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第56話 一方のかなろこ
しおりを挟む「バビゴンっていうのか? 変な名前だな」
聞いたことがない。考え込んでいると、女の子がさらに話しかけてきた。
「もしかして、47(仮)の人ですか?」
「まあ、そうですけど」
女の人の言葉にこっちがびっくりする。この人──何かの役割があるのかな?
「あの洞窟内の女の人と接すると、県ごとにダンジョンが出てくるようになるんです。さらに、身近な所でも怪異が起こるようになると」
「へー、そうなんだ」
マジか──ダンジョンだけでなく身近な所。おまけに、全国にダンジョン? 初めて聞くなこのタイプ。
「一都道府県に一つづつ、目の前に現れるんです。その土地ごとの妖怪。それを倒して、47都道府県全部制覇して、もう一度あの巫女のところに行ってほしいんです。そうすれば、バビゴンのような妖怪は現れなくなります」
「そうなんだ……いつもと勝手が違うダンジョンだな」
「まあ、やってみましょうよ。なかなか面白いかもしれませんよ」
ノリノリな気分の璃緒。まあ、やる以外に道はないか。
「わかったよ。やってみるね」
俺たちは──このゲームに挑むことを決めた。
どんなゲームになるのか、とても楽しみだ。
加奈視点。
新しいダンジョン、47(仮)に招待された私達。目的はもちろん強力なパーティー「厨パ」狩り──。
舞台は奈良。奈良時代あたりの奈良をイメージした和風なエリアへと向かった。五重の塔に、大きなお寺。
なんというか、夜をイメージした古風な場所。簡素な白い服を着ている人とすれ違う。そして、ろこと示し合わせるように物陰に隠れた。
隠れると、ろこが話しかけてきた。
「加奈、そろそろ来るよ──」
「わかった」
コクリとうなづいて、物陰から通りへと視線を向ける。そえそろターゲットにしていたAランクパーティー「バイロン」がここにやってくる時間だ。スマホで彼らの配信を確認。うん、あと数十秒でここに来る感じだ。
事前に下調べはしていた。彼らの戦っていた配信動画を何度も見ていた。
だから弱点もばっちり押さえてある。私達が実力をしっかりと出せれば、十分に勝てる。
そして、その通りバイロンたちはこの道にやってきた。この辺りは敵がいないエリアのせいか、4人なパーティーたちは何の警戒もせず、楽しそうに談笑をしていた。
会話の内容からして、オフレコなのだろうか。
「ったくあの糞事務所よぉ。給料上げてくれって言ったのに全然話聞いてくれねぇ」
「もっとギャラ上げろっつの」
「ほんとに、誰のおかげで事務所が黒字になってるんだっつの」
かなり油断してるわね。というか他のパーティーが配信してたら丸聞こえなんだけどどうするつもりなにかしら?
「最近、他のパーティーもうざいのよね。Aランク様に、馴れ馴れしく話しかけるんじゃないわよ」
「しかもいっちょ前にサインなんかねだってきやがってよぉ! 何様のつもりだよ。どうせ転売するつもりなんだろ?」
これ、まちがって周囲に広まったら終わりよね?
まあ、彼らの評判の悪さを聞いていれば無理もないわ。
カメラの無いところでは低ランクパーティーをいじめていたり、事務所では一般社員に横柄な態度をとることが多かった。
極めつけは、私たちと親しかったパーティーに暴力を振るったこと。
仲が良かった「早苗&ヨーコ」の女の子パーティーが倒しそうだった魔物を最後の一撃だけ横取りして自分の手柄にしようとした。
近くで見ていた私たちも併せて抗議したが、彼らは全く聞き入れなかった。
「うるっせぇ!! 雑魚パーティーは大人しく成果を差し出してりゃあそれでいいんだよ!!」
「そうよ。たかだかDランクの癖に偉そうに口答えしてるんじゃないわよ」
なんと、配信者友達の早苗をぶんなぐったのだ。そして、強引に事務の圧力を使って手柄を独り占めしたうえにこの事実は隠蔽したという。
他にも、暴力行為をダンジョンの外でも平気で行っている。今回は、敵討ちとの意味合いもある。
まあ、本当にこっちは配信中なんだけど。まあ頃合いね、ろこに視線を送って──ろこがコクリとうなづいた瞬間
「今よ」
「行くで」
そして、私たちは「バイロン」を背後から奇襲した。
まず狙うのは三つ編みの少女。「弓使いの薫」彼女は強大な魔力を持ち精度の高い矢を放ってくる一方接近戦は苦手でいつもは前衛にまかせっきり。
だからこうして陣形が整っていないうちに行けば──。
「きゃぁぁぁぁっ!」
ロコが剣をひと振りすると、雷撃が薫へと突っ込んでいく。背後から奇襲を受けた薫はまともに攻撃を受けて壁に激突。
まずは一人。他のメンバーはようやく私たちに気づく。
「かなろこか」
「ふざけんなこいつら!」
「そうや、あんたらの首。とったるで!!」
「させねぇよ!」
応戦してきたのは長い槍を持った筋肉質の男「かずひろ」。肉弾戦は強いが距離をとればこいつは何もできない。陣形が崩れている中で援護もない。だから遠距離から打ち抜く。
マスケット銃から、水鉄砲を発射。数発かずひろに被弾させ、そのまま後方の壁に激突。
あと2人、奇襲を食らって完全に動揺しているのがわかる。
「すぐに片付けるで!!」
「そうだねろこちゃん」
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