28 / 1,480
赤薔薇の称号
しおりを挟む
部屋に残された二人は、そのまま手を握ったままただ座っていた。
この沈黙さえ、心地よい時間が流れていくようだ。
「アンナ、もう終わったか? 」
ひょこっとエリザベスと一緒に兄が自室へ戻ってきた。
そう、何を隠そう、ここは兄の部屋なのだ。
私たちを見たエリザベスは生暖かい視線をくれ、兄は少し剣のある視線を送ってくる。
「あらあら、アンナもジョージア様もお顔が真っ赤ですわよ!」
意地の悪い笑みを浮かべて、エリザベスは指摘してきたので、握っていた手をどちらからともいわず手放した。
名残惜しかったが、からかわれてしまっては、仕方がない。
「……お兄様、ドレスはもう決まったわ。
それに夏季休暇中に仮縫いと試着もすることになったの」
「そうか、では、こちらも合わせてそうしよう。
エリーはそれでもいいかい?」
ふふふと今度は、エリザベスが兄に向って優しく笑う。
兄は、いつも以上に言葉が少ないが、うまくいっているようだ。
「サシャは、ジョージア様にアンナが取られたみたいで寂しいのね?」
「エリー! そんなことは、ないぞ! アンナは……」
「アンナはなんですか? お兄様? 」
兄とエリザベスの話している様子を見ていると普段の私が戻ってきたようだ。
ニッコリ貼り付けたような笑顔を兄に向けるとあわあわし始めている。
「いや、あの、アンナは僕のかわいい妹だよ……うんうん」
「それは、どうもありがとう。
お兄様も私の自慢ですよ。
エリザベス、これからもお兄様のこと、よろしくお願いします」
「わかりました。その願い、しかと承りました」
そんな会話をジョージアは、微笑ましく聞いている。
自分はそこに入れない気がしているようで、少し寂しいようだ。
「ジョージアもうちのじゃじゃ馬をよろしく頼むよ……」
「なんですってぇ?」
「いや、あの……かわいい妹を頼むよ!!」
「あぁ、その願い、しかと承った」
兄の冗談半分のお願いに真剣に答えるジョージア。
「あ……いや、うん。よろしく頼むよ。アンナは、本当に大事な妹なんだ。
卒業式で、一番の華にしてやってくれ……ジョージアなら、難なくできるだろ?」
兄は、ジョージアに頭を下げていた。
その場にいた私もジョージアも驚く。
エリザベスだけが、兄の行動を暖かく見守っていた。
「サシャ、どうしたんだ? 言われなくても、アンナは一番の華になれるさ!」
「いや、なんていうか、うん。こんな感傷的じゃだめだな……」
「そうよ、私が一番の華になんてなったら、ダメでしょ。
だって、一番の華は、エリザベスだものね?」
「えっ? 私!? 私は、サシャの一番の華になれれば他の称号はいらな……」
私は、エリザベスにされたように生暖かい視線を返しておいた。
それが恥ずかしかったのかエリザベスの言葉は尻つぼみに切れていく。
ちょっと、混沌とした部屋の状況になってきた。
話題変えようとしたところで、空気の読まない馬鹿兄。
「じゃあ、僕は、卒業式でエリーを僕の生涯の華にするよ!」
兄はエリザベスの手を取り、私達のいる前で、恥ずかしげもなく言い放つ。
そう、プロポーズの言葉を。
意図を得たのか、エリザベスは涙を流していた。
こんな私たちがいる中で言われてもいいものだろうか……疑問は残る。
そして、兄の鈍さというか残念さをしみじみ思う。
私は、そっとエリザベスにハンカチを手渡した。
「そして、ジョージア。
君には、アンナを学園の薔薇にしてくれ! 赤薔薇の称号を取ってくれ!」
兄はジョージアに、卒業式での赤薔薇の称号を取れと言い放つ。
学園の卒業式では、カップルで参加すると薔薇の称号が与えられることがある。
それは、いわゆるベストカップルという称号なのだが、学園の歴史に刻まれるのだ。
図書館へ行けば、歴代の薔薇たちの名が閲覧できる。
「お兄様! そんなこというもん……」
「アンナ、サシャからの挑戦受けるよ!君に赤薔薇の称号を」
「ジョージア様まで!!」
先ほどまでとは違う意味で混沌としてきた。
「いいんだ。アンナには、それだけの価値があるんだ。狙わせてくれ」
真剣に言われれば、私は頷くしかない。
「薔薇の称号」とは、今では、卒業式でのベストカップルの称号という意味で使われているが、赤薔薇は特別なものだった。
将来の伴侶を意味しているのだ。
赤薔薇の称号を取ったもので、結婚していないカップルはいない。
そして、離婚した記録も残っていない。
本当の意味でのベストカップルなのだ。
ただ、立場上離婚できない人も多いようだが、そこは、今の際、横に置いておこう。
兄は、知っている。
来年の今頃、私は集団政略結婚によりジョージアと結婚することを。
でも、ジョージアは知らない。
卒業すれば、ソフィアと婚約者とするため奔走することが決まっているのだ。
「ジョージア様。赤薔薇の意味を知っているのですか?
