Wit:1/もしも願いが叶うなら〜No pain, no live〜

月影弧夜見(つきかげこよみ)

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激震!勇魔最終戦争…!

最終決戦Ⅳ〜救世主〜

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 ———漢の背中を見せつけ。
 俺の前に立ちはだかるは、イデアだった。


「———兄……さん?!」
「……そら、お前の刀だ」

 光の最中、兄さんから雑に投げ渡されたのは、紛れもなく先程投げ捨てた俺の刀、神威だった。

 ……だが、兄さんの持っていた刀は1つ、先程俺に投げ渡した神威のみ。

「兄さんの刀は……兄さんが持ってた神威のレプリカはどこ行ったんだよ、兄さんはどうやって戦うっていうんだよ!」





 次の瞬間、右から神威の柄に手が添えられる。

「……兄……さん……?」

「やるぞ、アレン」

「いやだから、急に何を……」




「いいから、一緒に戦ってやる、と言ってるんだ、さっさと貴様も刀を構えろ! 手遅れになっても知らんぞ……!」




「…………夢みたいだ」

 もはやまともに動きやしない左腕で柄を持ち、兄さんの横に並ぶ。

「しかし何を、一体……何を血迷ったんだ、兄さん……?」


「今の貴様では、片手で刀は扱えないだろう?……ならば……2、どうなんだ?











 本気で決めるぞ……

 ———ようやく、その名で呼んでくれたな……!

「………………ああ、俺たちで終わらせるぞ———……ッ!」




「アア…………アアアアウウウウウウウウウウウアアアアアアアアアアアッ!!!!」

 そびえ立つ深淵の呪い。
 だが、その前に立ちはだかるのが。


 ……世界の、救世主セイバーだった。




「合わせるぞ、白!」
「いくぞ……」

 2人同時に駆け出す。刀を構え、2人で目の前の敵を見据える。
 やることは簡単。
 眼前の敵を、両断するだけ。

「踏ん張れ、白!!」
「突き出すぞ! イデア、準備!!」

 俺は右足を。兄さんは左足を、前に押し出し踏ん張る。

 2人の間の刀を中心に、軸にして前に駆け出す。

 互いに歪みあっていたそれらは、まるで2人で1人の人間のように、息ピッタリのコンビネーションを発揮していた。




 ……いいや、俺たちは2人で1人、だったのだ。

「白! 攻撃が来る、左にかわすぞ……!」
「次は右に行って軌道修正ってんだろ、了解!」

 迫り来る無数の黒いシミ。
 本来ならば、1人ならば、真っ先に激突して終わりだったろう。


 ……しかし今は1人じゃない。
 共に戦う、に戦ってくれる、兄さんがいるのだから……!


「2秒後、接触だ……! 力の入れ方とタイミングを合わせろよ!」
「イデアこそ、ここでしくじるのはやめてくれっ……よ!」


 横並びで走る俺たち2人。
 その間に構える神威を中心にして、見据えた形を貫く……!


「合わせろ、斬りあげるぞ!」

 光り輝く神刀は、その呪いの渦の中でも輝きは色褪せず。



「「だああああああっ!!!!」」


「アアア……アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
「白……!……もっと……本気……出せぇっ!!」









 
 もう、何度諦めかけた事だろうか。
 結局、兄さんとの一突きも、無駄に終わった。
 ここまでやってもダメなら、もう何したって無駄だろう。
 だから、俺はここで……諦め……





 諦め……きれなかった。
 まだ、まだ俺の望む幸せな人生は掴めていないだろう……?


 せめて、せめて今まで斬った人の分も、幸せに生きる事が俺の贖罪だと、少なくとも俺の中だけではそう思い込んだはずだろう……?



 ……だから、負けられない。
 誰かに「負けるな」と背中を押されている気持ちでもある。

 それでも、それでも俺は、俺の望む幸せを、幸福を掴んでみせるはずだったろう……?

 それが、俺の願いで。
 ほとんど何も……取りこぼさずにここまで来たのだから、ここに来て全てを台無しにするわけには……いかないんだ……!!


「は……っ、ぐう……これでもダメだってのか……クソッタレ……!」

 両者の刀を持つ手が震え始める。
 それでも、未だ神核は抉れず。


「…………俺、は、諦め、るかもしれない……正直言って、勝てや……しないと思う。…………イデア、は……諦める、か……?」


「諦める、だと……? 俺たちは……俺は、救世主の一族……セイバーだ……!

 だから、こそ……その名にかけても……ここで負ける、わけには……諦めるわけ、には……いかんのだ……!!」







「———は、そう……こなくっちゃ……っ!」

 もはや掠れた声で。兄さんは自身の信念を告げる。
 それが、起爆材となった。

 魂の導火線は今、たった今———点火する!!!!




「……そうだな……俺たちの帰りを待つ人たちの、そして誰もが笑える世界を作るためにも、俺たちはこんなところで挫けちゃいられない……んだ……!」

 迷いは、もはやなかった。
 既にそんな感情、大穴の深淵に捨て去ったはずじゃないか。

 涙も、血も、身体も、心も、全てを刀に込める。
 もう一度、2人で踏み出す。



 神威の発する猛烈な光の中で。
 2人の勇者は、これでもかと進み続ける。
 生きることの叶わなかった、カミ呪いを踏みつけ。

 傲岸にも、自らの未来を主張するために。不遜にも、自らの願いを叶えるために。
 くだらない運命をも蹴り飛ばし。絶望などもぶった斬り。

 絶対に負けないために、勇者セイバーらは戦う……!




「…………イデア…………勝つぞ、この戦い……!!」
「言われなくとも、そのつもりだ……!!」

 さらに進む。
 その肉塊呪いに、さらに深くに刀を突き刺し、抉る。



「「が……!
  救世主セイバー……だぁっ!!」」






「ギ……ッ……ア、アアアアアアアアアア!!」

「貴様の———敗因を教えてやろう……!

 ……それは……!」




「「俺たち人間の前に、立ちはだかった事、

 ———ただ、それだけだあっ!!!!」」










 2人によって斬り上げられたその斬撃は、空を裂き、暗雲をも裂き、空に見事な星模様を描き出す。



 夜に瞬く光の虹。
 夜の虹、なんてものは存在しえないものだが。

 その幻想的で、神秘的で、絶対的で荘厳な光景は、まさにその幻想を顕現させたかのようなものであった。









 辺りが白に包まれる。
 右腕は……完全にやられた。
 ……何本骨折だ……治るかなんて分かりゃしない。

 それでも、その積雪の中で。
 その勇者は、ただ2人、立ち尽くしていた。


 それは初めて俺が、「師匠」と出会った時とは違い。
 全てを、守り通した後の、呆然。



 力の入らない左腕を握りしめ、その拳を、星々と月明かりの照らす天に掲げ、叫ぶ。



「決着……ッ!!」
の、勝ちだ……!」




 白の虹が夜空を駆ける。
 どこまでも綺麗で、どこまでも広がってゆくその壁は、もはや氷河そのものだった。
 世界を覆う災厄の呪いは、たった今、世界を包む幸せの光へと変わってみせた。


「勝った、のか……! 救世主が……!」
「やった……守り通したわよ……みんなを……! 救ってみせたわよ……この世界を!」






『みんなが傷つかない優しい世界』だなんて、綺麗事が叶うような世界かは分からないけど。

『もしも願いが叶うなら』と、あの時願った世界には、なったはずだ……!
 俺たちの守り通した、最高の世界はそこにある……!
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