57 / 99
第57話 岩の手→
しおりを挟む何の策もなく突っ込んでくる「じゅん」と「ともこ」。連係プレーもないなら十分倒せる。自信はある。
「早苗たちの仇しっかりとらせてもらうで」
コクリとうなづいた。私達は──連携はばっちり取れてる。
ものの数秒で、2人を倒した。倒れた2人の武器を遠くへと放り投げた。あとはタンク薬の「じゅん」だけ。彼はタンクとしてはそれなりに優秀だけど、攻撃魔力はEランク並み。どうすることもできない。
降参したのか、そっと両手を上げた。
「っったくよぉ、こんなやつらあいてに負けちまうッとは」
「早苗とヨーコの仇やで。謝罪せぇや──手柄を横取りしたこともな」
「わかったよ……」
「も、申し訳ありませんでした」
「すまなかかった」
じゅんが嫌そうにつぶやいた。配信も途切れてないからごまかしようがない。それから、自分たちが早苗とヨーコの手柄を分取ったこと、それからも嫌がらせを続けていたことも自白させた。
これで奇襲は終了。ろこがこっちにやってきた。にっこりとした笑顔──成功したおかげか、とても嬉しそう。
「成功やで。2人の仇取ったで」
「やったね、ろこちゃん」
嬉しさのあまりろことハイタッチをする。視聴者の方も、かなり喜んでいる様子だ。
“バイロンの奴らざまぁ。評判悪かったからな。暴力行為とか”
“ほかのパーティーへの態度も露骨に悪かったし、よくやったじゃん”
“早苗の仇、取れたじゃん。周囲への悪口のシーンもとれたし、これであいつらは終わりだな”
“この後は、迷惑系とかして過ごすのかな?”
“しかもこっちはマイナーな武器であっちはAランクの武器だろ?”
“なおその武器も他のパーティーから力ずくで奪った模様”
コメントから視線を話し、ろこに話しかける。
「今日は、この後どうする?」
「せやな、狩るような厨パも来てへんし──このままダンジョン攻略に入ろか?」
「いいね。いつも奇襲ばかりだとそれしかできないって思われちゃいそうだし」
「という事で視聴者の皆さん、これからダンジョン攻略──応援よろしくな」
そして私たちは、石畳の道を歩いて行った。
この後は──王道のダンジョン散策。最近奇襲ばかりで本当はそこまで強くないんじゃないの? とか言われちゃってるからね。たまには正々堂々と戦って自分たちの実力を見せつけないと。
「これでどれくらいのクリア率でしたっけ?」
「8県目だったな。なんかひどかたな」
お座敷の席でお腹を抑えながら、璃緒に言葉を返す。
俺たちパーティーは、岩手県ダンジョンをクリアしダンジョンの中の休憩所でわんこそばを食べているところだった。
江戸時代あたりをモチーフにした、長屋みたいな休憩所。青い和服の人から小さいお椀にそばを入れてもらい20杯ほど食べてお腹いっぱいになった。
璃緒の言葉通り、47(仮)を8県ほどクリア。
ちなみに、わざわざ現実ですべての都道府県に行く必要はないようだ。
ダンジョンに潜ると、各都道府県をモチーフにしたダンジョンがあるのでそこに行けばいいみたい。
そして、入り口部分で適当に都道府県を選んで各県分のダンジョンをすこしずつ攻略していったのだ。
このダンジョンの出来についついテンションが低くなってしまう。璃緒は、スマホに手を出し何か調べている。
「バビゴン、ひどかったのじゃ」
「わかる」
「後調べたんですが、ここもツッコミどころ満載のダンジョンと有名なところだったようです」
「やはりな」
岩手県シナリオ。「生き埋め」というものだったがお世辞にも褒められたものではなかった。
いきなり真っ暗な場所からスタート。
「いや~~ん。澄人に押し倒されたのじゃ」
「何もしてないよ!」
「あっ、からすみさん。暗いからって服を脱がさないで下さ~~い」
「なんだと? 許さぬのじゃ!!」
「やってないから。璃緒までふざけるのはやめてくれ!」
“【悲報】からすみ、璃緒を押し倒す”
“炎 上 確 定 ”
“通報しろ”
“せめて配信を切ってからやれよなww”
視聴者もノリに乗ってるな。
コメント対応に戸惑っていると女の人の声がして、その人が腕をつかんでスタートとなる。
「私もこのダンジョンに迷い込んでしまいました。一緒に脱出しましょう」
「そうなんですか? わかりました」
「澄人、童というものがありながら!」
「違うから落ち着け」
真っ暗な中、前後左右に何度も移動して、適当に移動していたら制限時間が無くなって真っ暗な画面からいきなり現実世界に戻された。
何が起きたかわからず、璃緒とネフィリムに相談。配信だって強制終了みたいな感じで終わっちゃったし。
すぐにSNSで事情を説明してから入りなおして配信を再開してから真っ暗な場所へ。
何のヒントもなく、上下左右に進んで、制限時間オーバーで現実世界へ。それを数回ほど繰り返して、ようやく脱出。
そして、そこまで苦労してたどり着いたエンディング。
正直、ありきたりなものだった。
明かりが見えて、山の中に出た。俺も璃緒もネフィリムもほっと安心感が出る。しかし、外に出たというのに女の人は俺の腕を掴んだまま何も話さない。
「もう着きましたよ」
そう言ってつかんでいる人に視線を向けるとなんと──。
腕しか存在していなくて、腕は岩でできていた。
そして腕にはこう文字があった。
岩で出来た手→岩手。
11
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜
沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。
数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。
レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。
玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!?
成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに!
故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。
この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。
持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。
主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。
期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。
その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。
仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!?
美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。
この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる