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断章Ⅱ〜最終兵器にアイの花を〜
Side-レイラ: 最期の、言葉
しおりを挟む「だから———負けられないのよ!
例え虚無だろうと空虚だろうと、もう私には戦う以外残されてないの!
だから———お前を殺す…………っ!」
大きく後退しながらも、その先の刃の折れた鎌の振りを、何とか大剣でこなしてみせる。
「私にとっては、お前だって復讐の対象だった……!」
「勝手に調子こいた罪を償えってことっすか、あっしはそう言うつもり一切なかったんすけ———」
「そっちにはなくてもこっちにはあるのよ!
……ああ、2人目として学校にやってきたアイツはぁ……」
2人目———って、あっしがしくじったから学校に来た、あっしと同じ顔をした別人……ってことっすか……!
「アイツじゃダメなの、アイツじゃあ……到底お前にはなれなかった!
私が友達になりたかったのは、今のお前で、私が妬ましく思っていたのは、今のお前で、私にとっての本物は———今のお前だった!
……だから殺すの、この手で、許せなくて———愛おしいから!」
———そうだ。
あっしだって、コイツなんぞと友達だった時はあった。
最後はうやむやに終わってしまったけれど、それでもあっしは、その日々を無駄だとは思ってない。
あの日々が、あっしを狂わせた原因で。
あの日々が、あっしを形作ったのだから。
だから———あっしはきっと、お前に感謝してもしきれない。
……だからこの手で殺したくはないし。
愛おしいからこそ、あっしは———救ってあげたかった。
「……終わらせよう」
「なっ?!」
もはや大鎌ではなく、ただの鉄棒としか言えぬその棒を、振り下ろされるがままに受け入れ。あまりにも軽やかに、あっしの足は跳び上がり。
そして、ほんの一瞬にして。
「———ぁ……」
そう、ほんの一瞬にして、勝負は決着した。
ソウルレス———その頭の中にある、コアを砕いたのみ。
……ただ、それだけでも……彼女の身体は耐えられない。
「ぁあ、あ……ぁ……ぁぁああああああっ……!!」
こんな結末、望んでいなかった。望むことなんて、絶対に嫌で———実現なんて、絶対にさせたくなかった。
そんなの、あまりにもかわいそうで。どこまでも、救いがなくって。
あっしだって……避けられるのなら、絶対に避けたかった結末。
こんな末路は———あまりにも。
「……コレ、しか……なかったんすかね。
こうしなきゃいけない……理由が、どこに———!」
指の方から、緩やかに。
秒針が時を刻むように、確実に朽ちていく彼女の身体を、見つめながら。
「いや……いや……死ぬのは、まだ……まだ……!」
「…………ぅ……」
謝ろうか、とも思った。……でもきっと、謝ったって謝りきれない。
救うことが、できなかった。ここで終わらせるしかなかった。
……何より、あっしは……そこに倒れているカーオを、みすみす殺させるわけにはいかなかったから。
———だから、余計に……申し訳ない。
「まだ……褒めて……もらって、ない…………のに……!」
「———」
「いや……こわい……こわい、よぉ……!」
「もっと、もっと前から……ずっと前から、こうなる事は決まってたんすかね。
……神なんて……いないんだ」
ソレが、彼女にとってどれだけの恐怖を与えているのか。
それは計り知れないものであると同時に、あっしには絶対に分からないものだ。……意識のあるまま、自分の身体のみがボロボロと崩れていくのだから。
「こわい……さむいよ、助けて……助けて……っ!」
「もう……もう、いいっすよ。
目を閉じて、休んで……安らかに」
先程まで震えていた彼女の身体だったが、あっしがその手を触れた瞬間、震えは一瞬のうちに止まってしまった。
「今だけは———あっしが、そばにいてやりますから」
「……ぅ……はっ……ぅう……ぅぅぅ…………っ!」
ただ、彼女は涙を流していた。
刻一刻と迫り、これから訪れる死に対する怯えだろうか、恐怖だろうか。
それとも、あっしがそばにいることの———暖かさにだろうか。
……分からないけれど、今だけは……コイツのそばにいてあげること、それだけで。
「———ぁ……あそ……んで、よ……もっと、もっと……いい子って、言って……おね……がい……」
「いい子……だと、思うっすよ。……こんなに、一途なんだから、そりゃあ」
「———え……へへ、あり……がと、パパ……」
最後に残ったその頭を、必死に腕の中で抱えながら。
ラースだったものは、そこで———跡形も、無くなった。
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