美はそんなのは構わず、「西郷どん! 西郷どん!」と囃し立てた。私と海くんも一緒になって囃し立てる。
『西郷どん! 西郷どん!』
すると、勇気くんが凛々しい顔立ちになって、ピシッと指を差した。
「命もいらぬ、名もいらぬ、官位も金もいらぬ!!」
『わぁーっっ!!』
その後、パネルをバックに西郷隆盛に扮した勇気くんを真ん中に、海くんと郁美の写真を撮る。
「これ、インスタ載せていい?」
『ええがよー!』
勇気くんと郁美の即答を受けて、海くんを見上げた。
「別に、いいけど」
「ふふっ、ありがとう」
何の気なしに入った資料館だったけど思いがけず楽しくて、あっというまに時間が過ぎていた。
0
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる