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断章Ⅰ〜アローサル:ラークシャサ・ラージャー〜
勝利…?
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「さて、起きろアレン。戦いの続きだ。まだ俺たちの魔力障壁も残っているだろう……?」
「……あ、はっ、ヤツは?!」
イデアの呼びかけに呼応し、眠ったままだっま白は突然飛び起きる。
「あの男なら……」
「なるほど、イデアさんが倒したってのね!!」
途端に起き上がったサナにより言葉は遮られるが。
……まあ、それもそれでいいか、と。
「ああ、俺と、そして、センの勝利だ」
「セン……? そう言えばあいつ、結局待機してたままだったの……」
「うるさい、早く決着をつけるぞ、アレン!」
「わわっ、ちょっちょっ! 兄さん、あまりにも強引過ぎるんじゃ……」
1時間後、改めて最後の戦いが行われることになり。
「……という事で、残った選手は全て棄権! この2人を除いては!! 今ここに、世界を救った救世主と、その兄の頂上決戦が始まろうとしています!」
既に効力を失い、魔力障壁の途切れた鎧からも、皆の歓声が聞こえてくる。
そう、棄権だ。あのヴォレイとか言う化け物を見た瞬間、皆は怯え逃げ出してしまったのであった。
故に残ったのは、現場にて気絶していた白とイデアたちのみ。
地味にサナも魔力障壁は割れていなかったが、サナは最終決戦———決勝戦をその兄弟たちに譲ったのである。
「歓声うるさっ……ホントにみんな、こんなアホみたいな行事が好きなのね……
ところでセン君は、誰を応援するの……?」
「僕ですか、僕は……
……やっぱり、イデアさんを応援します……!」
「アイ、イデアが……勝つ、と……思う、イデア……強そう」
「何言ってるでヤンスか、白さんは世界を救った救世主なんでヤンスよ」
「何言ってるんだ、イデアさんが一番強いに決まってるじゃんか!」
観客席———と題された、かつての王都外壁が残っていた場所を『フィールド』とし、その舞台の上で決着は行われることになった。
10歩でも後ろに下がろうものなら、そのままフィールドを出てしまい失格となる。
だからこそコレは、刀も何もかもを用いらないただの白兵戦。
「……さて、やるかアレン。俺たちの、決着を」
兄弟同士の対決は、まさかの形で再演されることとなった。
「この場で、こんな形で行う事になるなんてな、……少し蒸し暑いけど」
「今日こそは」
「勝ってみせる……!」
響いたのは、両者の拳と肌がぶつかり合う激しい打撃音。
あるときは重く、あるときはペチンと軽く———情けなくも響いた音は、日が暮れるまで止むことはなかった。
『<魔力障壁、破損。白選手、脱落です>』
「イデア選手、優勝です!! 第1回魔武道大会優勝者は、イデア選手に決まりました!!!!」
「勝った……ようやく、勝ってみせたぞーーーーっ!!!!」
まさに赤子のようにはしゃぐイデア。よほど、その勝利はイデアにとってかけがえのないものだったのだろうか。
「兄さん……強かった……まさか、負けるなんて、な……へへ」
「……って事があったんだ」
「マスターが負けてしまわれるとは!……ああ、私もマスターの勇姿を一目見たかったでございます……」
魔武道大会が終わり1週間。
コックの修復に明け暮れていた僕は、いつも通り、日々のちょっとした事を話しながら、今まで通り過ごしていた。
だが、変わった事が2つほど。
「やっぱり金があるっていいでヤンスね~」
「……ああ、ちゃんとした食糧が買ってこれることが、どれだけ素晴らしい事かよく分かったよ」
「アイの、とってきた、やつ……不満?」
「あ、いやいや、それはそれで嬉しい……けど、野菜が食べたいな~、なんて」
変わった事は、金が有り余るようになった事と、くいなの僕に対する態度が少し、改善された事。
……いや、変わった事3つ目。
今でも、たまに額に手を当てた時によく気になるのだが。
「何でここ、ボコってしてるんだろうか……やっぱり、これがツノ……なのか……?」
結局あの後は、あのほとばしる力を使う事はできなかった。
どれだけ気合いを入れたって、そう簡単に使えるものじゃないってのは分かったけど、この額のイボみたいなツノはやっぱりどうしても気になるな~、と。
———後日。黒の家にて。
「んで、白。この荒れ具合は、お前がやったのか?」
白とサナは、たった2人で———黒の家を好き勝手漁りまくった精算を行なっている頃だった。
「いやでも……黒がこの家にいないからそれが悪いんじゃないのか~、と」
「うるさい、俺もイデアと共にあの化け物と戦ってたんだ……それよりも勝手に人の家を物色した後、後始末もせずに帰りやがって……!
せめて隠すという意思くらい見せたらどうなんだ……!」
「すいません、すいません! ほら白も、謝って!!」
「すんませ~ん」
「誠意が足りんぞ、白!!」
こうして、またもや最大の障害は防がれた。
……だが、その障害が、その敵の背後にいる者が、本当の敵だと言うことを、白たちはまだ知る由もなかった……
「さて、起きろアレン。戦いの続きだ。まだ俺たちの魔力障壁も残っているだろう……?」
「……あ、はっ、ヤツは?!」
イデアの呼びかけに呼応し、眠ったままだっま白は突然飛び起きる。
「あの男なら……」
「なるほど、イデアさんが倒したってのね!!」
途端に起き上がったサナにより言葉は遮られるが。
……まあ、それもそれでいいか、と。
「ああ、俺と、そして、センの勝利だ」
「セン……? そう言えばあいつ、結局待機してたままだったの……」
「うるさい、早く決着をつけるぞ、アレン!」
「わわっ、ちょっちょっ! 兄さん、あまりにも強引過ぎるんじゃ……」
1時間後、改めて最後の戦いが行われることになり。
「……という事で、残った選手は全て棄権! この2人を除いては!! 今ここに、世界を救った救世主と、その兄の頂上決戦が始まろうとしています!」
既に効力を失い、魔力障壁の途切れた鎧からも、皆の歓声が聞こえてくる。
そう、棄権だ。あのヴォレイとか言う化け物を見た瞬間、皆は怯え逃げ出してしまったのであった。
故に残ったのは、現場にて気絶していた白とイデアたちのみ。
地味にサナも魔力障壁は割れていなかったが、サナは最終決戦———決勝戦をその兄弟たちに譲ったのである。
「歓声うるさっ……ホントにみんな、こんなアホみたいな行事が好きなのね……
ところでセン君は、誰を応援するの……?」
「僕ですか、僕は……
……やっぱり、イデアさんを応援します……!」
「アイ、イデアが……勝つ、と……思う、イデア……強そう」
「何言ってるでヤンスか、白さんは世界を救った救世主なんでヤンスよ」
「何言ってるんだ、イデアさんが一番強いに決まってるじゃんか!」
観客席———と題された、かつての王都外壁が残っていた場所を『フィールド』とし、その舞台の上で決着は行われることになった。
10歩でも後ろに下がろうものなら、そのままフィールドを出てしまい失格となる。
だからこそコレは、刀も何もかもを用いらないただの白兵戦。
「……さて、やるかアレン。俺たちの、決着を」
兄弟同士の対決は、まさかの形で再演されることとなった。
「この場で、こんな形で行う事になるなんてな、……少し蒸し暑いけど」
「今日こそは」
「勝ってみせる……!」
響いたのは、両者の拳と肌がぶつかり合う激しい打撃音。
あるときは重く、あるときはペチンと軽く———情けなくも響いた音は、日が暮れるまで止むことはなかった。
『<魔力障壁、破損。白選手、脱落です>』
「イデア選手、優勝です!! 第1回魔武道大会優勝者は、イデア選手に決まりました!!!!」
「勝った……ようやく、勝ってみせたぞーーーーっ!!!!」
まさに赤子のようにはしゃぐイデア。よほど、その勝利はイデアにとってかけがえのないものだったのだろうか。
「兄さん……強かった……まさか、負けるなんて、な……へへ」
「……って事があったんだ」
「マスターが負けてしまわれるとは!……ああ、私もマスターの勇姿を一目見たかったでございます……」
魔武道大会が終わり1週間。
コックの修復に明け暮れていた僕は、いつも通り、日々のちょっとした事を話しながら、今まで通り過ごしていた。
だが、変わった事が2つほど。
「やっぱり金があるっていいでヤンスね~」
「……ああ、ちゃんとした食糧が買ってこれることが、どれだけ素晴らしい事かよく分かったよ」
「アイの、とってきた、やつ……不満?」
「あ、いやいや、それはそれで嬉しい……けど、野菜が食べたいな~、なんて」
変わった事は、金が有り余るようになった事と、くいなの僕に対する態度が少し、改善された事。
……いや、変わった事3つ目。
今でも、たまに額に手を当てた時によく気になるのだが。
「何でここ、ボコってしてるんだろうか……やっぱり、これがツノ……なのか……?」
結局あの後は、あのほとばしる力を使う事はできなかった。
どれだけ気合いを入れたって、そう簡単に使えるものじゃないってのは分かったけど、この額のイボみたいなツノはやっぱりどうしても気になるな~、と。
———後日。黒の家にて。
「んで、白。この荒れ具合は、お前がやったのか?」
白とサナは、たった2人で———黒の家を好き勝手漁りまくった精算を行なっている頃だった。
「いやでも……黒がこの家にいないからそれが悪いんじゃないのか~、と」
「うるさい、俺もイデアと共にあの化け物と戦ってたんだ……それよりも勝手に人の家を物色した後、後始末もせずに帰りやがって……!
せめて隠すという意思くらい見せたらどうなんだ……!」
「すいません、すいません! ほら白も、謝って!!」
「すんませ~ん」
「誠意が足りんぞ、白!!」
こうして、またもや最大の障害は防がれた。
……だが、その障害が、その敵の背後にいる者が、本当の敵だと言うことを、白たちはまだ知る由もなかった……
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