チェストー! 伊佐高龍舟チーム!!

奏音 美都

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第二章 ドラゴンボートチーム結成

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「みんなぁ、戻ったよぉー!」

 郁美の呼び掛けに教室にいた全員から歓喜の声が上がってワァーッと集まってきたけど、郁美は阻止するように教卓の上に置いたコンビニ袋の上に覆い被さった。

「そん前に話があるからー。みんな、いさドラゴンカップが8月にあるけど知っとるよね? そいで、うちのクラスでチーム作って大会出よう思っとるから、メンバー募集するからね! あ、勇気はもうメンバーに入っとるからね!」

 郁美の横に立ってた私は、軽く手を挙げた。

「えと、私は一応カナダのドラゴンボート大会で鼓手やってたから、鼓手担当することになって……」
「俺は舵取り」

 隣にいた海くんがボソッと言うと、「えぇぇぇーっっ!!」と大きな声が勇気くんから上がった。

「海ぃ、わっぜずりぃ!! 俺も舵取りしたかったが!! ドラゴンボートの花形は俺がっ! って思ちょったのにっ!!」
「悪いな、勇気。お前には、ペーサーを頼む」

 ペーサーとは、漕手のリーダーのことで、チームのペースを管理する役割を担う。

「ほぉか? んなら、まぁ……」

 勇気くんはまんざらでもない表情を浮かべ、落ち着いた。

 クラスに2人いるボート部の子も、隣のクラスのボート部の子も、残念ながら既に他のチームに誘われて大会に参加するとのことだった。そりゃ、こんな申込みギリギリじゃ仕方ないよね。そこで、大会出場希望者を募ったところ、女子1人を含む4人が名乗りを上げてくれたんだけど、漕手はあと2人必要だ。

「あ、前田と吉元! お前ら、俺と小学生ん時大会出たことあったが!」

 勇気くんに言われ、プロレスごっこをしてふざけ合ってた隣のクラスのふたりがこっちを見た。

「西郷どん。んな、昔のこと、覚えとらんわ。ドラゴンボートなんてわっぜ、てせー」
「わっぜ、てせー!」

 こそっと郁美に耳打ちする。

「ねぇ、『てせー』ってどういう意味?」
「てせー、はね『てそい』って言って面倒くさいってことだよ」

 そっか……貴重な夏休み使って練習しなくちゃいけないし、確かに面倒くさいってのは理解出来ないでもない。でも……せっかく話が盛り上がってるし、もっとみんなと仲良くなる為にも、なんとかドラゴンボートチーム、作りたいな。

「まっ、前田くんと吉元くん……夏休みで色々予定あって大変かもしれないけど、せっかくこうしてメンバーが集まってきてるし、私もここでの思い出作りたいから、参加してくれると嬉しいんだけど……」

 勇気を出してお願いしてみると、途端に前田くんと吉元くんの顔が真っ赤になった。

「お、おぉ……ま、そこまで言われたら、断れんが」
「まぁ、カナダからの転入生の頼みやっで聞いてやるが」

 すると、勇気くんがニマニマと笑みを浮かべた。

「美和子が美人やから、頼まれて断れんかったどが!!」
『ちっ…ちげーが!!』

 二人が声を揃えてブンブンと頭を振ると、教室中が笑いに包まれた。

 補欠には、マネージャー兼任として郁美の友達である由美子が入ってくれることになった。由美子とは一緒にランチも食べてるし、知ってる子が一人でも多いと安心するし、心強い。

「どうしよう……補欠があと1人足りない……」
「ねぇ、誰かやってくれる奴おらんけ?  補欠やから、名前だけでもいいからさ」

 そこへ、ガラッと扉が開いた。

「みんな、きばっとるけ?」

 松元先生が、学祭の準備の進み具合を確認しに来た。と同時に、私たちは顔を見合わせた。

『先生!!』

 ドラゴンボート大会のことを説明すると、松元先生はせっかくなのだからメンバーは生徒だけでやる方がいいと言われた。ただ、未成年者だけでは練習は出来ないため、川で練習する際には先生が監視役としてついてくれることになった。

 結局もうひとりの補欠メンバーは、一緒にお昼ご飯を食べてる真紀が、名前だけならと入ってくれることになった。

「で、あんたたちゃ参加申込書は書いたのね」
「い、いえ……まだ、というか。さっきコンビニでポスター見て、決めたばっかりなんで」

 松元先生はハァーッと盛大な溜息を吐いた。

「締め切りは明日やっど。先生が印刷したるから待っちょれ」
『ありがとうございます!!』

 それから10分後、私たちは松元先生からプリントアウトした参加申込書を受け取った。
 本当に私たち……ドラゴンボート大会に出場するんだ、このメンバーで。

 背筋がゾクゾクと震えた。
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