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激震!勇魔最終戦争…!
最終決戦Ⅲ〜王の決意〜
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メテオ・エクスプロージョン。
かつてこの地に放たれた人類最強の混合魔法、攻撃手段は、
その暗黒の星に、希望をもたらした……
…………はず、だったが。
「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」
そのカミは、ダメージこそ受け、身体も一部崩壊しかかっていたものの、それでも未だそこに在り。
「……うそ、でしょ……? ここまでやったって、まだ倒せない……ってわけ?!」
終わってはいなかった。
文字通り全力だったが、それでもヤツは倒せてはいなかった。
「……サナ。魔力は、魔力はあるか」
「…………全然ない、けど、何……か、するわけ……?」
「……ああ、するさ」
出し切った。
俺も、サナも、人類の皆が全てを出し切った、と思っていた。
ただ、俺には———とっておきとは言えないかもだが、この最終局面まで取っておいた文字通りのとっておきがあったのだ。
「勇者たちは……倒せな……かった、だと……! あの最強の、魔法を用いても……! こうなれば……どうしたものか……」
絶望に暮れる人界王。……その絶望に囚われたままにはしておけない。
「……王サマ。……まだ、余力は残ってるんだろ……俺に、少しでも分けてくれ……その魔力を」
浮遊法で人界王の元まで赴き、要求を差し出す。……魔力……なんて、もらっても微弱なものだろうが……
「先程までの敬意を持った話し方はどこへ行ったのか…………
……勝てるのだな、お主なら」
「———ああ、勝ってみせるさ、俺はセイバー、救世主、だからな」
「…………そうか、大戦を終わらせた救世主の子孫…………お主であったか……!!
我が間違っておったか、お主を人斬り、などと呼んだのは」
「人斬りなのは………事実だ、正直言って、あの場ではその場凌ぎのウソをついた。……でもこんな時に、そんなくだらない事で仲間割れ、だなんてあまりにも……惨めじゃないか」
「よい、我の魔力を受け取ることを許す。
……そしてこれは我からの命令だ、絶対に勝て、救世主よ。非力な我に代わって、の……!」
「任せて……ください、やってみせます……よ……!」
———空元気だ。
「アアア……ウアアアアアアアアアアアアアアア!!」
絶望の嵐が吹き荒れる。
誰もが諦めた。
最高の光でさえ、その呪いは貫けなかったのだから。
それでも、その勇者だけは諦めなかった。
「…………白、おね……がい、勝って……!!」
舞い上がる。
最悪の呪いを前に、刀すら持たず———投げ捨て、ただただ浮遊し駆け上がる。
上空。
暗黒と化した空をただ見つめ、浮遊法の術式を解く。
まるで羽をもがれた鳥のように、力を失い頭から落ちてゆく。
超スピード。目も開けていられないほどの。
その最中で。
声が、聞こえた。
********
30年前。
その日、我ら人類の世界は終わりを告げた。虐げられた人界軍を見るのはもう散々だった。
それでも、父の急死の為に、当時20代だった我は早くして王になり。
人類の抵抗の象徴として、人の前に立ち続けることを選んだあの日から。
結局、我は非力だった。
あのような、世界を守る為に戦うことなど、我にはできるはずもなかった。
だからこそ、臆病と言われようと、非力と言われようと、我は我のできることを、ただただそれだけを精一杯やり続けた。
いついかなる時でも切羽詰まった状況であったが、それでもできることを、ただただ続けた。
その結果が、コレだ。
停滞していた戦況は覆り始め、ついに人類は、魔王に勝利した。
それでも、我の中の時間は、未だに静止したままであり、結局我は、最後の最後まで勇気を出し、巨悪に立ち向かうことは叶わなかった。
…………だからこそ……!
********
結局、この人界は止まったままだった。
おじさんから聞いた。30年前から、戦況は何1つ変っちゃいないと。
それでも、この2年間で全てが変わった。
ようやく俺は……人類は、魔王を打倒したのだから。
……王サマ、お前は変えたいんだろ、この地獄を。
この地獄を、日常的に誰かが死ぬ世界を、変えたいんだろ……?
俺を処刑しようとした時だってそうだ、人斬りなぞ王都に置いておけば、いつ俺がまた人を斬り始めるかも分からない。
そりゃあそうだ、当たり前だ。
だったら、まずはコイツを……この「カミ」を倒して、全てを変える……!
