99 / 136
「鳴」を取る一人
39.
しおりを挟む「理由って、何なのよ」
と杝寧唯。
「そんなことより、とにかく数登単語さんがここに居るって、連絡しますから。イアンに……」
寧唯の手は押さえつけられる。
微動も出来ない。
下へ落ちるスマホ。
「離して!」
「地下入口は、開きません。今も、これからも」
と数登珊牙。
寧唯。
「開くわよちゃんと!」
「地下入口を閉鎖しに来たんです。杝さんを入れないために」
寧唯は数登を凝視。
続ける数登。
「あなたがしたいのは、参拝などではない」
「お願い離して」
「いいえ」
「そんなにあたしを追い詰めるの?」
寧唯は苦笑した。
「あなたを疑ったのは、六月の場で」
寧唯は再び、もがいた。
腕を。
手を。
「疑っていたって。どういうこと」
短い抵抗。
やっと振りほどく。
数登。
「開かないんです。とにかく」
数登と寧唯が最初に出会ったのは、六月の場。
今は七月。
六月はレストランだった。
寧唯の先輩である、八重嶌郁伽がバイトをしている「マリリンアンドウィル」。
そこで会ったのが始まり。
寧唯はかぶりを振った。
だが微々とも動けない。
その眼の端。
数登が、地面へ落ちたスマホを拾う。
「六月のレストランで拝見した、大量のパンフレット。最初の一点目です」
「何なんですか。それが?」
「あの量です。集めるためには、どうしたらいいか。単純に考えて、寧唯さんに限らず一人で一度に、大量のパンフレットを行き帰りと、荷物として持参しながら移動するのは、まず難しいでしょう。ではどうするか」
「一点。何人かで同時に参拝を重ねながら複数部、持参し移動するという方法。更に一点。あるいは長期間、たった一人で。参拝を重ねながら、回数でパンフレットを手に入れる。そんな方法です。いずれにしても回数が必要ですがね」
六月のレストランにて、寧唯は慈満寺のパンフレットを大量に持参していた。
目立つくらい。
そのことについて。
数登は続ける。
「一度で大量に、そして短い期間でパンフレットを集めるのには無理がある。六月のあの日、少なくとも僕には、大量のパンフレットが不自然に見えました。ただ、あなたが慈満寺へ何回も参拝するという点に、きちんとした理由があったとすれば。パンフレットが大量であったとしても不自然では、なくなります」
「それで?」
「ええ」
「その不自然で何かっていうので、満足なの? 微妙なんだけれど」
鳴る梵鐘。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説

聖女の如く、永遠に囚われて
white love it
ミステリー
旧貴族、秦野家の令嬢だった幸子は、すでに百歳という年齢だったが、その外見は若き日に絶世の美女と謳われた頃と、少しも変わっていなかった。
彼女はその不老の美しさから、地元の人間達から今も魔女として恐れられながら、同時に敬われてもいた。
ある日、彼女の世話をする少年、遠山和人のもとに、同級生の島津良子が来る。
良子の実家で、不可解な事件が起こり、その真相を幸子に探ってほしいとのことだった。
実は幸子はその不老の美しさのみならず、もう一つの点で地元の人々から恐れられ、敬われていた。
━━彼女はまぎれもなく、名探偵だった。
登場人物
遠山和人…中学三年生。ミステリー小説が好き。
遠山ゆき…中学一年生。和人の妹。
島津良子…中学三年生。和人の同級生。痩せぎみの美少女。
工藤健… 中学三年生。和人の友人にして、作家志望。
伊藤一正…フリーのプログラマー。ある事件の犯人と疑われている。
島津守… 良子の父親。
島津佐奈…良子の母親。
島津孝之…良子の祖父。守の父親。
島津香菜…良子の祖母。守の母親。
進藤凛… 家を改装した喫茶店の女店主。
桂恵… 整形外科医。伊藤一正の同級生。
秦野幸子…絶世の美女にして名探偵。百歳だが、ほとんど老化しておらず、今も若い頃の美しさを保っている。


無限の迷路
葉羽
ミステリー
豪華なパーティーが開催された大邸宅で、一人の招待客が密室の中で死亡して発見される。部屋は内側から完全に施錠されており、窓も塞がれている。調査を進める中、次々と現れる証拠品や証言が事件をますます複雑にしていく。
パラダイス・ロスト
真波馨
ミステリー
架空都市K県でスーツケースに詰められた男の遺体が発見される。殺された男は、県警公安課のエスだった――K県警公安第三課に所属する公安警察官・新宮時也を主人公とした警察小説の第一作目。
※旧作『パラダイス・ロスト』を加筆修正した作品です。大幅な内容の変更はなく、一部設定が変更されています。旧作版は〈小説家になろう〉〈カクヨム〉にのみ掲載しています。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ミステリH
hamiru
ミステリー
ハミルは一通のLOVE LETTERを拾った
アパートのドア前のジベタ
"好きです"
礼を言わねば
恋の犯人探しが始まる
*重複投稿
小説家になろう・カクヨム・NOVEL DAYS
Instagram・TikTok・Youtube
・ブログ
Ameba・note・はてな・goo・Jetapck・livedoor
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる