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第57話 岩の手→
しおりを挟む何の策もなく突っ込んでくる「じゅん」と「ともこ」。連係プレーもないなら十分倒せる。自信はある。
「早苗たちの仇しっかりとらせてもらうで」
コクリとうなづいた。私達は──連携はばっちり取れてる。
ものの数秒で、2人を倒した。倒れた2人の武器を遠くへと放り投げた。あとはタンク薬の「じゅん」だけ。彼はタンクとしてはそれなりに優秀だけど、攻撃魔力はEランク並み。どうすることもできない。
降参したのか、そっと両手を上げた。
「っったくよぉ、こんなやつらあいてに負けちまうッとは」
「早苗とヨーコの仇やで。謝罪せぇや──手柄を横取りしたこともな」
「わかったよ……」
「も、申し訳ありませんでした」
「すまなかかった」
じゅんが嫌そうにつぶやいた。配信も途切れてないからごまかしようがない。それから、自分たちが早苗とヨーコの手柄を分取ったこと、それからも嫌がらせを続けていたことも自白させた。
これで奇襲は終了。ろこがこっちにやってきた。にっこりとした笑顔──成功したおかげか、とても嬉しそう。
「成功やで。2人の仇取ったで」
「やったね、ろこちゃん」
嬉しさのあまりろことハイタッチをする。視聴者の方も、かなり喜んでいる様子だ。
“バイロンの奴らざまぁ。評判悪かったからな。暴力行為とか”
“ほかのパーティーへの態度も露骨に悪かったし、よくやったじゃん”
“早苗の仇、取れたじゃん。周囲への悪口のシーンもとれたし、これであいつらは終わりだな”
“この後は、迷惑系とかして過ごすのかな?”
“しかもこっちはマイナーな武器であっちはAランクの武器だろ?”
“なおその武器も他のパーティーから力ずくで奪った模様”
コメントから視線を話し、ろこに話しかける。
「今日は、この後どうする?」
「せやな、狩るような厨パも来てへんし──このままダンジョン攻略に入ろか?」
「いいね。いつも奇襲ばかりだとそれしかできないって思われちゃいそうだし」
「という事で視聴者の皆さん、これからダンジョン攻略──応援よろしくな」
そして私たちは、石畳の道を歩いて行った。
この後は──王道のダンジョン散策。最近奇襲ばかりで本当はそこまで強くないんじゃないの? とか言われちゃってるからね。たまには正々堂々と戦って自分たちの実力を見せつけないと。
「これでどれくらいのクリア率でしたっけ?」
「8県目だったな。なんかひどかたな」
お座敷の席でお腹を抑えながら、璃緒に言葉を返す。
俺たちパーティーは、岩手県ダンジョンをクリアしダンジョンの中の休憩所でわんこそばを食べているところだった。
江戸時代あたりをモチーフにした、長屋みたいな休憩所。青い和服の人から小さいお椀にそばを入れてもらい20杯ほど食べてお腹いっぱいになった。
璃緒の言葉通り、47(仮)を8県ほどクリア。
ちなみに、わざわざ現実ですべての都道府県に行く必要はないようだ。
ダンジョンに潜ると、各都道府県をモチーフにしたダンジョンがあるのでそこに行けばいいみたい。
そして、入り口部分で適当に都道府県を選んで各県分のダンジョンをすこしずつ攻略していったのだ。
このダンジョンの出来についついテンションが低くなってしまう。璃緒は、スマホに手を出し何か調べている。
「バビゴン、ひどかったのじゃ」
「わかる」
「後調べたんですが、ここもツッコミどころ満載のダンジョンと有名なところだったようです」
「やはりな」
岩手県シナリオ。「生き埋め」というものだったがお世辞にも褒められたものではなかった。
いきなり真っ暗な場所からスタート。
「いや~~ん。澄人に押し倒されたのじゃ」
「何もしてないよ!」
「あっ、からすみさん。暗いからって服を脱がさないで下さ~~い」
「なんだと? 許さぬのじゃ!!」
「やってないから。璃緒までふざけるのはやめてくれ!」
“【悲報】からすみ、璃緒を押し倒す”
“炎 上 確 定 ”
“通報しろ”
“せめて配信を切ってからやれよなww”
視聴者もノリに乗ってるな。
コメント対応に戸惑っていると女の人の声がして、その人が腕をつかんでスタートとなる。
「私もこのダンジョンに迷い込んでしまいました。一緒に脱出しましょう」
「そうなんですか? わかりました」
「澄人、童というものがありながら!」
「違うから落ち着け」
真っ暗な中、前後左右に何度も移動して、適当に移動していたら制限時間が無くなって真っ暗な画面からいきなり現実世界に戻された。
何が起きたかわからず、璃緒とネフィリムに相談。配信だって強制終了みたいな感じで終わっちゃったし。
すぐにSNSで事情を説明してから入りなおして配信を再開してから真っ暗な場所へ。
何のヒントもなく、上下左右に進んで、制限時間オーバーで現実世界へ。それを数回ほど繰り返して、ようやく脱出。
そして、そこまで苦労してたどり着いたエンディング。
正直、ありきたりなものだった。
明かりが見えて、山の中に出た。俺も璃緒もネフィリムもほっと安心感が出る。しかし、外に出たというのに女の人は俺の腕を掴んだまま何も話さない。
「もう着きましたよ」
そう言ってつかんでいる人に視線を向けるとなんと──。
腕しか存在していなくて、腕は岩でできていた。
そして腕にはこう文字があった。
岩で出来た手→岩手。
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