Wit:1/もしも願いが叶うなら〜No pain, no live〜

月影弧夜見(つきかげこよみ)

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断章Ⅱ〜最終兵器にアイの花を〜

Side-レイラ: 感情

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「だって……だって、酷いじゃん……そんなの、そんなの……あまりにも、だって……私と、同じ……で…………!!」


 ああ———、話し方が、変わる。
 と言うか、戻るんだ。昔の私に。

 見つめるべき自分すら見つからず、自分を支える芯すら存在しない———捨てられた直後の、私に。


「ねえ、何で?! 何で何で何でよ、どうしてよ!……いつもみたいに……いつもみたいに、何食わぬスカした顔して、また立って見せてよ、ねえ!」

 ………………え?


「私は嫌いだった、お前のことが! いつもいつも何食わぬ顔して、必死に私が頑張って取った1位の下に食らいついてっ!

 あれだけ……あれだけ頑張って……褒められるように頑張ったって言うのに、なのにお前は……いつも余裕そうにっ!!!!」




 ———ああ、なるほど。
 本当にいつの間にか……怨み買ってたんだ、私。


 あの時。小学校3年。学校のテストでいつも1位を取り続けていたのは、ラースだった。

 いつもいつも、あの子ばかり褒められて、その度に私は、家で貶されて。

 ……でも、そっちだって———。


「いつもいつもそう!……パパだって、1位を取ったのに褒めてくれなかった! いつもいつも『やめておけ』って、私を否定するように言ってぇっ!」





「……もう……もう、いるわけ……ないじゃん……!」


「———は…………?」

 

 一言。私が発したその一言だけで、ラースも黙り込んでしまう。

 ……しかし、よく考えれば……よく考えなくとも分かることだった。
 何せ、オリュンポス地上は、機神による攻撃で、そのほとんどが焼き払われた。

 ……いるわけ、ないんだよ。


「もう、いるわけ……ないんだよ……ラースの、お父さん……なんて……!」

「…………っっっっ!!」


 そうだよ。あっちだって、本当は分かっているはずなんだ。

「もう、ラースを縛るものなんて……何も、ないんだよ……っ!」

「———、」


「だから……もう、やめよう……こんなこと。

 結局らは……こんな狂った国に踊らされた、ただそれだけなんすよ。

 機神の生んだ、この風潮に」










「———でも……だったら………………もう、私には何も……ないのよ……!

 何も! 認めてくれる人も、愛してくれる人もいない、戦う理由なんて、何もないの!

 それは嫌なの、そんな……空虚な存在なんて…………!!!!

 だから……だからっ!……もう私には、戦うしか残されてないの、任務を達成して、1人で達成感に浸るしかないのよ!

 だから死んで、お願いだから死んでよ、偽者!……みんなみんな、死ねばいいのにっ!」











「…………どうして、こうなってしまうんすかねぇ……

 もっと早くだったら、分かり合える道だって……あったかもしれないっすのに」

 もはや、胸に突き刺さったままの鎌の破片など、今のあっしには関係ない。

 その事実を認めないと言うのなら。それでもあっしの前に、敵として立ちはだかると言うのなら。


「分かったっす。……もう、手加減も、躊躇もしないっすよ。


 ———とことん付き合うっす。……お前を、殺すまで」
 

「———ふふ。……そう言ってくれると、思ってた……!」


 大剣を構える。———とは言え、もはやコレは介錯の一撃だ。

 あっちが私を殺すことなんて、そんなこと。



「———っ!」

「にぃ……っ!」

 一歩、互いに踏み出し。

 最大の激突は、再び始まった。
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