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第三章 文化祭
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学校が終わると、郁美が話しかけてきた。
「これから勇気と海くんがふれセンに参加申込書出しに行く言ってっから、あたしも一緒に行くけど、美和子も行くね?」
「うん。じゃあ、私も一緒に行こうかな」
ふれあいセンターまでは学校から歩いて12分の距離だけど、そのまま家に帰ることを考え、自転車で行くことにした。海くんも自宅に自転車を取りに行き、道を知ってる勇気くんを先頭に、みんなで自転車を走らせる。
遠くから見えたふれあいセンターは無機質な近代的な5階建のビルのように思えたけど、正面に回り込むと円盤の屋根が二重に重ねられた個性的な外観だった。中に入ると3階までが吹き抜けになっていて開放感があり、まるで外国の建物のようだ。正直、伊佐にこんな建物があるなんて意外だった。
1階の伊佐PR課に行き、参加申込書を提出すると、受付のおじさんに笑われた。
「ハッハ、ぎりぎりだったね。はいじゃ、確かに受理しました! 19日に監督会議、29日に舵手講習会があるけ、遅れんようにな」
『はいっ!』
「今年は市制10周年記念大会でみんな気合い入っとっで、あんたたちもきばれよー!」
「ありがとうございます」
軽くお辞儀をすると、郁美がおじさんに話しかける。
「こん娘、カナダぁから夏休みの間だけ来てる転入生! 伊佐も国際的になったねぇ」
少し気恥ずかしく思いながらも軽く頭を下げると、おじさんが目を丸くした。
「まこちか! いやぁ、伊佐PR課としては、嬉しいこっちゃ! カナダん友達に伊佐のいいとこいっぱい教えてやってくんね!!」
「ふふっ、はい! 伊佐の写真をインスタにアップしてるんですけど、みんな興味津々で、楽しみにしてくれてるんですよ」
「曽木の滝はもう行ったね? あっこは『東洋のナイアガラ』ぁ言われとるがよ! そりゃカナダのナイアガラと比べたらぁちっさいが、なかなかのもんね! あと、曽木発電所遺構は? ダムに沈んだ発電所跡で夏の時期にしか現れないんで、観光客に人気の場所がよ! そいから琉球建築で造られた郡山八幡神社、自然が溢れる曽木の滝公園に楠本川渓流自然公園……あっ、酒造所も面白いかもしれんなぁ。ちょ、ちょっと待っちょれぇ!!」
おじさんは早口で捲したてると、背を向けて奥へ引っ込んでしまった。
暫くして戻って来ると、彼の手には大量のパンフレットがあった。
「ほれぇ、これ伊佐の観光地のパンフレットね。えぇとこいっぱいあるで、行ってみてね!!」
「うわぁ、ありがとうございます! ぜひ、行ってみたいです!!」
「そうじゃ、ここの4階に歴史民俗鉄道記念資料館があるで、行ってみるといいね! 伊佐の歴史が分かるけぇ」
おじさんが言うと、郁美が私の肩に軽く手を載せ、顔を寄せた。
「これからみんなで行ってみる?」
「うん、行ってみたい!」
「これから勇気と海くんがふれセンに参加申込書出しに行く言ってっから、あたしも一緒に行くけど、美和子も行くね?」
「うん。じゃあ、私も一緒に行こうかな」
ふれあいセンターまでは学校から歩いて12分の距離だけど、そのまま家に帰ることを考え、自転車で行くことにした。海くんも自宅に自転車を取りに行き、道を知ってる勇気くんを先頭に、みんなで自転車を走らせる。
遠くから見えたふれあいセンターは無機質な近代的な5階建のビルのように思えたけど、正面に回り込むと円盤の屋根が二重に重ねられた個性的な外観だった。中に入ると3階までが吹き抜けになっていて開放感があり、まるで外国の建物のようだ。正直、伊佐にこんな建物があるなんて意外だった。
1階の伊佐PR課に行き、参加申込書を提出すると、受付のおじさんに笑われた。
「ハッハ、ぎりぎりだったね。はいじゃ、確かに受理しました! 19日に監督会議、29日に舵手講習会があるけ、遅れんようにな」
『はいっ!』
「今年は市制10周年記念大会でみんな気合い入っとっで、あんたたちもきばれよー!」
「ありがとうございます」
軽くお辞儀をすると、郁美がおじさんに話しかける。
「こん娘、カナダぁから夏休みの間だけ来てる転入生! 伊佐も国際的になったねぇ」
少し気恥ずかしく思いながらも軽く頭を下げると、おじさんが目を丸くした。
「まこちか! いやぁ、伊佐PR課としては、嬉しいこっちゃ! カナダん友達に伊佐のいいとこいっぱい教えてやってくんね!!」
「ふふっ、はい! 伊佐の写真をインスタにアップしてるんですけど、みんな興味津々で、楽しみにしてくれてるんですよ」
「曽木の滝はもう行ったね? あっこは『東洋のナイアガラ』ぁ言われとるがよ! そりゃカナダのナイアガラと比べたらぁちっさいが、なかなかのもんね! あと、曽木発電所遺構は? ダムに沈んだ発電所跡で夏の時期にしか現れないんで、観光客に人気の場所がよ! そいから琉球建築で造られた郡山八幡神社、自然が溢れる曽木の滝公園に楠本川渓流自然公園……あっ、酒造所も面白いかもしれんなぁ。ちょ、ちょっと待っちょれぇ!!」
おじさんは早口で捲したてると、背を向けて奥へ引っ込んでしまった。
暫くして戻って来ると、彼の手には大量のパンフレットがあった。
「ほれぇ、これ伊佐の観光地のパンフレットね。えぇとこいっぱいあるで、行ってみてね!!」
「うわぁ、ありがとうございます! ぜひ、行ってみたいです!!」
「そうじゃ、ここの4階に歴史民俗鉄道記念資料館があるで、行ってみるといいね! 伊佐の歴史が分かるけぇ」
おじさんが言うと、郁美が私の肩に軽く手を載せ、顔を寄せた。
「これからみんなで行ってみる?」
「うん、行ってみたい!」
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