29 / 1,480
エリザベスの宝飾品を探せ!
しおりを挟む
ドレスの打ち合わせをしたのは、ちょうど夏季休暇に入る前だった。
兄は、この夏季休暇をエリザベスのドレスにあう宝飾品を選ぶのに費やしていたようで、屋敷に商人を呼んだり、出かけて行ったりと忙しそうにしていた。
当日まで、お互い衣装について、内緒にすることになっていたので、私たちはお互いどんな衣装になったのか知らなかった。
ただ……兄のセンスが……イマイチすぎたのか……さすがに、渡す宝飾品が決まらなくて泣きついてくる。
「いーもーとよー!! 今すぐ助けてくれ!緊急会議だ!」
バンっと勢いよく部屋の扉をあけられて正直驚いた。
座っていた椅子からちょっとお尻が浮くぐらいにだ。
扉の前まで、兄は気配も音もたてずにきたから、よけいに驚いた。
差し脚抜き足がうますぎる……私は、そんなくだらないことを頭の隅の方で考えしまう。
「お兄様……ビックリしたではありませんか!
それにしても、顔色悪いですよ……?」
扉の前で仁王立ちしている兄は、とっても顔色が悪い。
その理由は、エリザベスに贈る宝飾品が未だ選べないということへのプレッシャーだった。
ずっと悩んでいるようだから知っていたけど、さすがにこれは兄の試練だ。
エリザベスとの将来を考えるなら、一人で頑張るべきなのだが……そうも言ってられない様子に、私は見かねてため息一つつく。
何も言わずに扉の前で仁王立ちしてぶつぶつ言っている兄は相当怖いのだ。
「お兄様、そんなところでぶつぶつ言ってないで入ってきてください。
一緒に考えましょう。
エリザベスには、告げ口しませんから……ほら、ここに座って!」
妹自ら席を用意すると、渋々そこに座る。
「それで、ドレスは決まったのですよね?」
コクンと頷く。
「あとは、宝飾品ですか?」
再度コクンと頷く。
「めどはたってますか?」
フルフルと首を横に振る。
しゃべらずに動きだけで会話をしてくるので、相当めんどくさい。
「お兄様、めんどくさいです」
そういうと、俯き加減だった兄は、こちらにぐわっと顔を向けてきた。
「お兄様、近いですし怖いです!」
「……アンナ……僕は……僕は、どうしたらいいのだろう……?」
「どうしたらって、エリザベスに似合う宝飾品を選べばいいだけの話ですよ?」
頭を抱えてフルフルとしている。
本当にめんどくさい。
「お兄様、めんどくさいので、出てってください!」
「妹よ……見捨てるのか……!」
寧ろ、妹にすがるのか……?
「着替えるから出てけって意味ですけど。
お兄様も着替えてきてください。街にでますよ!」
「妹よぉぉぉ!!!」
ガシッと抱き着つかれる。
避けたつもりが、ガッチリ腕の中におさまってしまった。
あぁ、本当に面倒なことに巻き込まれた。
「めんどくさいので早くしてください。
用意しないなら、私は、行きませんよ?」
涙目になっている兄を軽く脅しながら、部屋から追い出す。
そして、お忍び用のワンピースに私も着替えた。
兄もさっそく着替えてきたのだろう、今度はちゃんとノックの音が聞こえる。
私も着替え終わったので入るように促すと、お忍び用に着替えて意気揚々としている。
さっきまでのめんどくさい兄はいなかったが、基本的に変わっていないと思っておいていいだろう。
馬車を用意してもらって、街まで出る。
貴族御用達の宝飾品の売り場は、全部見たけど心惹かれるものはなかったと兄が言うので、庶民のお店に向かうことにした。
デザインさえ気に入れば、何とでもなる。
ようは、金に物言わせるだけでいいのだ。
とても簡単なことだ。
「アンナ……ここは庶民の店だぞ?」
貴族子息令嬢の卒業式で飾るにしては安上がりと思われるが、意外と掘り出しものもあったりする。
そして、何より気に入るデザインを見つけてデザイナーと交渉すればいいのだ。
「いいからいきますよ!」
馬車から兄を引きずって歩く。
まるで、アクセサリーを買ってとせびる彼女みたいだ……
無駄な抵抗とわかりつつも、妹ですからねーっと周りに小さく呟く。
誰も聞いていないだろう。
お店に入ると色とりどりの宝石がガラスケースに入っている。
とても品質のよさそうなものだった。
これなら、普通にエリザベスに渡しても問題ないように思う。
「さて、お兄様。どんなものがいいのかイメージはありますか?」
私はエリザベスのドレスを知らない。
どんな仕上がりになるのかは、当日の楽しみとしているからだ。
「イメージなんだけど、蝶がいいと思うんだ。
ドレスも花っぽい感じだから、たぶんかわいい感じのものがいい!」
想像しているのだろう……だらしない顔をしている。
そんな兄はほっておいて、私はショーケースを見ていく。
赤みがかった髪にルビーのような瞳。
たぶん赤とかオレンジ、ピンクなどの暖色系のドレスが思い浮かぶ。
それなら、紫の蝶はどうだろうか?