だからこそ……変えたいなら、ならば勇気を出して言うんだ。その覚悟を、信念を……
そして願って、祈ってくれ、王サマ……!
「———白よーーーーーっ、救世主よーーーーーっ! 世界を、救ってくれええええええっ!!」
もう今にも枯れそうな、老人の最後の叫び。
そうか、王サマ、それがお前の覚悟なら……!
「……ああ!! 俺は、正義の味方でも何でもねえ!……だけど俺は、それでも俺は、救世主だ!!」
体重を移動し、足を「呪い」に向け、落ちゆく風を利用し右腕を思いっきし引く。
より一層強くなる風。
下へ下へ、落ちてゆくたびにその風力は増す、が。
「受けてみやがれ……! コイツが俺らの、力!!」
今ここにある、みんなの想いを込めて。
「背水の陣、極ノ項……力重解放!!」
魔力を受けた右腕が、その魔力障壁を纏い巨大化してゆく。
「アアアアア……アア??」
身を焦がす衝撃。
既に引かれたその右腕は今にも千切れそうで。
「この一撃に……全てを賭けるっっっ!!」
だが絶対にここで決めると、確固たる決意を胸に。
「白雪我流……大雪山、ッ!」
噛み締めるように、されど勢いよく叫ぶ。
体重を移動させ、遠心力でその右腕を———ヤツに向けて叩きつける!!
絶対に負けない為に、絶対に勝つ為に。
そして望んだ未来を、この手に掴む為に…………!!
「氷晶牙ァァァァァッ!!」
凄まじいぶつかり合いの中で。
それでもなお、そのカミは倒せはせず。
やはり、こうなった。
やっぱり魔力は、足りはしなかった。
右腕はもはや動かない。
ダメだった、俺1人じゃ何もかも足りなかった……!
ちくしょう……俺1人じゃ、俺1人じゃ……!
『何を手こずってやがる、アレンっ!!』
まるで今の空のように。
暗雲に満たされようとしたその心は、今この時、真っ白に戻り。
同時に、その真っ白に染まった心は、また光を戻し、再び燃え上がった。
かつてこの地に放たれた人類最強の混合魔法、攻撃手段は、
その暗黒の星に、希望をもたらした……
…………はず、だったが。
「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」
そのカミは、ダメージこそ受け、身体も一部崩壊しかかっていたものの、それでも未だそこに在り。
「……うそ、でしょ……? ここまでやったって、まだ倒せない……ってわけ?!」
終わってはいなかった。
文字通り全力だったが、それでもヤツは倒せてはいなかった。
「……サナ。魔力は、魔力はあるか」
「…………全然ない、けど、何……か、するわけ……?」
「……ああ、するさ」
出し切った。
俺も、サナも、人類の皆が全てを出し切った、と思っていた。
ただ、俺には———とっておきとは言えないかもだが、この最終局面まで取っておいた文字通りのとっておきがあったのだ。
「勇者たちは……倒せな……かった、だと……! あの最強の、魔法を用いても……! こうなれば……どうしたものか……」
絶望に暮れる人界王。……その絶望に囚われたままにはしておけない。
「……王サマ。……まだ、余力は残ってるんだろ……俺に、少しでも分けてくれ……その魔力を」
浮遊法で人界王の元まで赴き、要求を差し出す。……魔力……なんて、もらっても微弱なものだろうが……
「先程までの敬意を持った話し方はどこへ行ったのか…………
……勝てるのだな、お主なら」
「———ああ、勝ってみせるさ、俺はセイバー、救世主、だからな」
「…………そうか、大戦を終わらせた救世主の子孫…………お主であったか……!!
