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少年期~前編~

カグラとセレナ……そして、姉上

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 カエラと母上の事情を知ってから数日後……。

 こちらに帰ってきたカグラと、セレナが揃って遊びにきた。

 そして……俺は念願の物を手にすることが出来た。

「アレス様!お久しぶりなのだ!」

「久しぶりだね、カグラ。やっぱり、君がいると元気が出てくるね」

「そ、そうですか……」

「カグラちゃん、可愛い~」

「むぅ……からかうでない!セレナの方が可愛いのだっ!」

「わわっ!?揉みくちゃにしないで~!?」

 ウンウン、仲が良くてよろしい。
 微笑ましい光景に、俺は気持ちが暖かくなるのだった……。


 その後、カグラが気づいたようだ。

「おや?アレス様……それは?」

「ふふふ……気づいてしまったかい?」

「えっと……アレス様?」

「ダメだよ、カグラちゃん。大人しく聞こう……」

 いかん……あまりの嬉しさにテンションがおかしい……!
 だが——無理もないと思うんだよ!
 なぜなら……。

「これは……刀だっ!」

 俺は腰にある鞘から——剣を抜く!

「わわっ!?」

「おおっー!」

「ふふふ……どうだい?この輝き……綺麗だろ?」

「何回見ても綺麗ですねー」

「凄いのだっ!それは何なのですか!?」

「ノスタルジアの一部にのみ伝わる刀というものらしい」

 カエラの部屋の、奥の方に仕舞ってあるのを出してもらった。
 そして、そのうちの1本を貰うことが出来たのだ。
 もちろん、俺はまだ身長が150センチ程度なので、小太刀より少し長い物を頂いた。
 俺が成長すれば、大きい刀もくれると……。
 まさしく、灯台下暗しとはこのことだろう。

「剣とは違うのですね……反り返っているのですか……」

「扱いは難しいけどね。カグラみたいなパワータイプには向かないかもしれないね」

「むむっ!拙者だって……言い返せないのだ……」

「いやいや、褒めてるから。類い稀な魔力強化の才能を持っているということだよ」

「なら、いいのです」

「えへへ~、久しぶりで楽しいねっ!」

「そうなのだっ!」

「おっと、出発前に妹のエリカに挨拶してくれないか?明日は時間ないしな」

「ぜひっ!」

「可愛いんだよ!とっても!」

「間違いないね」

 母上に挨拶をして、エリカに会わせる。

「こ、こんにちはなのだ……可愛い……拙者、兄がいて末っ子なので、初めてなのだ……」

「可愛いよね~私も、何度も見にきちゃった」

「あう~、うー?」

「エリカ~、未来のお姉ちゃんになるかもしれない子達よ~。可愛がってもらって、しっかり顔を覚えなさいねー?」

「そ、それは……あぅぅ……」

「ふぇ……?あっ——はぅ……」

「あう!」

「あら、認めてくれるみたいよ?」

「母上、勝手なことを言わないでくださいよ……」

 エリカは、わかっているんだかわからないが……。
 無邪気に笑っている……鼻血が出そう……可愛い。
 あれ?俺って……兄馬鹿だったのか……。


 遊んだ後、明日の準備のために、2人は帰った。
 明日は朝早くに出て、オルガの実家に遊びに行くからだ。

 
 そして……その日の夕飯が終わったころ……。
 玄関の外から、聞き慣れた声が聞こえてきた……姉上だ。

「ご、ごめんなさい!」

 俺と母上は顔を見合わせる……。

「どうしたのかしら……?」

「わかりませんが……エリカが生まれてから、一度も来てないことと関係があるのかもしれないですね」

 そうなのだ……忙しいから来れないかと思っていたが……。
 俺も、最近は会えていなかったし……。
 あとは……俺が会いに行くことで、姉上が何か言われないように……。
 出産の時に、一悶着あったからなぁ……。

「えっと……私が行きますか?」

「いや、カエラ。とりあえず、僕が行ってくるよ」

 玄関を開けると……カイゼルに深々と頭を下げている姉上がいた……。
 そして……後ろには父上が。

「カイゼル……どういうことだ?」 

「いえ……私にも……ヒルダ様、顔を上げてくだされ。皇族の方が、むやみに頭を下げるものてはありませんぞ?」

「で、でも……お母様が、カイゼルに酷いこと言ったって……」

 ……なるほど、あの夜のことか。
 もしかして、それを気にして……?