少し青みがあれば髪や瞳が映えるのではないだろうか?
あとは、真珠。
大ぶりの真珠を付けるのもかわいいと思う。
今、貴婦人の中では真珠がはやり始めたのだ。
上級貴族ともなれば、流行りは大事だ。
それとなく兄に言ってみると、じゃあと店員に話しかけ、それらしいものはないか尋ねていく。
兄は、この夏季休暇をエリザベスのドレスにあう宝飾品を選ぶのに費やしていたようで、屋敷に商人を呼んだり、出かけて行ったりと忙しそうにしていた。
当日まで、お互い衣装について、内緒にすることになっていたので、私たちはお互いどんな衣装になったのか知らなかった。
ただ……兄のセンスが……イマイチすぎたのか……さすがに、渡す宝飾品が決まらなくて泣きついてくる。
「いーもーとよー!! 今すぐ助けてくれ!緊急会議だ!」
バンっと勢いよく部屋の扉をあけられて正直驚いた。
座っていた椅子からちょっとお尻が浮くぐらいにだ。
扉の前まで、兄は気配も音もたてずにきたから、よけいに驚いた。
差し脚抜き足がうますぎる……私は、そんなくだらないことを頭の隅の方で考えしまう。
「お兄様……ビックリしたではありませんか!
それにしても、顔色悪いですよ……?」
扉の前で仁王立ちしている兄は、とっても顔色が悪い。
その理由は、エリザベスに贈る宝飾品が未だ選べないということへのプレッシャーだった。
ずっと悩んでいるようだから知っていたけど、さすがにこれは兄の試練だ。
エリザベスとの将来を考えるなら、一人で頑張るべきなのだが……そうも言ってられない様子に、私は見かねてため息一つつく。
何も言わずに扉の前で仁王立ちしてぶつぶつ言っている兄は相当怖いのだ。
「お兄様、そんなところでぶつぶつ言ってないで入ってきてください。
一緒に考えましょう。
エリザベスには、告げ口しませんから……ほら、ここに座って!」
妹自ら席を用意すると、渋々そこに座る。
「それで、ドレスは決まったのですよね?」
コクンと頷く。
「あとは、宝飾品ですか?」
再度コクンと頷く。
「めどはたってますか?」
フルフルと首を横に振る。
しゃべらずに動きだけで会話をしてくるので、相当めんどくさい。
「お兄様、めんどくさいです」
そういうと、俯き加減だった兄は、こちらにぐわっと顔を向けてきた。
「お兄様、近いですし怖いです!」
「……アンナ……僕は……僕は、どうしたらいいのだろう……?」
「どうしたらって、エリザベスに似合う宝飾品を選べばいいだけの話ですよ?」
頭を抱えてフルフルとしている。
本当にめんどくさい。
「お兄様、めんどくさいので、出てってください!」
「妹よ……見捨てるのか……!」
寧ろ、妹にすがるのか……?