卒業すれば、ソフィアさんとの婚約があるのですよ?」
一応、赤薔薇の称号について、意味を知っているのか尋ねるべきだと思い確認する。
ジョージアの返答は実にあっさりだ。
「あぁ、わかっているとも。
それでも、アンナと共にと望んでしまうんだ。
君を知れば知るほど、君の、アンナの隣にいたいと。
例え叶わないとしても、一時の夢だとしても永久に残る赤薔薇の称号をアンナに贈りたい!」
ジョージアの心の中を覗いた気がした。
私は、愛だ恋だとたくさんの人に言われてきたが、ジョージア以外に誰にもこんな風に真剣に言われたことがなかった。
「アンナ、今のはジョージアの本心だな。僕、感動しちゃったよ。
まぁ、アンナを生涯の伴侶として選ばないっていうのは、ホント兄としては腹立たしい限りだけどね。
でも、僕も望んでいる。
アンナに赤薔薇の称号を。
だから、二人で目指してくれ!」
兄が、再度頭を下げてくる。
そして、兄に倣ってエリザベスも一緒にだ。
ジョージアと私にだ。
…………
「わかりました。私、赤薔薇の称号が取れるように努力します。
ジョージア様との思い出のために。
称号があれば、ジョージア様は私のことを忘れないでしょ?」
ジョージアに向けてほほ笑む。
「あぁ、忘れない。アンナと過ごした日々は忘れないよ!」
本来なら、上級貴族であるジョージアの一言で下級貴族であるソフィアとの婚約はしなくてもいいのだ。
それは、誰も口にしない。
ジョージアには、ジョージアの事情があるのだから……
そこまでは、私も『予知夢』で確認できなかったので、何故婚約をするのかわからなかった。
何故、反対までされる人と婚約するために奔走しなくてはいけないのか……わからない。
でも、今は二人で卒業式で赤薔薇の称号を取るという目標ができた。
これは、『予知夢』に見ていない出来事なのだけど、すでに卒業式に一緒に出るために調整していることすら、『予知夢』に見ていないのだ。
何が起こってもおかしくない。
「どうすれば、なれるのかわからないけど、がんばろうね!」
ジョージアの腕にそっと触れて声をかけると、あぁと優しい返事をくれる。
兄もエリザベスも優しく私たちを見守ってくれている。
頑張ろう! 未来がより良いものになるように! !
