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第1章 開戦、硫黄島の戦い

第11話 降伏条件

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 ターナー大将を乗せたニ式大艇は、神国連合艦隊を目指して飛行していた。機体の周囲には護衛の烈風が4機飛行している。

「閣下、我々は何処に向かっているのでしょうか?」

 降伏か、戦闘か、を話しあっていた若い士官がターナー大将に質問してきた。

「私にも分からん、だが、敵の本隊の所と言うのだけは確定している」

 窓の外を見ても青い海と空が広がっているだけで、島も船も見えない。

「閣下、何かお飲み物を飲まれますか?」
「何があるのかね?」

 太田大尉がコックピットからこちらに向かってきた。

「あるのは、ラムネと水、お茶ですね。どれになさいますか?」
「そのラムネと言うのは、どうゆう物だ?」
「アメリカで言うコーラ見たいな物です。コーラよりさっぱりしていますよ。飲んで見ますか?」
「ではいただこう」

 仮眠室の近くの冷蔵庫からラムネの瓶を取り出し、ターナー大将のところまで持っていく。
 ラムネを受け取ったターナー大将はどうやって栓を空けるのか知らないようで、困っていた。

「閣下、これはこのように開けるのです」

 蓋の栓を手のひらで押すと、栓になっているビー玉が外れ、プッシュ、と言う音とともに泡が瓶から溢れた。

「どうぞ、2つの凹みがついた方を下にしてお飲みください」
「ありがとう。変わった栓をしているのだな」

 ターナー大将は、言われた通りに凹みがしたにくるように瓶を傾けた。

「コーラよりもさっぱりしているな、これが日本ではよく飲まれているのか?」
「はい。我が軍の軍艦のほとんどにラムネ製造機が積まれています。そのため、海軍なら当たり前に飲まれています」
「なるほど、以外と設備がしっかりしているのだな。日本の軍艦は」

 ターナー大将は、そう言いながらラムネを飲み干し、ラムネが気に入ったのかもう一本を頼んでいた。
 そのまま、ニ式大艇は飛行を続け、神国の本隊が視界入るまで、来ていた。
 太田大尉は、無線で旗艦紀伊の側への着水許可を得るために通信をしていた。

「こちら水上機母機、秋津洲所属のニ式大型飛行艇三号機、旗艦紀伊の右舷への着水許可を求む」
『こちら紀伊、秋津洲三号機、話は聞いている。右舷への着水を許可する』
「了解、右舷へ着水する」

 しばらくすると細かい点にしか見えなかった船が大きくなっていく。
 ほとんどは輸送艦だが戦艦や空母、巡洋艦に駆逐艦がキレイに整列して停泊していた。
 その艦隊の中央に一際巨大な戦艦が2隻、並んで停泊していた。
 これを見たターナー大将等は、あまりに巨大な艦隊の規模とそれぞれの船が狂いもなく整列して並んでいる事が信じられなかった。

(何なのだこの数は!?しかもほとんど隊列が乱れることもなく整列している!私の艦隊でもここまでの隊列は組めないぞ!?しかも、なんと巨大な戦艦なのだ。あの大和型が小さく見える!)

 だんだんとニ式大艇が紀伊に近付いて行く。
 紀伊は紀伊型戦艦一番艦で、大和型の設計に改良を加え、建造された。
 全長は大和型の263メートルを超す、312メートル、全幅は43メートル、基準排水量7万2000トン、最大排水量8万5000トン、最大速力29ノット、世界最大であった大和型を遥かに上回る巨大戦艦であった。
 主砲は51センチ3連装砲を2基、副砲に対空能力を強化した四年式20センチ連装砲G型を4基、これは高雄型に搭載されたE型の主砲の弱点であった装填時、仰角を戻さなければ装填できなかった装填装置を対空仰角のまま、装填できるようにしたもので、半自動装填装置を装備し、射撃指揮装置との連動も強化され、大型の両用砲として、完成した砲である。
 対空砲して、九九式60口径13センチ連装高角砲を基、この砲は、九八式10センチ連装高角砲を元に設計され、九○式12.7センチ連装高角砲よりも被害範囲を拡大し、射程を長くして、敵機に対する弾幕をより長く張れるように開発された。さらにリボルバー型の自動装填装置を搭載し、毎分25発の射撃を可能としているが再装填には数分掛かるため、連続は発射は25発が限界である。
 機銃は、他の艦船と同様に一式式37ミリ連装機銃が72基、九七式20連装機銃×46基、九七式20ミリ機銃×112基、二式10センチ45連装対空対潜噴進砲×8基を搭載している。

