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断章Ⅱ〜最終兵器にアイの花を〜
Side-レイラ: 感情
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「だって……だって、酷いじゃん……そんなの、そんなの……あまりにも、だって……私と、同じ……で…………!!」
ああ———、話し方が、変わる。
と言うか、戻るんだ。昔の私に。
見つめるべき自分すら見つからず、自分を支える芯すら存在しない———捨てられた直後の、私に。
「ねえ、何で?! 何で何で何でよ、どうしてよ!……いつもみたいに……いつもみたいに、何食わぬスカした顔して、また立って見せてよ、ねえ!」
………………え?
「私は嫌いだった、お前のことが! いつもいつも何食わぬ顔して、必死に私が頑張って取った1位の下に食らいついてっ!
あれだけ……あれだけ頑張って……褒められるように頑張ったって言うのに、なのにお前は……いつも余裕そうにっ!!!!」
———ああ、なるほど。
本当にいつの間にか……怨み買ってたんだ、私。
あの時。小学校3年。学校のテストでいつも1位を取り続けていたのは、ラースだった。
いつもいつも、あの子ばかり褒められて、その度に私は、家で貶されて。
……でも、そっちだって———。
「いつもいつもそう!……パパだって、1位を取ったのに褒めてくれなかった! いつもいつも『やめておけ』って、私を否定するように言ってぇっ!」
「……もう……もう、いるわけ……ないじゃん……!」
「———は…………?」
一言。私が発したその一言だけで、ラースも黙り込んでしまう。
……しかし、よく考えれば……よく考えなくとも分かることだった。
何せ、オリュンポス地上は、機神による攻撃で、そのほとんどが焼き払われた。
……いるわけ、ないんだよ。
「もう、いるわけ……ないんだよ……ラースの、お父さん……なんて……!」
「…………っっっっ!!」
そうだよ。あっちだって、本当は分かっているはずなんだ。
「もう、ラースを縛るものなんて……何も、ないんだよ……っ!」
「———、」
「だから……もう、やめよう……こんなこと。
結局あっしらは……こんな狂った国に踊らされた、ただそれだけなんすよ。
機神の生んだ、この風潮に」
「———でも……だったら………………もう、私には何も……ないのよ……!
何も! 認めてくれる人も、愛してくれる人もいない、戦う理由なんて、何もないの!
それは嫌なの、そんな……空虚な存在なんて…………!!!!
だから……だからっ!……もう私には、戦うしか残されてないの、任務を達成して、1人で達成感に浸るしかないのよ!
だから死んで、お願いだから死んでよ、偽者!……みんなみんな、死ねばいいのにっ!」
「…………どうして、こうなってしまうんすかねぇ……
もっと早くだったら、分かり合える道だって……あったかもしれないっすのに」
もはや、胸に突き刺さったままの鎌の破片など、今のあっしには関係ない。
その事実を認めないと言うのなら。それでもあっしの前に、敵として立ちはだかると言うのなら。
「分かったっす。……もう、手加減も、躊躇もしないっすよ。
———とことん付き合うっす。……お前を、殺すまで」
「———ふふ。……そう言ってくれると、思ってた……!」
大剣を構える。———とは言え、もはやコレは介錯の一撃だ。
あっちが私を殺すことなんて、そんなこと。
「———っ!」
「にぃ……っ!」
一歩、互いに踏み出し。
最大の激突は、再び始まった。
ああ———、話し方が、変わる。
と言うか、戻るんだ。昔の私に。
見つめるべき自分すら見つからず、自分を支える芯すら存在しない———捨てられた直後の、私に。
「ねえ、何で?! 何で何で何でよ、どうしてよ!……いつもみたいに……いつもみたいに、何食わぬスカした顔して、また立って見せてよ、ねえ!」
………………え?
「私は嫌いだった、お前のことが! いつもいつも何食わぬ顔して、必死に私が頑張って取った1位の下に食らいついてっ!
あれだけ……あれだけ頑張って……褒められるように頑張ったって言うのに、なのにお前は……いつも余裕そうにっ!!!!」
———ああ、なるほど。
本当にいつの間にか……怨み買ってたんだ、私。
あの時。小学校3年。学校のテストでいつも1位を取り続けていたのは、ラースだった。
いつもいつも、あの子ばかり褒められて、その度に私は、家で貶されて。
……でも、そっちだって———。
「いつもいつもそう!……パパだって、1位を取ったのに褒めてくれなかった! いつもいつも『やめておけ』って、私を否定するように言ってぇっ!」
「……もう……もう、いるわけ……ないじゃん……!」
「———は…………?」
一言。私が発したその一言だけで、ラースも黙り込んでしまう。
……しかし、よく考えれば……よく考えなくとも分かることだった。
何せ、オリュンポス地上は、機神による攻撃で、そのほとんどが焼き払われた。
……いるわけ、ないんだよ。
「もう、いるわけ……ないんだよ……ラースの、お父さん……なんて……!」
「…………っっっっ!!」
そうだよ。あっちだって、本当は分かっているはずなんだ。
「もう、ラースを縛るものなんて……何も、ないんだよ……っ!」
「———、」
「だから……もう、やめよう……こんなこと。
結局あっしらは……こんな狂った国に踊らされた、ただそれだけなんすよ。
機神の生んだ、この風潮に」
「———でも……だったら………………もう、私には何も……ないのよ……!
何も! 認めてくれる人も、愛してくれる人もいない、戦う理由なんて、何もないの!
それは嫌なの、そんな……空虚な存在なんて…………!!!!
だから……だからっ!……もう私には、戦うしか残されてないの、任務を達成して、1人で達成感に浸るしかないのよ!
だから死んで、お願いだから死んでよ、偽者!……みんなみんな、死ねばいいのにっ!」
「…………どうして、こうなってしまうんすかねぇ……
もっと早くだったら、分かり合える道だって……あったかもしれないっすのに」
もはや、胸に突き刺さったままの鎌の破片など、今のあっしには関係ない。
その事実を認めないと言うのなら。それでもあっしの前に、敵として立ちはだかると言うのなら。
「分かったっす。……もう、手加減も、躊躇もしないっすよ。
———とことん付き合うっす。……お前を、殺すまで」
「———ふふ。……そう言ってくれると、思ってた……!」
大剣を構える。———とは言え、もはやコレは介錯の一撃だ。
あっちが私を殺すことなんて、そんなこと。
「———っ!」
「にぃ……っ!」
一歩、互いに踏み出し。
最大の激突は、再び始まった。
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