「着替えるから出てけって意味ですけど。
お兄様も着替えてきてください。街にでますよ!」
「妹よぉぉぉ!!!」
ガシッと抱き着つかれる。
避けたつもりが、ガッチリ腕の中におさまってしまった。
あぁ、本当に面倒なことに巻き込まれた。
「めんどくさいので早くしてください。
用意しないなら、私は、行きませんよ?」
涙目になっている兄を軽く脅しながら、部屋から追い出す。
そして、お忍び用のワンピースに私も着替えた。
兄もさっそく着替えてきたのだろう、今度はちゃんとノックの音が聞こえる。
私も着替え終わったので入るように促すと、お忍び用に着替えて意気揚々としている。
さっきまでのめんどくさい兄はいなかったが、基本的に変わっていないと思っておいていいだろう。
馬車を用意してもらって、街まで出る。
貴族御用達の宝飾品の売り場は、全部見たけど心惹かれるものはなかったと兄が言うので、庶民のお店に向かうことにした。
デザインさえ気に入れば、何とでもなる。
ようは、金に物言わせるだけでいいのだ。
とても簡単なことだ。
「アンナ……ここは庶民の店だぞ?」
貴族子息令嬢の卒業式で飾るにしては安上がりと思われるが、意外と掘り出しものもあったりする。
そして、何より気に入るデザインを見つけてデザイナーと交渉すればいいのだ。
「いいからいきますよ!」
馬車から兄を引きずって歩く。
まるで、アクセサリーを買ってとせびる彼女みたいだ……
無駄な抵抗とわかりつつも、妹ですからねーっと周りに小さく呟く。
誰も聞いていないだろう。
お店に入ると色とりどりの宝石がガラスケースに入っている。
とても品質のよさそうなものだった。
これなら、普通にエリザベスに渡しても問題ないように思う。
「さて、お兄様。どんなものがいいのかイメージはありますか?」
私はエリザベスのドレスを知らない。
どんな仕上がりになるのかは、当日の楽しみとしているからだ。
「イメージなんだけど、蝶がいいと思うんだ。
ドレスも花っぽい感じだから、たぶんかわいい感じのものがいい!」
想像しているのだろう……だらしない顔をしている。
そんな兄はほっておいて、私はショーケースを見ていく。
赤みがかった髪にルビーのような瞳。
たぶん赤とかオレンジ、ピンクなどの暖色系のドレスが思い浮かぶ。
それなら、紫の蝶はどうだろうか?
少し青みがあれば髪や瞳が映えるのではないだろうか?
あとは、真珠。
大ぶりの真珠を付けるのもかわいいと思う。
今、貴婦人の中では真珠がはやり始めたのだ。
上級貴族ともなれば、流行りは大事だ。
それとなく兄に言ってみると、じゃあと店員に話しかけ、それらしいものはないか尋ねていく。
0
お気に入りに追加
121
あなたにおすすめの小説
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
悲恋を気取った侯爵夫人の末路
三木谷夜宵
ファンタジー
侯爵夫人のプリシアは、貴族令嬢と騎士の悲恋を描いた有名なロマンス小説のモデルとして持て囃されていた。
順風満帆だった彼女の人生は、ある日突然に終わりを告げる。
悲恋のヒロインを気取っていた彼女が犯した過ちとは──?
カクヨムにも公開してます。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
婚約破棄の場に相手がいなかった件について
三木谷夜宵
ファンタジー
侯爵令息であるアダルベルトは、とある夜会で婚約者の伯爵令嬢クラウディアとの婚約破棄を宣言する。しかし、その夜会にクラウディアの姿はなかった。
断罪イベントの夜会に婚約者を迎えに来ないというパターンがあるので、では行かなければいいと思って書いたら、人徳あふれるヒロイン(不在)が誕生しました。
カクヨムにも公開しています。
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
逃した番は他国に嫁ぐ
基本二度寝
恋愛
「番が現れたら、婚約を解消してほしい」
婚約者との茶会。
和やかな会話が落ち着いた所で、改まって座を正した王太子ヴェロージオは婚約者の公爵令嬢グリシアにそう願った。
獣人の血が交じるこの国で、番というものの存在の大きさは誰しも理解している。
だから、グリシアも頷いた。
「はい。わかりました。お互いどちらかが番と出会えたら円満に婚約解消をしましょう!」
グリシアに答えに満足したはずなのだが、ヴェロージオの心に沸き上がる感情。
こちらの希望を受け入れられたはずのに…、何故か、もやっとした気持ちになった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる