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ダンスホールを覗くと
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元々、住んでいた領地の館。ダンスホールへと向かうと、アンジェラの楽しそうな声が聞こえてくる。そっと扉をあけて覗き込んでみると、レオとアンジェラが踊っているところだった。とはいえ、アンジェラはまだ、4歳にもなっていない。おぼつかない足取りで、レオのダンスについていっている。
「アンジー笑ってないで、もう少しレオにくっついて」
「レオはダンス上手ですね?」
「……アンナが教えているからね。レオも、もう少しアンジェラをリードしているように踊らないと、子どもに振り回されているだけのかっこ悪いパートナーだぞ?」
「はいっ!ジョージア様。アン、もう少し、ゆっくり踊るから……」
コクと頷いて、レオにぴったりとついていく。さっきと違って、アンジェラとレオの息があったようだ。ぴったりと寄り添いながら踊れている。
扉の隙間からその様子を見ていたら、アデルが私に気が付いたようで、近寄ってくる。
「アンナ様、こんなところで見てないで、どうぞ」
「みつかっちゃったわね?」
「もう、用事はいいのですか?」
「リアノもアルカもいないから、お手紙を渡してきただけよ」
「そうでしたか」
「それにしても、ジョージア様は、教えるのも上手よね。さっきまでバラバラだったのに、もうぴったり息があっていて」
「レオにもセンスがあるんだと思いますよ。一度言われたからといって、あそこまでは……」
驚いているというよりかは感心しているアデル。アデルも近衛であったので、ダンスの心得はあるはずなのだがとチラリと見た。
「アデルも踊ってみる?」
「えっ?」
「そんなに驚かなくても。近衛だったのだから、踊れるでしょ?」
「……アンナ様は、嫌なところばかり言ってくるから困ります」
「もしかして、不得意な感じだった?」
返事の代わりに視線を逸らす。アンジェラとレオを見てひと段落したようで、ジョージアの方へ駆けていく。
「ホールもあいたことだし、一曲いかがですか?」
私が手を差し伸べると、ジッと見つめている。そんな様子をジョージアもみており、子どもたちも何事かが始まると期待しているようだった。
「アデル、女性からの誘いを断るのは失礼なことだよ?」
「……ジョージア様」
「心配しなくても、アンナは多少の失敗で怒ったりしなよ。なんたって、運動音痴のサシャの相手をしていたくらいだから、そうとう足を踏まれていると思うし」
「よくわかりましたね?ジョージア様。お兄様って、本当にどんくさいのですよ?」
「……貴族と一緒にしないでください。本当に苦手で」
「大丈夫。ここはアンバー領の元領主の館。ここにいるのは、ジョージア様とアンジェラ、ジョージとレオだけだから、失敗しても誰も咎めないわ!ほら、手を」
そう言って差し出した手を恐々取るので、私はギュっと握る。
「カウントの取り方は大丈夫?」
「……はい、たぶん」
「じゃあ、リードはしてくれるかしら?それとも私が?」
「……自信がないのでお任せします」
わかったわ!と返事をしたあと、ホールの真ん中に立つ。戸惑っているアデルの手を取り、私の背中へと誘導する。握った手を進行方向へ向け、カウントを取り始める。1,2,3,1,2,3と。まるで、初めてレオにダンスを教えたときのようで、笑ってしまいそうになる。
「もう少し早くしてもいいかしら?」
「……お任せします」
男性リードが普通な中、私がアデルをリードしているのを見て、ジョージアにレオが質問をしている。
「アンナ様は、リードもできるのですか?」
聞こえてきた言葉に、アデルは眉尻を下げてなんだか悲しそうだ。
「1曲くらい踊れるようにしておいたほうがいいわよ?このままじゃ、レオに置いて行かれるわよ?」
「レオ様は、いずれ、ウィル様同様爵位を授与されるほどの功績をあげるでしょ?」
「どうしてそう思うの?」
「見ていれば、わかります。きちんとウィル様の教育もセバス様の教養もナタリー様のマナーさえ身に着けていますから。デビュタントに向け、着々と努力を積み重ねているのは知っていますよ」
「……ウィルみたいに若干軽いのよね?私に対しては、そうじゃないけど」
見て?とアンジェラと一緒にいる姿を見ていると、敬語ではなくため口で、話している。本来は叱るところであるだろうが、そういう気安い存在が側にいることはアンジェラにとってもいいので、何も言わない。ウィルにも言われたことがあるが、未来のレオは、アンジェラにとって、なくてはならない存在なのだから、少しくらい大目に見てもいいだろう。大きくなったとき、お互いにどうするのが正しいのか、二人なら決められるだろうから。
「……それにしても、アンナ様は本当にお上手ですね?とてもうまくなったと、錯覚してしまいそうです」
「そう?それならよかったわ!じゃあ、そろそろ交替しましょう。アデル、練習あるのみよ?」
ニッコリ笑いかけ、今度はつまらなさそうにしていたジョージの名を呼んだ。まさか呼ばれると思っていなかったようで、驚いていたが、いらっしゃいと言えば、素直にこちらへ駆けてきた。
まだ、数回しかダンスの練習をしたことがなかったが、今日は少しだけ練習をすることにする。ジョージも嬉しそうにしているので、本当は一緒に練習がしたかったのかもしれない。アデルと同じくカウントをとって、ゆっくりと踊り始めた。
「アンジー笑ってないで、もう少しレオにくっついて」
「レオはダンス上手ですね?」
「……アンナが教えているからね。レオも、もう少しアンジェラをリードしているように踊らないと、子どもに振り回されているだけのかっこ悪いパートナーだぞ?」
「はいっ!ジョージア様。アン、もう少し、ゆっくり踊るから……」
コクと頷いて、レオにぴったりとついていく。さっきと違って、アンジェラとレオの息があったようだ。ぴったりと寄り添いながら踊れている。
扉の隙間からその様子を見ていたら、アデルが私に気が付いたようで、近寄ってくる。
「アンナ様、こんなところで見てないで、どうぞ」
「みつかっちゃったわね?」
「もう、用事はいいのですか?」
「リアノもアルカもいないから、お手紙を渡してきただけよ」
「そうでしたか」
「それにしても、ジョージア様は、教えるのも上手よね。さっきまでバラバラだったのに、もうぴったり息があっていて」
「レオにもセンスがあるんだと思いますよ。一度言われたからといって、あそこまでは……」
驚いているというよりかは感心しているアデル。アデルも近衛であったので、ダンスの心得はあるはずなのだがとチラリと見た。
「アデルも踊ってみる?」
「えっ?」
「そんなに驚かなくても。近衛だったのだから、踊れるでしょ?」
「……アンナ様は、嫌なところばかり言ってくるから困ります」
「もしかして、不得意な感じだった?」
返事の代わりに視線を逸らす。アンジェラとレオを見てひと段落したようで、ジョージアの方へ駆けていく。
「ホールもあいたことだし、一曲いかがですか?」
私が手を差し伸べると、ジッと見つめている。そんな様子をジョージアもみており、子どもたちも何事かが始まると期待しているようだった。
「アデル、女性からの誘いを断るのは失礼なことだよ?」
「……ジョージア様」
「心配しなくても、アンナは多少の失敗で怒ったりしなよ。なんたって、運動音痴のサシャの相手をしていたくらいだから、そうとう足を踏まれていると思うし」
「よくわかりましたね?ジョージア様。お兄様って、本当にどんくさいのですよ?」
「……貴族と一緒にしないでください。本当に苦手で」
「大丈夫。ここはアンバー領の元領主の館。ここにいるのは、ジョージア様とアンジェラ、ジョージとレオだけだから、失敗しても誰も咎めないわ!ほら、手を」
そう言って差し出した手を恐々取るので、私はギュっと握る。
「カウントの取り方は大丈夫?」
「……はい、たぶん」
「じゃあ、リードはしてくれるかしら?それとも私が?」
「……自信がないのでお任せします」
わかったわ!と返事をしたあと、ホールの真ん中に立つ。戸惑っているアデルの手を取り、私の背中へと誘導する。握った手を進行方向へ向け、カウントを取り始める。1,2,3,1,2,3と。まるで、初めてレオにダンスを教えたときのようで、笑ってしまいそうになる。
「もう少し早くしてもいいかしら?」
「……お任せします」
男性リードが普通な中、私がアデルをリードしているのを見て、ジョージアにレオが質問をしている。
「アンナ様は、リードもできるのですか?」
聞こえてきた言葉に、アデルは眉尻を下げてなんだか悲しそうだ。
「1曲くらい踊れるようにしておいたほうがいいわよ?このままじゃ、レオに置いて行かれるわよ?」
「レオ様は、いずれ、ウィル様同様爵位を授与されるほどの功績をあげるでしょ?」
「どうしてそう思うの?」
「見ていれば、わかります。きちんとウィル様の教育もセバス様の教養もナタリー様のマナーさえ身に着けていますから。デビュタントに向け、着々と努力を積み重ねているのは知っていますよ」
「……ウィルみたいに若干軽いのよね?私に対しては、そうじゃないけど」
見て?とアンジェラと一緒にいる姿を見ていると、敬語ではなくため口で、話している。本来は叱るところであるだろうが、そういう気安い存在が側にいることはアンジェラにとってもいいので、何も言わない。ウィルにも言われたことがあるが、未来のレオは、アンジェラにとって、なくてはならない存在なのだから、少しくらい大目に見てもいいだろう。大きくなったとき、お互いにどうするのが正しいのか、二人なら決められるだろうから。
「……それにしても、アンナ様は本当にお上手ですね?とてもうまくなったと、錯覚してしまいそうです」
「そう?それならよかったわ!じゃあ、そろそろ交替しましょう。アデル、練習あるのみよ?」
ニッコリ笑いかけ、今度はつまらなさそうにしていたジョージの名を呼んだ。まさか呼ばれると思っていなかったようで、驚いていたが、いらっしゃいと言えば、素直にこちらへ駆けてきた。
まだ、数回しかダンスの練習をしたことがなかったが、今日は少しだけ練習をすることにする。ジョージも嬉しそうにしているので、本当は一緒に練習がしたかったのかもしれない。アデルと同じくカウントをとって、ゆっくりと踊り始めた。
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