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第1章 開戦、硫黄島の戦い

第10話 人名救助と滷獲艦の修理

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 硫黄島で停戦が結ばれたとの連絡を受けた神国の連合艦隊は、駆逐艦と病院船、工作艦(特殊工作艦を含む)を先行させた。
 撃沈、または、大破したアメリカ艦船から乗員を救助するために向かっていった。
 到着すると同時に駆逐艦はボートと内火艇を降ろし、海に漂っている兵士の救助を初めた。駆逐艦自体は、まだ浮いている船に近づき残っている乗員を救助していた。

「内火艇を降ろせ!ボートもだ!1人でも多くの兵士を救助しろ!」
「「「了解!!」」」

 最低限の武装に人員を配置して、残りのほとんどを救助に当てた。
 救助に向かった兵士達は、内火艇やボートに乗り込み、漂っているアメリカ軍兵士達に向かっていった。

「こっちだ急げ!救助したら病院船まで急いで運べ!」
「ほら捕まれ!おい!ロープよこせ!」
「大丈夫か!もう少しだがんばれ!」
「クソ!」
「おい!?」

 中には、救命胴衣を着けておらずに海に投げ出された兵士もいたようで、ボートまで泳いでくるだけの体力が残されておらず、安心感から力尽きて沈んでしまう兵士もいた。
 その場合は救命胴衣を脱ぎ捨て海に飛び込んで救助している兵士の姿も見られた。
 その事に感謝のあまりに泣きながらお礼を言うアメリカ兵もいた。
 言葉の問題は、各ボートや内火艇に1人は英語が話せる人員を配置することで一応の問題は解決していた。

『何で敵である俺達を助けるんだ?』
「敵である前に1人の人間だ!それに戦意のない相手を殺すのは、我々の意思に反するからだ」

 米兵の質問に部隊の隊長が答え、それを英語を話せる部下が英語に訳して話した。
 その言葉に目を丸くして驚いていたが何か思い出したかのように納得していた。
 その後もボートに乗せれるだけ乗せて、内火艇に引っ張ってもらって病院船まで、負傷した兵士を運んで行った。


 一方、工作船は漂っている駆逐艦に近づいて、修理を開始していた。できる限り再使用したいため、直せそうな艦は修理して艦隊に組み込むためである。

「オーライ、オーライ、よし!そこで止めろ、乗り込んで機関を止めるぞ!乗員が残っていたら運び出せ!」
「「はい!」」

 アメリカの艦船に詳しい技術員が駆逐艦や巡洋艦に乗り込み、機関を停める。
 それが不可能な場合はそれ以外の方法をとるしかなくなる。
 工作艦からワイヤーロープを投げて強引に停止されるかぐいらしか、取れる方法がない。
 その場での停止、修理が不可能な場合は、特殊工作艦に収容出来れば収容し、無理ならば雷撃処分か砲撃で沈めるしかない。


 特殊工作艦一番艦「富士」を含めた17隻は、沈みかけている駆逐艦、巡洋艦の艦尾、艦主方向から近づき、自信の艦主を観音開きに開き船を自信の船内に回収する。
 
 強襲揚陸艦を元に設計、建造された大型工作艦、全長356メートル、全幅46メートル、基準排水量54000トンの巨大船である。
 被弾に弱く、損害を受けやすい駆逐艦や巡洋艦を洋上で修理、改修することを目的に大戦直前に就役したため、最新の修理機械を搭載し、多くの破損した艦船を艦隊に戻してきた。
 艦橋が現在の貨物船のように艦尾にあるため、甲板に艦載機を着艦できるように広くなっており、空母で修理不可能な機体を着艦、または空母から収容して修理している。
 船首に扉の制御室と監視室があり、予備艦橋としての機能も備えているため、そこでも操舵が可能である。収容時はこちらの艦橋で操艦して回収する。

「あいつから行くぞ!取り舵5!」
「取り舵5!よーそろ!」
「面舵2!」
「面舵2!よーそろ!」
「舵そのまま」

 右舷が大きく沈みかけている駆逐艦の船尾から収容、全体が船内に入り、収容が確認できたら急いで扉を閉めて、排水作業に取りかかる。
 それが終わると救助部隊を中に入って行き、取り残された乗員の救助開始した。


「おい!しっかりしろ!諦めるな!」
「も、もう無理です!」
「お前の帰りを待っている人がいるんだろ!」
「最後まで諦めるな!」

 機関室に取り残された数人の機関員がついこの間に入ってきたばかりの新入りの兵士を励ましていた。
 機関部のパイプに足が挟まれて、どんどん増していく水位に溺れそうになっているのを必死に助けようとしていた。
 しかし、傾斜もどんどん酷くなっていく、ベテランの機関員である軍曹は、もう助からないのは分かりきっている。それでも僅かに可能性があるならそれに賭ている。

(頼む!俺達のことはいい!こいつだけでも助けてくれた!!)