 二式大艇が紀伊の右舷の中央着水すると紀伊の甲板から階段が設置され、二式大艇までの桟橋も設置されて行くのが窓から見えた。
 飛行艇の扉が開き、中に士官と見える格好の兵士が入ってきた。その人物も流暢な英語でしゃべっていた。

「ターナー大将閣下ですね?お待ちしておりました。閣下の案内を任されました我が艦隊旗艦、紀伊へ、貴方の乗船を歓迎します」

 まだ、若い士官が敬礼しながら挨拶をし、会議室に案内するので、自分の後に続いて来て欲しいと言い、飛行艇から出た。
 その際に警戒のためか、ライフルを装備した兵士が4人、前後に付きながら艦橋の上の階にある会議室向かった。

「それにしても巨大な戦艦だ。どれぐらいの排水量があるだ?」
「私の口からは何とも、機密事項に入りますので」
「それは失礼した。つい気になってしまったので」

 艦橋の中に入るとエレベーターが設置されており、それに乗り込み、上の階に昇り、エレベーターを降りるとすぐ近くに会議室が有ったようで、案内の士官がノックするとすぐに返事が帰って来て部屋に入った。

「失礼します。アメリカ海軍第58任務部隊司令官、リッチモンド・ターナー大将をお連れしました!」
「ご苦労様です」
「は!失礼しました」

 案内の士官は敬礼をすると部屋から去って行った時

「ターナー中将、どうぞこちらへ」

 ソファーから立ち上がり、他の士官と同じように英語で話してきた。

「この度は敵であるはずの我が艦隊の兵士を助けて下さり、ありがとうございます」
「いえいえ、我々は当たり前の事をしたまでです。どうぞお座り下さい」

 艦隊の司令官に促され、彼の前のソファーに座ると副官と思われる将校がコヒーを淹れたようでこちらに置くと司令官の横に座った。
 置かれたコヒーを飲んでみと今まで飲んだ中でも1位を争う美味しさだった。

「この度は、我が艦隊の降伏勧告を受け入れて下さりありがとうございます」
「いえ、司令官殿、あなた方降伏勧告を出して下さったお陰で、無駄な犠牲を出さずにすみました」
「失礼ですが将官は司令官ではありません。私は艦長の富浦政義中将です。そちらが我が連合艦隊司令長官の」
「失礼、私の隠れた趣味の1つでして、初めまして私が司令長官の山本五十六元帥です」

 その名前を聞いて驚いた。その人物は我々の作戦で殺害したはずの人物だったのだから。


 1943年4月7日ヴェンジェンス作戦。
 暗号解読から連合艦隊指令長官である山本五十六が前線視察に訪れる事を知ったアメリカ軍が飛行ルートであるブーゲンビル島上空で待ち伏せし、山本五十六の搭乗機である一式陸攻を攻撃、撃墜し、殺害した作戦である。
 日本側の名前は海軍甲事件。山本五十六と連合艦隊参謀達が乗った一式陸攻2機が攻撃され撃墜され、山本五十六だけが死亡、参謀達の方は海上に不時着し生還した。


 その作戦で死んだはずの人物が目の前にいる。何故生きているのか死亡は確かに確認されたはずだ。そのことが頭を巡り続けた。

「あなたは死んだはずだ!」

 思わず目の前に人物にそう問いかけた。

「この世界では私は死んだと言うことですね?」
「どうやらそのようです」
「私、いや、我々はこの世界のものではありません。別の世界から来た日本軍です」

 ターナー大将に我々がこの世界に来た経緯と何故アメリカ軍をしたのかを話した。
 その話を聞いていたターナー大将は、しばらく沈黙していたが自分なりに整理できたのか顔を上げ降伏の条件を聞いてきた。

 神国が出した条件は主に4つ。
1つ目は、鹵獲した兵器の所有権放棄。
2つ目は、我々の存在はなかった事にする。
3つ目は、硫黄島攻略は、失敗した事にする。
4つ目は、捕虜にした兵士を帰国させる事、ただし、再び戦場に送り出さない事。

 4つの条件をターナー大将は、条件を了承し、降伏書にサインをした。
 後に硫黄島沖海戦と言われた海戦が終わった瞬間だった。この世界的にも珍しい終わり方をした戦いは後世まで、語り継がれていった。

 




 

 
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