「私は気にしていません。何より、謝るべきは貴方様ではない」

「ヒルダ姉さん、こんばんは。父上も」

「おう、俺はただの付き添いだから気にすんな。ほら、ヒルダ。言いたいことがあるんだろ?」

「あ、アレス……あ、あのね……私、お母様に行くなって言われてて……で、でも、どうしても謝りたくて……また、お母様が酷いこと言ったって……だから……お父様に頼んで……」

 文章がめちゃくちゃだが……まあ、なんとなくわかる。
 こんな弱々しい姉上を見るのは初めてだけど……。

「僕は気にしてませんから。姉上と、その母親は別物です」

「で、でも……」

「それより……妹に会ってくれませんか?」

「え……?」

「大好きな姉上に、会ってほしいんです……ダメですか?」

「……う、うわーん!!ァァァ——!!」

「姉上……」

 ど、どうしたというのだ?
 何故、泣いているんだ?

「ほら、言ったろ?アレスは、そんな器の小さい男ではないって」

「……グスッ!で、でも!私は……アレス達に酷いことしてるお母様の子で!今回も、赤ちゃんに向かって酷いこと言って!私には……その子に会う資格がないって……!アレスにも……!」

 なるほど……見えてきたな。
 俺はバカか……!
 歳上とはいえ、まだ12歳の子供だ……!
 母親がそんなことしたら——気にするに決まってるじゃないかっ!

 俺は姉上に近づき、そっと抱きしめる……。

「そんな寂しいこと言わないでください。僕は、大好きなお姉ちゃんに会えないと寂しいですよ?ヒルダ姉さんがいなかったら——誰が、僕を可愛がってくれるんです?」

「ア、アレス……ごめんなざい!……ありがどゔっ!」

「歳ですかな……涙腺が……」

「鬼の目にも涙か……が、泣いている俺が言うセリフじゃないな………立派になりやがって……」



 その後、泣き止んだ姉上を連れて、父上と共に母上達のところへ行く。

 俺と父上は、黙って見守ることにする。

「ヒルダちゃん、こんばんは」

「ヒルダ様、ご無沙汰しております」

「エレナさん、カエラ、こんばんは……あ、あの……私……」

「何も言わなくて良いわ。丸聞こえでしたもの……エリカ、血の繋がったお姉ちゃんがきましたよ~?」

「え……?」

「ほら、もっと近くに来てちょうだい」

「……良いんですか?」

「もちろんよ、貴女の妹よ。挨拶してあげて?」

 姉上は恐る恐る、抱かれているエリカに近づいていく……。

「こ、こんばんは……」

「あうー?」

「か、可愛い……」

「触ってあげて?」

「え?で、でも……」

「あら?可愛がってくれないの?」

「わ、私は……」

「もう、仕方ない子ね」

 母上は姉上の手を取り、エリカの手に触れされる……。

「あっ——」

「誰が何を言おうと関係ありません。貴女が、もしよければ……この子を、エリカを……妹して可愛がってもらえないかしら……?」

「グスッ……は、はぃ……!ありがどゔございます……!」

「あいー!」

「わ、笑った……?」

「お姉ちゃん、よろしくねーって言ってるのよねー?」

「あうー!」

「そ、そうなの?……し、仕方ないわね!私がお姉さんとして可愛がってあげるわ!エリカ!貴女を立派な淑女にしてみせるわ!」

「あいー!」

「ふふ……良かったわね、エリカ。素敵なお姉ちゃんが出来たわね……」

「……父上……止まりません……」

「……俺もだ……それに……相変わらず、良い女だ……!」

「ほら、貴方達も。家族団欒しましょう?もちろん、カエラも」

 皆でエリカを囲むと……。

「あうー!あいー!」

 エリカは笑顔を見せるのだった……。
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