我が間違っておったか、お主を人斬り、などと呼んだのは」
「人斬りなのは………事実だ、正直言って、あの場ではその場凌ぎのウソをついた。……でもこんな時に、そんなくだらない事で仲間割れ、だなんてあまりにも……惨めじゃないか」
「よい、我の魔力を受け取ることを許す。
……そしてこれは我からの命令だ、絶対に勝て、救世主よ。非力な我に代わって、の……!」
「任せて……ください、やってみせます……よ……!」
———空元気だ。
「アアア……ウアアアアアアアアアアアアアアア!!」
絶望の嵐が吹き荒れる。
誰もが諦めた。
最高の光でさえ、その呪いは貫けなかったのだから。
それでも、その勇者だけは諦めなかった。
「…………白、おね……がい、勝って……!!」
舞い上がる。
最悪の呪いを前に、刀すら持たず———投げ捨て、ただただ浮遊し駆け上がる。
上空。
暗黒と化した空をただ見つめ、浮遊法の術式を解く。
まるで羽をもがれた鳥のように、力を失い頭から落ちてゆく。
超スピード。目も開けていられないほどの。
その最中で。
声が、聞こえた。
********
30年前。
その日、我ら人類の世界は終わりを告げた。虐げられた人界軍を見るのはもう散々だった。
それでも、父の急死の為に、当時20代だった我は早くして王になり。
人類の抵抗の象徴として、人の前に立ち続けることを選んだあの日から。
結局、我は非力だった。
あのような、世界を守る為に戦うことなど、我にはできるはずもなかった。
だからこそ、臆病と言われようと、非力と言われようと、我は我のできることを、ただただそれだけを精一杯やり続けた。
いついかなる時でも切羽詰まった状況であったが、それでもできることを、ただただ続けた。
その結果が、コレだ。
停滞していた戦況は覆り始め、ついに人類は、魔王に勝利した。
それでも、我の中の時間は、未だに静止したままであり、結局我は、最後の最後まで勇気を出し、巨悪に立ち向かうことは叶わなかった。
…………だからこそ……!
********
結局、この人界は止まったままだった。
おじさんから聞いた。30年前から、戦況は何1つ変っちゃいないと。
それでも、この2年間で全てが変わった。
ようやく俺は……人類は、魔王を打倒したのだから。
……王サマ、お前は変えたいんだろ、この地獄を。
この地獄を、日常的に誰かが死ぬ世界を、変えたいんだろ……?
俺を処刑しようとした時だってそうだ、人斬りなぞ王都に置いておけば、いつ俺がまた人を斬り始めるかも分からない。
そりゃあそうだ、当たり前だ。
だったら、まずはコイツを……この「カミ」を倒して、全てを変える……!
だからこそ……変えたいなら、ならば勇気を出して言うんだ。その覚悟を、信念を……
そして願って、祈ってくれ、王サマ……!
「———白よーーーーーっ、救世主よーーーーーっ! 世界を、救ってくれええええええっ!!」
もう今にも枯れそうな、老人の最後の叫び。
そうか、王サマ、それがお前の覚悟なら……!
「……ああ!! 俺は、正義の味方でも何でもねえ!……だけど俺は、それでも俺は、救世主だ!!」
体重を移動し、足を「呪い」に向け、落ちゆく風を利用し右腕を思いっきし引く。
より一層強くなる風。
下へ下へ、落ちてゆくたびにその風力は増す、が。
「受けてみやがれ……! コイツが俺らの、力!!」
今ここにある、みんなの想いを込めて。
「背水の陣、極ノ項……力重解放!!」
魔力を受けた右腕が、その魔力障壁を纏い巨大化してゆく。
「アアアアア……アア??」
身を焦がす衝撃。
既に引かれたその右腕は今にも千切れそうで。
「この一撃に……全てを賭けるっっっ!!」
だが絶対にここで決めると、確固たる決意を胸に。
「白雪我流……大雪山、ッ!」
噛み締めるように、されど勢いよく叫ぶ。
体重を移動させ、遠心力でその右腕を———ヤツに向けて叩きつける!!
絶対に負けない為に、絶対に勝つ為に。
そして望んだ未来を、この手に掴む為に…………!!
「氷晶牙ァァァァァッ!!」
凄まじいぶつかり合いの中で。
それでもなお、そのカミは倒せはせず。
やはり、こうなった。
やっぱり魔力は、足りはしなかった。
右腕はもはや動かない。
ダメだった、俺1人じゃ何もかも足りなかった……!
ちくしょう……俺1人じゃ、俺1人じゃ……!
『何を手こずってやがる、アレンっ!!』
まるで今の空のように。
暗雲に満たされようとしたその心は、今この時、真っ白に戻り。
同時に、その真っ白に染まった心は、また光を戻し、再び燃え上がった。
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