その日は日が暮れるまで4人で、『赤薔薇の称号』について話あったのある。
この沈黙さえ、心地よい時間が流れていくようだ。
「アンナ、もう終わったか? 」
ひょこっとエリザベスと一緒に兄が自室へ戻ってきた。
そう、何を隠そう、ここは兄の部屋なのだ。
私たちを見たエリザベスは生暖かい視線をくれ、兄は少し剣のある視線を送ってくる。
「あらあら、アンナもジョージア様もお顔が真っ赤ですわよ!」
意地の悪い笑みを浮かべて、エリザベスは指摘してきたので、握っていた手をどちらからともいわず手放した。
名残惜しかったが、からかわれてしまっては、仕方がない。
「……お兄様、ドレスはもう決まったわ。
それに夏季休暇中に仮縫いと試着もすることになったの」
「そうか、では、こちらも合わせてそうしよう。
エリーはそれでもいいかい?」
ふふふと今度は、エリザベスが兄に向って優しく笑う。
兄は、いつも以上に言葉が少ないが、うまくいっているようだ。
「サシャは、ジョージア様にアンナが取られたみたいで寂しいのね?」
「エリー! そんなことは、ないぞ! アンナは……」
「アンナはなんですか? お兄様? 」
兄とエリザベスの話している様子を見ていると普段の私が戻ってきたようだ。
ニッコリ貼り付けたような笑顔を兄に向けるとあわあわし始めている。
「いや、あの、アンナは僕のかわいい妹だよ……うんうん」
「それは、どうもありがとう。
お兄様も私の自慢ですよ。
エリザベス、これからもお兄様のこと、よろしくお願いします」
「わかりました。その願い、しかと承りました」
そんな会話をジョージアは、微笑ましく聞いている。
自分はそこに入れない気がしているようで、少し寂しいようだ。
「ジョージアもうちのじゃじゃ馬をよろしく頼むよ……」
「なんですってぇ?」
「いや、あの……かわいい妹を頼むよ!!」
「あぁ、その願い、しかと承った」
兄の冗談半分のお願いに真剣に答えるジョージア。
「あ……いや、うん。よろしく頼むよ。アンナは、本当に大事な妹なんだ。
卒業式で、一番の華にしてやってくれ……ジョージアなら、難なくできるだろ?」
兄は、ジョージアに頭を下げていた。
その場にいた私もジョージアも驚く。
エリザベスだけが、兄の行動を暖かく見守っていた。
「サシャ、どうしたんだ? 言われなくても、アンナは一番の華になれるさ!」
「いや、なんていうか、うん。こんな感傷的じゃだめだな……」
「そうよ、私が一番の華になんてなったら、ダメでしょ。
だって、一番の華は、エリザベスだものね?」
「えっ? 私!? 私は、サシャの一番の華になれれば他の称号はいらな……」
私は、エリザベスにされたように生暖かい視線を返しておいた。
それが恥ずかしかったのかエリザベスの言葉は尻つぼみに切れていく。
ちょっと、混沌とした部屋の状況になってきた。
話題変えようとしたところで、空気の読まない馬鹿兄。
「じゃあ、僕は、卒業式でエリーを僕の生涯の華にするよ!」
兄はエリザベスの手を取り、私達のいる前で、恥ずかしげもなく言い放つ。
そう、プロポーズの言葉を。
意図を得たのか、エリザベスは涙を流していた。
こんな私たちがいる中で言われてもいいものだろうか……疑問は残る。
そして、兄の鈍さというか残念さをしみじみ思う。
私は、そっとエリザベスにハンカチを手渡した。
「そして、ジョージア。
君には、アンナを学園の薔薇にしてくれ! 赤薔薇の称号を取ってくれ!」
兄はジョージアに、卒業式での赤薔薇の称号を取れと言い放つ。
学園の卒業式では、カップルで参加すると薔薇の称号が与えられることがある。
それは、いわゆるベストカップルという称号なのだが、学園の歴史に刻まれるのだ。
図書館へ行けば、歴代の薔薇たちの名が閲覧できる。
「お兄様! そんなこというもん……」
「アンナ、サシャからの挑戦受けるよ!君に赤薔薇の称号を」
「ジョージア様まで!!」
先ほどまでとは違う意味で混沌としてきた。
「いいんだ。アンナには、それだけの価値があるんだ。狙わせてくれ」
真剣に言われれば、私は頷くしかない。
「薔薇の称号」とは、今では、卒業式でのベストカップルの称号という意味で使われているが、赤薔薇は特別なものだった。
将来の伴侶を意味しているのだ。
赤薔薇の称号を取ったもので、結婚していないカップルはいない。
そして、離婚した記録も残っていない。
本当の意味でのベストカップルなのだ。
ただ、立場上離婚できない人も多いようだが、そこは、今の際、横に置いておこう。
兄は、知っている。
来年の今頃、私は集団政略結婚によりジョージアと結婚することを。
でも、ジョージアは知らない。
卒業すれば、ソフィアと婚約者とするため奔走することが決まっているのだ。
「ジョージア様。赤薔薇の意味を知っているのですか?
