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少年期~前編~

オルガの家に行き、懐かしさを感じる

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 結局、姉上は泊まっていき、翌朝帰って行った。

 母親に何か言われるだろうが、父上がどうにかすると言っていた。

 俺に出来るのはこれくらいだからと……。

 きっと……大変なのだろうと思う。

 俺とて前世では、社会人を経験し、営業マンとして働いていた。

 そんな中、社長や上役の方々の話は、よく聞かされていた。

 決して楽なことなどなく、日々の苦労話などを……。

 下と上との調整、会社全体のこと、他の会社との付き合い……。

 規模や重圧は違うだろうが、どこかしら共通点があると思う。



「さて……では、母上、カエラにエリカ。行ってきます」

「ええ、気をつけて行ってらっしゃい」

「お気をつけて。エレナ様と、エリカ様はお任せください」

「……私が、この命に代えてもお守りしましょう。安心して、楽しむと良いかと」

「カイゼルがいるなら、安心だね。じゃあ、よろしく頼むね」

「御意」



 カグラとセレナと合流して、皇都を出発する。

「悪いね、カグラ。今日も、護衛や馬車を出してもらって……」

「いえ!むしろ、うちの者達は喜んでおります。アレス様は、大人気ですから」

「え?そうなの?」

「はい!あの挨拶は素晴らしいと。我々の苦労をわかってくださる方だと……その他にも、色々と申しておりました」

「そうか……そんなことを……」

 恨まれる覚悟もしていたけど……。
 いや、だからと言って……俺の罪が消えるわけではない。
 戒めとして、これからも気を引き締めていこう。

「私の両親も、褒めてましたよー。街のみんなにも、伝えてるって」

「それは……有り難いが、止めてくれるように頼まなくてはね」

「え?なんでですか?」

 王妃達や取り巻きに知られたら、面倒なことになりそうだからな……。
 うーん……セレナには、まだこういうのは早いかも。
 それに平民の方々には、俺らの事情はわからないだろうし……。

「色々と、あるんだよね。まあ、今度僕から説明しとくよ」

「は、はい……」

「落ち込まないで、セレナ。気持ちは、とても嬉しいから」

「アレス様……はいっ!」




 馬車は進み……日が沈む前に、到着することができた。

「アレス様!」

「やあ、オルガ。久しぶり」

「ええ!お待ちしておりました!」

 オルガの後ろでは——着物を着た偉丈夫が、直立不動の姿勢で立っていた。
 実際に見たことはないが……まるで、侍か武士のようだ。
 懐かしい……少し違うが、剣道着を思い出すし……
 何より、日本人としての記憶を呼び覚ます……。

 ……おっといけない……見惚れてる場合じゃない。
 このタイプは、おそらく……俺が話しかけるまで動かないタイプだ。

「オルガの父上でございますか?」

「はっ!某の名は、ゴーゲン-アラドヴァルと申します。此度は、皇都より御足労して頂き、誠にありがとうございます」

 ……うん、固い……。
 ……オルガが、真面目に育つわけだ。
 如何にもな、武士って感じだ。

「ご丁寧にありがとうございます。ですが、今回は皇子としてではなく——息子さんの友人としてまいりました。出来たらで良いので、楽な姿勢にしてもらえると助かります」

「…………」

 ゴーゲンさんは、俺の目をじっと見つめてくる……。
 これは……逸らしてはいけない……。

「……うむ、良き目をしておりますな」

「父上っ!失礼ですよ!」

「いいんだ、オルガ。当然のことだ」

「佇まい……言葉遣い……胆力……失礼いたしました。息子から、貴方様のお話は聞いておりました。そして、皇都での噂も……某は、自分の目で見たものしか信じないタチで……」

「それで、どうですかね?」

「文句なしかと存じます……皇族の方を試すようなこと……申し訳ございませんでしたっ!!

「頭を上げてください。国境を守る家として、国を想う貴族として、当然のことだと思います」

「ほらっ!父上!アレス様は、そういう感じは苦手なんだってっ!もっと、お気楽にっ!」

「オルガ?それはそれで——君が失礼かな」

「はっ!……すみません!」

「良いよ、オルガ。普段、僕をそう思ってたんだね……スン」

「ち、違います!こ、これは、その、親しみやすいといいますか……」

「クク……冗談だよ、オルガ。君も、案外子供らしい一面もあったんだね?」

「そうなのだっ!そっちの方が良いのだっ!」

「私も、そう思います!」

「えっと……善処します……」

「クハハッ!愉快!愉快!息子を皇都に行かせるか迷いましたが……良き主君と、良き友に恵まれたようですな……皆さま、感謝いたします」

「いえ、こちらこそ。オルガはしっかり者で、僕らは助けられていますよ」

「そうなのです!」

「はい!」

「て、照れますね……」

 ウンウン……やっぱり、大人びて見えても子供だもんな。
 家だと気が緩むのかもね。
 でも、これだけで来た甲斐があったかな。


 その後、オルガの家に案内され……俺は感動する。

「や、屋敷だっ!!」

「おや?アレス様は博識ですな」

 ……まずい。
 つい、口から出てしまった……。
 どう誤魔化す……?こうなったら……。

「え?……まあ、図書館で見たことがあったので……」

 どうだ!?見たことないけど!

「なるほど、それならば。では、まいりましょう」

 ほっ……どうやら、正解だったようだ。



 中に入ると……着物の人が沢山いる……。
 これは、決定的だな。
 迷い人の中の日本人が伝えたのだろうな。
 もしくは……迷い人本人が作ったか……。

「弥生!」

「いますよ、貴方。アレス様、皆さま、オルガがお世話になっております。私は、オルガの母で弥生と申します」

「よろしくお願いします」

「お願いするのだ」

「お願いします!」

「ええ。では、部屋に案内いたしますね」

 通された部屋は……和室だった!

「イ、いやっほー!!」

 俺は堪らず、畳の上をローリングをする!

「ア、アレス様!?」

「どうしたんですか!?」

 おっといけない……。
 懐かしの光景に、つい理性が……。
 だが……止められない……!

「2人とも……男には、やらねばならぬ時があるんだよ」

「アレス様……それ、絶対違いますからね?」

「クハハッ!良いではないか、オルガよ。気に入って頂けたということだ」


 その日の食事も……和食だった……!
 おっと……それは普通だったな。
 一応この世界には、イメージ的には和洋中の料理がある。
 形や種類は違えど、似たようなものになっている。

「ただ……畳で食べると、一層際立つよなぁ……」

 雰囲気って大事だと思う。

「アレス様、ずっと嬉しそう……むぅ……」

「ハハ……カグラちゃんが拗ねちゃった……」

「え?……カグラ、決して君の所より良いということではない。種類が違うだけだ。そんな拗ねた顔も可愛いけど、いつもの元気な顔のが素敵だよ?」

「な、な、なっ——!?」

「カグラちゃん、顔真っ赤だよー?」

「そ、そんなことないのだっ!あぅぅ……」

「フゥ、誤魔化せたかな」

「アレス様……今、なんと?」

「しまった……僕としたことが」

「むぅ~!」

「ほ、ほらっ!食べよう!ねっ!?」

「楽しいですね、セレナさん」

「はい!やっぱり、4人が良いですねっ!」

 久々の集まりに、皆のテンションも上がる。

 俺は……久々の再会はもちろんのことだが……。

 何より……和室で、布団を敷いて寝れることに感動していた……。
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