チェストー! 伊佐高龍舟チーム!!

奏音 美都

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第二章 ドラゴンボートチーム結成

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 それからの毎日は慌ただしく過ぎていった。カフェのメニューを考えたり、そのために必要な器具や材料を揃えたり、教室のデコレーションをしたり、看板やポスターを作成したり……

「美和子さんさ、ちょっと来てくれる?」
「美和子さ、これ持ってて!」

 たぶん、少しでも早く私が学校生活に慣れるようにとみんなが気を遣ってくれてるんだろうけど、ヘルプの立場であるはずの私が、一番忙しいように感じた。それでも、みんなに声を掛けてもらえるのが嬉しくて、最初に感じた壁や疎外感が少しずつなくなっていた。うちのクラスだけでなく、2組との合同イベントということで、既に2年生全員が私のことを知ってくれている。生徒数が少ない学校ならでは、なのだろう。

「美和子!! 一緒に買い物行くけ?」

 授業が終わってから本格的な文化祭準備に入り、これから買い出しに行く郁美に声を掛けられた。初日は「山下さん」と苗字でさん付けしてたけど、一緒に過ごしていくうちにカナダで友達を呼ぶときのように自然と郁美だけでなく、勇気くんや海くん、一緒にランチを食べてる由美子や真紀のことも名前で呼ぶようになっていた。

「誰か男子ついて来てよ。荷物係が必要だがよー」

 郁美の呼びかけに男子達がシーンとする中、海くんが立ち上がった。

「俺、付き合うよ」
「海くーん、わっぜ助かるぅ!」

 笑顔を向けた郁美に習い、私もお礼を言った。

「あ、ありがとう」

 海くんは黙って頷くと、先を歩いた。相変わらず寡黙で、隣にいてもあまり喋ることはない。けど、たぶん人が嫌いとかではなく、ただ物静かな性格なだけで、優しい人なのだということがだんだん分かってきた。

 高校を出ると、すぐにバス停があり、そこからまっすぐ伸びてる道を歩くと交差する国道267号線を右に曲がるとコンビニがある。ここで、夕飯の買い出しをする。

 文化祭準備期間4日目。あとは明日と明後日を残すのみだった。今日と明日は遅くなるから夕飯はいらないと、おばあちゃんには今朝伝えてある。

 全国展開のコンビニなので、一見東京のものと変わらない気がする。けれど、『西郷どんフェア』が開催されていて、棚に陳列されているお弁当コーナーに桜島おにぎりや黒豚みそおにぎり、鹿児島味わい天どんが並んでいたり、パンの棚に南国白くま風蒸しケーキや島ざらめのシフォンケーキなんかが置かれているのを見ると、あぁここは鹿児島なんだなぁと実感してワクワクする。

 悩んだ末に、桜島おむすびとかごんまコロッケ、南国白くまクリーム大福をカゴに入れた。あとは、郁子が書いてくれたメモを見て、手分けして入れていく。

 レジかご3つに山盛りになるぐらいの食材をドスンとレジのテーブルに置いた。私と郁美だけじゃ、とても運びきれない量だ。

「海くんが付き合ってくれて、本当に良かった」
「ふふっ、うちのクラスの男衆おとこんしは照れ屋やから、あぁいう風に言われると自分から言い出せんのよぉ。もし海くんが言い出さんかったら、誰か頼みにいこう思っとったがよ」

 そうなんだ……

 カナダでは、こういう役は必ず男の人がやってくれて、荷物も全て持つのが当たり前だから意外に感じたけど、日本の男の人が寡黙でプライドが高いって言われてるわけが、なんとなく分かった気がした。
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