 必死に新兵を助けようともがきながらそう祈っていた。
 すると奇跡が起きた。
 船体が揺れると少しづつだが、水位が下がって来ていた。その隙に挟まれた足を引っ張り出そうとするが落ちてきたパイプが大きすぎるのと重さでびくともしない。
 あれこれ試していると声が聞こえてきた。
 助けが来た。位置を知らせるために扉を叩きながら声をだした。

「ここだ!開けてくれ!」
「新入りの足が挟まれて抜けないんだ!」
「分かった!バーナーで扉を切り開ける!離れてくれ!」

 そう言う声が聞こえてきたので、扉から離れた。
 すぐに開閉ハンドルの部分と金具のところが強く光ながら切れていく。それが収まるとハンマーか何かで扉をこちら側に倒して入ってきた。
 入ってきた人物の顔を見て機関員たちは、驚愕した。敵であるはずの日本人が入ってきたのだ。
 警戒していると英語で、話してきた。

「我々は救出部隊だ。衛生兵もいるから早く挟まれている兵士を救出する!」
「わ、分かった!早くしてくれ!!」

 素早く挟まれた新兵のところまで行き、容態を確認しながら足を抜く作業を開始した。

「挟まれてからどれぐらい経つ?」
「1時間以上は経っているはずだ!」
「それ以外には?」
「水位が上がって海水を飲んでいた!」
「分かった」

 その情報を聞き、衛生兵が薬品を注射すると新兵の顔色が少しよくなった。その隙に挟まれているパイプのことを聞きながらワイヤーノコギリを隙間に通してパイプを切断して、バールを差し込み、隙を作って兵士を引っ張り出した。

「急いで医務室に運び込め!肺に水が入っているかもしれん!足のレントゲンも撮っておけ!」
「はい!」

 担架に乗せてすぐさま運び出し、医務室運んで行った。
 それ以外の兵士も医務室に行くように言って、ついて行っくように指示した。
 その後も閉じ込められた兵士を救出したり、助からなかった兵士の遺体を収容して行った。
 全体をくまなく調べ、生存者と遺体を探し終えたら撤収し、すぐに技術員が中に入り、浸水箇所の修理して、再び海に戻し、別の船にも同じ様に回収していった。


 その後は富士型は、船体を回収しては修理して多くの艦船を入手した。
 空母や護衛空母は、富士型に収容出来ないので、後から来た重巡洋艦が曳航して、浮きドックまで運び込んで富士と同じ様に生存者の救出、遺体の回収を行い船体の修理、改修作業に入り、しばらくはドックから出られなくなった。
 救出させた生存者は、病院船に運び込み軽傷の者は治療後、硫黄島に運びそこで生活してもらう。
 幸い食料などは、一部残ったアメリカ軍の輸送船に残されていたもので、十分足りうるので問題はない。
 回収された遺体は後日、神米合同の葬儀を行い硫黄島に埋葬された。

 助けられたアメリカ軍兵士は、日本人の丁寧な対応と命懸けで仲間を助けようと姿を見て、彼らに対する考えた方を変わって行った。
 
 戦後、この時救助された兵士達は彼等のことをこう言っていた。

「彼等こそ、世界で最も優秀な兵士だ。戦闘が終わった後では、敵であるはずの我々ですら救助しに来てくれた。我々はそんな事をほとんどしなかったが彼等は違った、彼等のお陰で多くの兵士の命が助かったのだ。彼等のこそ、真の英雄だ!」

 日本では、あまり有名ではないがアメリカでは、帰国した兵士によってアメリカ全土に広がり、アメリカでの人種差別は、ほとんど無くなった。
 そればかりか、災害が日本で起こるたびに航空部隊や艦隊を派遣して多くの被災者を助けてくれた。
 助けられた被災者が助けてくれたアメリカ軍の兵士に聞くと、その理由は「私の祖父はあなた方に助けられ命を繋ぎました。その事から祖父は日本に何かあったら命掛けで助けなければならないといつも言っていました。その恩を返すために志願してここに来ました」と言った。
 その話が広がり、後に詳しく調べると戦闘後に多くの兵士を手厚く救助し、亡くなっている兵士もできる限り収容して埋葬するなどの記録が多数見つかるもなぜ、このことが広まらなかったか、謎になっていたが1人の元軍人が「あまり前の事をしたたげで、別に褒められる用なことでもない」と言い、知られなかった理由が判明し、その事が1冊の本に纏められ、日本中だけでなく、世界中が日本兵の活動を知ることになった。



 

    
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