卒業すれば、ソフィアさんとの婚約があるのですよ?」
一応、赤薔薇の称号について、意味を知っているのか尋ねるべきだと思い確認する。
ジョージアの返答は実にあっさりだ。
「あぁ、わかっているとも。
それでも、アンナと共にと望んでしまうんだ。
君を知れば知るほど、君の、アンナの隣にいたいと。
例え叶わないとしても、一時の夢だとしても永久に残る赤薔薇の称号をアンナに贈りたい!」
ジョージアの心の中を覗いた気がした。
私は、愛だ恋だとたくさんの人に言われてきたが、ジョージア以外に誰にもこんな風に真剣に言われたことがなかった。
「アンナ、今のはジョージアの本心だな。僕、感動しちゃったよ。
まぁ、アンナを生涯の伴侶として選ばないっていうのは、ホント兄としては腹立たしい限りだけどね。
でも、僕も望んでいる。
アンナに赤薔薇の称号を。
だから、二人で目指してくれ!」
兄が、再度頭を下げてくる。
そして、兄に倣ってエリザベスも一緒にだ。
ジョージアと私にだ。
…………
「わかりました。私、赤薔薇の称号が取れるように努力します。
ジョージア様との思い出のために。
称号があれば、ジョージア様は私のことを忘れないでしょ?」
ジョージアに向けてほほ笑む。
「あぁ、忘れない。アンナと過ごした日々は忘れないよ!」
本来なら、上級貴族であるジョージアの一言で下級貴族であるソフィアとの婚約はしなくてもいいのだ。
それは、誰も口にしない。
ジョージアには、ジョージアの事情があるのだから……
そこまでは、私も『予知夢』で確認できなかったので、何故婚約をするのかわからなかった。
何故、反対までされる人と婚約するために奔走しなくてはいけないのか……わからない。
でも、今は二人で卒業式で赤薔薇の称号を取るという目標ができた。
これは、『予知夢』に見ていない出来事なのだけど、すでに卒業式に一緒に出るために調整していることすら、『予知夢』に見ていないのだ。
何が起こってもおかしくない。
「どうすれば、なれるのかわからないけど、がんばろうね!」
ジョージアの腕にそっと触れて声をかけると、あぁと優しい返事をくれる。
兄もエリザベスも優しく私たちを見守ってくれている。
頑張ろう! 未来がより良いものになるように! !
その日は日が暮れるまで4人で、『赤薔薇の称号』について話あったのある。
0
お気に入りに追加
120
あなたにおすすめの小説
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
悲恋を気取った侯爵夫人の末路
三木谷夜宵
ファンタジー
侯爵夫人のプリシアは、貴族令嬢と騎士の悲恋を描いた有名なロマンス小説のモデルとして持て囃されていた。
順風満帆だった彼女の人生は、ある日突然に終わりを告げる。
悲恋のヒロインを気取っていた彼女が犯した過ちとは──?
カクヨムにも公開してます。
側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります。
とうや
恋愛
「私はシャーロットを妻にしようと思う。君は側妃になってくれ」
成婚の儀を迎える半年前。王太子セオドアは、15年も婚約者だったエマにそう言った。微笑んだままのエマ・シーグローブ公爵令嬢と、驚きの余り硬直する近衛騎士ケイレブ・シェパード。幼馴染だった3人の関係は、シャーロットという少女によって崩れた。
「側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります」
********************************************
ATTENTION
********************************************
*世界軸は『側近候補を外されて覚醒したら〜』あたりの、なんちゃってヨーロッパ風。魔法はあるけれど魔王もいないし神様も遠い存在。そんなご都合主義で設定うすうすの世界です。
*いつものような残酷な表現はありませんが、倫理観に難ありで軽い胸糞です。タグを良くご覧ください。
*R-15は保険です。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
逃した番は他国に嫁ぐ
基本二度寝
恋愛
「番が現れたら、婚約を解消してほしい」
婚約者との茶会。
和やかな会話が落ち着いた所で、改まって座を正した王太子ヴェロージオは婚約者の公爵令嬢グリシアにそう願った。
獣人の血が交じるこの国で、番というものの存在の大きさは誰しも理解している。
だから、グリシアも頷いた。
「はい。わかりました。お互いどちらかが番と出会えたら円満に婚約解消をしましょう!」
グリシアに答えに満足したはずなのだが、ヴェロージオの心に沸き上がる感情。
こちらの希望を受け入れられたはずのに…、何故か、もやっとした気持ちになった。
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる