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ジョージは初ダンス?
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呼ぶと、ジョージはこちらに近寄ってくる。嬉しそうにしているので、まずは頭を撫でる。
「ジョージは初めてダンスするのかしら?」
「うん、初めて」
「じゃあ、お辞儀をするところからね?」
私はスカートをつまみ、頭を下げる。最近、アンジェラがマイブームにしているので、ジョージも同じようにぺこりと挨拶をした。このあたりは、ナタリーから習ったようで、きちんとした挨拶をする。
「すごいわね?ジョージも挨拶ができるのね?」
えらいわ!と褒めると、頬をほんのり紅潮させる。では……と、ジョージに近寄ってその小さな手を取る。レオよりも小さなその手は、アンジェラよりかは大きい。男の子だな?と思わせる手もなんだか愛おしい。自分の子どもではなくても、私なりの愛情をかけてきたつもりだ。ずっと、私に懐いてくれていたからか、感慨深くなる。
「ママにゆっくり合わせてみて」
腰あたりまでしかない子を大人が躍らせるのは難しい。屈むことも出来ないので、ゆっくりステップだけ教える。アンジェラが成長をすれば、練習相手にもなるのだろうが、もう少し先だろう。それに、ダンスの相手にはレオもいるから、ミアにも練習はつきあってもらうことになるだろう。
「うまいわね?さすがね?」
「上手?」
「えぇ、初めて踊るんですもの。上手よ!」
嬉しそうに笑うジョージに笑いかければ、また、真剣な顔をしてゆっくりステップを覚えていた。そんな一生懸命な姿も愛おしく感じる。
「ジョージは、確かにうまいな」
「ジョージア様もそう思いますか?」
私たちの練習を見ながら、ジョージアが頷く。公爵令息だったジョージアも誰かとこうしてダンスの練習をしたことだろう。数多の女性と踊っているのを見れば、嫌でも目を引く。女性に合わせたダンスが出来るうえに、この容姿なのだから、一度でいいから踊りたいという御婦人方が絶えない。
「アンナが相手だと、自分がうまくなったような気になるんだよな」
「ジョージア様でもそう思いますか?」
「アデルは、そう思っていたんだ?」
「もちろんです。アンナリーゼ様と踊ると、いつもの5割増しくらいうまくなったと思います。リードをされているんでしょうが……それすら感じさせないのが、また、なんとも」
「あはは、アデルはそっちか」
「……ジョージア様と一緒にしないでください。アンナ様と対等に踊れるのはジョージア様くらいですから」
ふっと笑うジョージアを私は見た。何を考えているのだろうか、その笑顔は少し緊張しているようだった。
「アデルにはそう見えるのかな?」
「えぇ、もちろんですけど……何かあるのですか?」
「あぁ、アンナの本当のパートナーとのダンスは絵にかいたようで、本当に素晴らしいんだ。僕も1度しか見たことがないんだから、アデルも見たことはないだろうけどね?」
「そんなに素晴らしいのですか?」
「言葉にならないほどだね?もう一度見てみたい気もするけど、そうすると、妬いてしまいそう」
それほどですか……とアデルは呟く。ジョージアが言っている人物は、金の髪を揺らして微笑む。緑色の瞳は優しく語り掛けてくるようで、私の王子様のことだ。
「もう二度とハリーと踊ることはありませんよ?」
「それはもったいない。二度とないだなんて……俺は、見てみたいけどね。大人になったアンナとヘンリー殿のダンスを」
「ハリーとは、もう会うこともありませんから……」
ジョージのほうに俯きながら呟いた。心配するように見上げてくるが、大丈夫だよと微笑む。そにジョージアが来た。
「そろそろ俺の奥さんを返してもらおうかな?ジョージ」
「……ママを?」
「うん。返してくれる」
私とジョージアを交互に見ながら、ジョージは渋々私の手を離した。その手をすぐさま握ろうとしたので、手で制して待ってジョージアを止める。
「ジョージ、お辞儀を忘れているわ。ダンスをしたら、相手にありがとうというお礼をしないといけないわ。ジョージと踊れて、嬉しかった。一緒に踊ってくれてありがとう」
お辞儀をすると、慌ててジョージもお辞儀をする。それが終われば、ジョージはアンジェラたちがいる脇へ駆けて行った。頃合いを見計らって、今度はジョージを呼ぶ。
「よく見ていて。女性をダンスに誘う方法」
「……それは、ジョージア様だから成功するやつですからね?」
「アデルもしてみればいいだろう?」
「……成功しませんから。いいですか?あれは、お手本というより、みんな王子様だからできる力技ですからね!」
アデルが若干拗ねたように子どもたちに教えているが、三人ともジョージアのように誘ったとしても、誰も拒まないだろう。容姿端麗であり、将来有望で、みなが憧れる王子様にお姫様と言っても過言ではない。
「そんなことないと思うけど?ねぇ、アンナ?」
「……私はアデルのいうことに賛成ですけどね?あの子たちには、アデルの意見の方が向かないことだけはわかります」
「……アンナ様まで。確かに、三人とも優良物件過ぎますけど、辛いです」
ぐすんと泣くマネをしたので、アンジェラがご愁傷様とでも言いたいのか、太腿をぽんぽんと叩いていた。何か伝わったのか、苦笑いをするアデルを横に、ジョージアから誘われたので、私はジョージアと1曲分ほど、踊って束の間の休憩を楽しんだ。
「ジョージは初めてダンスするのかしら?」
「うん、初めて」
「じゃあ、お辞儀をするところからね?」
私はスカートをつまみ、頭を下げる。最近、アンジェラがマイブームにしているので、ジョージも同じようにぺこりと挨拶をした。このあたりは、ナタリーから習ったようで、きちんとした挨拶をする。
「すごいわね?ジョージも挨拶ができるのね?」
えらいわ!と褒めると、頬をほんのり紅潮させる。では……と、ジョージに近寄ってその小さな手を取る。レオよりも小さなその手は、アンジェラよりかは大きい。男の子だな?と思わせる手もなんだか愛おしい。自分の子どもではなくても、私なりの愛情をかけてきたつもりだ。ずっと、私に懐いてくれていたからか、感慨深くなる。
「ママにゆっくり合わせてみて」
腰あたりまでしかない子を大人が躍らせるのは難しい。屈むことも出来ないので、ゆっくりステップだけ教える。アンジェラが成長をすれば、練習相手にもなるのだろうが、もう少し先だろう。それに、ダンスの相手にはレオもいるから、ミアにも練習はつきあってもらうことになるだろう。
「うまいわね?さすがね?」
「上手?」
「えぇ、初めて踊るんですもの。上手よ!」
嬉しそうに笑うジョージに笑いかければ、また、真剣な顔をしてゆっくりステップを覚えていた。そんな一生懸命な姿も愛おしく感じる。
「ジョージは、確かにうまいな」
「ジョージア様もそう思いますか?」
私たちの練習を見ながら、ジョージアが頷く。公爵令息だったジョージアも誰かとこうしてダンスの練習をしたことだろう。数多の女性と踊っているのを見れば、嫌でも目を引く。女性に合わせたダンスが出来るうえに、この容姿なのだから、一度でいいから踊りたいという御婦人方が絶えない。
「アンナが相手だと、自分がうまくなったような気になるんだよな」
「ジョージア様でもそう思いますか?」
「アデルは、そう思っていたんだ?」
「もちろんです。アンナリーゼ様と踊ると、いつもの5割増しくらいうまくなったと思います。リードをされているんでしょうが……それすら感じさせないのが、また、なんとも」
「あはは、アデルはそっちか」
「……ジョージア様と一緒にしないでください。アンナ様と対等に踊れるのはジョージア様くらいですから」
ふっと笑うジョージアを私は見た。何を考えているのだろうか、その笑顔は少し緊張しているようだった。
「アデルにはそう見えるのかな?」
「えぇ、もちろんですけど……何かあるのですか?」
「あぁ、アンナの本当のパートナーとのダンスは絵にかいたようで、本当に素晴らしいんだ。僕も1度しか見たことがないんだから、アデルも見たことはないだろうけどね?」
「そんなに素晴らしいのですか?」
「言葉にならないほどだね?もう一度見てみたい気もするけど、そうすると、妬いてしまいそう」
それほどですか……とアデルは呟く。ジョージアが言っている人物は、金の髪を揺らして微笑む。緑色の瞳は優しく語り掛けてくるようで、私の王子様のことだ。
「もう二度とハリーと踊ることはありませんよ?」
「それはもったいない。二度とないだなんて……俺は、見てみたいけどね。大人になったアンナとヘンリー殿のダンスを」
「ハリーとは、もう会うこともありませんから……」
ジョージのほうに俯きながら呟いた。心配するように見上げてくるが、大丈夫だよと微笑む。そにジョージアが来た。
「そろそろ俺の奥さんを返してもらおうかな?ジョージ」
「……ママを?」
「うん。返してくれる」
私とジョージアを交互に見ながら、ジョージは渋々私の手を離した。その手をすぐさま握ろうとしたので、手で制して待ってジョージアを止める。
「ジョージ、お辞儀を忘れているわ。ダンスをしたら、相手にありがとうというお礼をしないといけないわ。ジョージと踊れて、嬉しかった。一緒に踊ってくれてありがとう」
お辞儀をすると、慌ててジョージもお辞儀をする。それが終われば、ジョージはアンジェラたちがいる脇へ駆けて行った。頃合いを見計らって、今度はジョージを呼ぶ。
「よく見ていて。女性をダンスに誘う方法」
「……それは、ジョージア様だから成功するやつですからね?」
「アデルもしてみればいいだろう?」
「……成功しませんから。いいですか?あれは、お手本というより、みんな王子様だからできる力技ですからね!」
アデルが若干拗ねたように子どもたちに教えているが、三人ともジョージアのように誘ったとしても、誰も拒まないだろう。容姿端麗であり、将来有望で、みなが憧れる王子様にお姫様と言っても過言ではない。
「そんなことないと思うけど?ねぇ、アンナ?」
「……私はアデルのいうことに賛成ですけどね?あの子たちには、アデルの意見の方が向かないことだけはわかります」
「……アンナ様まで。確かに、三人とも優良物件過ぎますけど、辛いです」
ぐすんと泣くマネをしたので、アンジェラがご愁傷様とでも言いたいのか、太腿をぽんぽんと叩いていた。何か伝わったのか、苦笑いをするアデルを横に、ジョージアから誘われたので、私はジョージアと1曲分ほど、踊って束の間の休憩を楽しんだ。
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