チェストー! 伊佐高龍舟チーム!!

奏音 美都

文字の大きさ
6 / 72
第二章 ドラゴンボートチーム結成

しおりを挟む
 レジの奥に、1枚のポスターが貼られているのがパッと目に飛び込んできた。『ISA DRAGON CUP』と赤字で大きく書かれている、ドラゴンボート大会の開催をお知らせするものだった。

 ドラゴンボートレースは、『古代中国で生まれた、世界最古の手漕ぎ舟の競漕』と言われていて、現在では多くの国や地域で大会が開かれておりアジア大会や世界大会も毎年開催されている競技だ。

「へぇ……ドラゴンボート大会、やるんだ」

 呟いた私を、郁美が覗き込んだ。

「そう! 今年は伊佐市市政10周年の年だから、特に気合い入ってるのよ。毎年4月に開催しててあたしもチーム組んで出場する予定やったけど……急に8月に変更になって、メンバーの都合が悪くなっちゃって出場出来んくなったがよ。あぁー、出場したかったぁ!!」
「そうなんだ。私もトロントのドラゴンボート大会に出場したよ。トロントインターナショナルドラゴンボートフェスティバルって言って、毎年6月に開催される大きなイベントで、去年と今年……ちょうど、こっちに来る前に大会があったの。去年は漕手やったんだけど、今年は去年の鼓手が抜けて、私が一番体重が軽いからって理由で鼓手をやったんだけどね」

 ドラゴンボートの船頭に座り、レース中、乗員の漕ぐタイミングや早さをコントロールして太鼓を鳴らしながら掛け声を掛けるのが鼓手の役割だ。

 郁美は目を輝かせて、手を打った。

「それ、わっぜいいアイデア!! でさ、みんなでチーム作ってドラゴンボート大会出場するが!! あーっ、明日が締め切りだから、はよクラス戻って人数集めんと!!」
「ちょ、ちょっと待って!!」

 いきなりの郁美の提案に、動揺する。ドラゴンボートは少人数で出来るスポーツじゃないし、器具や練習場所だって必要になる。

「大丈夫!! 高校にボート部あるから、そこでぜーんぶ必要なもんは借りれるし、うちのクラスにボート部メンバーも数人居るが。あたしもボート部やし、勇気はラグビー部やけどドラゴンボートの経験あるし! 今年は人数足らんと諦めとったけ、みんなきばるよー!」

 もう郁美は既にチーム設立に向けて、着々と計画を練っている。

 殆どのクラスメートが『西郷どん』と呼ぶ中、郁美は勇気くんのことを『勇気』と呼ぶ。二人は幼馴染なのだそうだ。

「じゃ……俺は、舵取りする」
『えっ!!』

 突然の海くんの申し出に、郁美と二人して驚いて顔を向ける。舵取りは舵手とも呼ばれ、船尾でドラゴンボートの針路をコントロールする。舵取りは常に艇のリーダーであり、レース中も鼓手より権限があり、安全に関しても責任がある。ドラゴンボートの経験がある私と郁美でさえ、リーダーである舵取りになれと言われたら躊躇するのに、海くんにはそれだけの自信があるんだろうか。

 海くんは私たちにじっと見つめられ、顔を赤くして口元を隠しながら答えた。

「実は俺の父さん、ドラゴンボートの国際大会に出場するぐらいの選手だったんだ……俺も、小さい頃から大会に出場してた」
「わっぜかー!!」
「マジでー!?」

 私と郁美はこれ以上ないってぐらいに興奮して、コンビニのレジで叫んでいた。レジのお兄さんが苦笑いしたけど、そんなこと構ってられない。

 こんなことって……あるんだ。すごい偶然。

 私たちは帰り道、有力なチームメイトについて話し合った。

 いさドラゴンカップでは、8名の漕手、1名の鼓手、1名の舵手と2名の補欠が必要になる。私が鼓手、海くんが舵手、郁美と勇気くんが漕手になったとたしても、まだあと6名の漕手と2名の補欠を集わなくてはならない。重いコンビニ袋でさえ気にならないほど、私たちは夢中になって喋り続けた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

処理中です...