糟糠の妻

栗菓子

文字の大きさ
8 / 38
第3章 新たな糟糠の妻

第2話 クレア姫 サイド

しおりを挟む
私の新たな寵愛する愛人の妻が死んだ。嗚呼・・なんと世の中は無情なのか・・。
あの方は凡庸で、いつも夫の影のような女であった。でもかすかに意志と言う光があった。それはあまりにも淡いもので私にはわからなかった。

大成した愛人メリスの元で妻は見違えるように変容した。
枯れ果てた老婆の様な貧相な女が、人並みの貴婦人の様な姿になるのは私にとっても少し驚くほどの変わりようであった。
まあ・・メリスはてっきり用済みの妻を処分すると思っていたけど、意外と情愛があったのね。
私は思わぬ愛人メリスの情愛に驚愕した。あのメリスが・・?

てっきり冷め果てた夫婦だと思っていたけど・・?

それはまるで枯れ果てた花が神の慈雨によって、息を吹き返したように見るみる生気を取り戻し、若い時以上に美しく華やかに見えた。嗚呼でも彼女はなんと白い色が似あう事よ・・。

それが私には不可解であった。散々汚泥をすすった夫と共に辛酸を舐めたこともある女であるのに、何故穢れなき純白が似合うのか?汚泥に浸かった身であるのに・・。


私にはわからないことばかりであった。

しかし運命の神は無情なもので、皮肉にも彼女の命は僅かであった。てっきりメリスの元で療養するのだろうと思っていたら、長年離れていた両親の故郷へ戻るというのだ。

何故?そんなに親が好きだったのかしら? 夫メリスより? 私には夫婦の関係は分からなかった。

クレア姫は生まれながらに持てる者だった。
多くの愛も憎悪も金も名誉も地位もおよそ数多の人々が渇望するほどの物に溢れて育った。しかし姫はそれを当然のように享受するだけだった。

クレア姫はクレア姫として生を受けたからこの環境は当然であった。
そしてメリスは平民だが才能が溢れる男としても、魂の強さとしても十分に愛人として迎える価値があった。

メリスといると刺激を受ける。贅沢と怠惰に浸かった魂でさえも、若者の未知への冒険心や、開拓者の新しい風に触れたくなるのだ。

クレア姫は老いた魂と傲慢な貴族特有の幼稚な精神があった。
残忍で粗野で野蛮なメリス・・。でもまだまだ粗削りだが、彼はまぎれもなく宝石の原石だ。才能あふれ、精気に溢れる獰猛な雄々しい男・・。クレア姫は一目見てメリスを愛人にしたいと思った。

ひっそりとした妻という女は路傍の石にしか見えなかったが・・あの変容した姿と、メリスの奇妙な温情と情愛。
頑なな処女の様な白い花の様な女・・。

この奇妙な夫婦にクレア姫は興味を抱いた。 何故このような男と女が夫婦となったのだろう?世の中とは不可思議なものだ。まるでちくはぐでそのくせどこか共通するものを持っている雰囲気だった。

メリスに惹かれる女は少なくなかった。その中で人形のように美しいマリーという女がメリスの新たな女となり、夫婦となった。

私はつい思わず、最初の妻とメリスの関係について問いかけた。
彼女はメリスの何だったのかしら?

マリーはしばらく沈思して、あの夫婦関係は愛はありません。
彼女はメリスを導く天使であり、卑しい奴隷であり苛烈な敵対者でもありました・・。いいえメリスは確かに彼女を愛していたのかもしれないけど・・彼女がメリスを愛せなくしたのはメリスのせいですから・・。
あまりにも複雑で奇妙な夫婦でしたよ。

彼女が最後の別れに何を言ったか教えてあげましょうか?
マリーは皮肉気に笑って呟いた。

「愛だけは与えなくてもいいではないか」

嗚呼その通りです。彼女は己の死と愛さえも夫には与えなかったのです。

マリーは頬に白い手を当てて深い溜息をついて呟いた。

「あれこそが真の夫婦関係なのかもしれないですね・・。」

クレア姫は、何故かその言葉が脳裏に離れなかった・・。

男女関係は十分に知っていると思ったが、夫婦の奇妙な摩訶不思議な関係はクレア姫にとって理解不能であった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

女の子がほとんど産まれない国に転生しました。

さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。 100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳 そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。 当面は2日に1話更新予定!

【完結】シロツメ草の花冠

彩華(あやはな)
恋愛
夏休みを開けにあったミリアは別人となって「聖女」の隣に立っていた・・・。  彼女の身に何があったのか・・・。  *ミリア視点は最初のみ、主に聖女サシャ、婚約者アルト視点侍女マヤ視点で書かれています。  後半・・・切ない・・・。タオルまたはティッシュをご用意ください。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

処理中です...