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第一章
嘘と否定
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「─────事実ではありません」
得意げな顔で、堂々と嘘をついたカイル陛下に、父も母も……そして、私も呆れ返る。
不貞関係の証拠を持っている我々からすれば、カイル陛下の嘘の供述はただの悪足掻きにしか見えなかった。
カイル陛下のことだから、『どうせ証拠はないんだ。適当に言いくるめてやろう』と思っているんだろうけど、実に浅はかな考えね。私達が何の準備もなく、この話し合いに臨むとでも思ったのかしら?
「リナとカーティスに体の関係はありません。兄を取られたくないあまり、リナが妄言を吐いただけです。そうだな?カーティス」
「は、はい……」
突然話を振られたカーティス様は、オロオロした様子で曖昧に頷く。
嘘をついた負い目があるのか、彼は決して目を合わせようとしなかった。
「妄言、ですか……私にはとてもそうは思えませんけど……。あの時のカーティス様は確かに『リナ、それは二人だけの秘密だろ!』と仰っていましたから……嘘であれば、そんなことは言わないと思いますが?」
「はっはっはっはっ!きっと、その時のカーティスは気が動転していたんでしょう。妹と体の関係を持つなんて有り得ませんからなぁ!なあ?カーティス」
「っ……!!は、はい……」
実の父親に『有り得ない』と断言されたせいか、カーティス様は苦しげに顔を歪める。
これでは、『嘘です』と自白しているようなものだ。
「では、キャンベル王家はリナ王女とカーティス様の体の関係を真っ向から否定なさるのですね?」
「はい!当然です!それは事実無根の冤罪ですから」
「分かりました。では────その言葉しっかり覚えておいて下さい」
カイル陛下の口から『事実無根』という言葉を引き出した私は、内心ほくそ笑む。
そして、父に目配せして証拠品提示の許可をもらうと────予め用意しておいた書類に手を伸ばした。
分厚い書類の束をドンッとテーブルの上に置き、私はゆるりと口角を上げる。
さあ、キャンベル王家の皆さん、ここからが本番ですよ。
「カイル陛下、こちらの資料を見てください」
「それは構いませんが、これは一体……」
「こちらはリナ王女とカーティス様に関する、調査資料になります」
「なっ!?調査資料!?」
飛び上がらんばかりの勢いで身を起こしたカイル陛下は、慌てて資料に手を伸ばした。
食い入るような目で資料を眺め、一枚ずつ読み進めていく。
資料を持つ手はワナワナと震えており、焦りと不安に駆られているようだった。
「資料を見て頂ければ分かると思いますが、リナ王女とカーティス様は我が国で一度密会しています。それも結婚式の前日に……」
「な、なっ……!?」
「密会場所に指定したホテルは、貴族や王族も利用する宿泊施設で完全予約制となっております。つまり、お二人は以前からこのホテルでの密会を企てていた。それも予約したのは一部屋だけ……ここまで言えば、もうお分かりですね?」
「っ……!!」
わざと決定的な一言は言わずに、カイル陛下の出方を伺う。
彼は苦虫を噛み潰したような顔をして、真正面から睨みつけてきた。
先程までの余裕は、粉々に砕け散ってしまったらしい。
まさか、ここで証拠が出てくるとは思わなかったんでしょうね。まあ、私達もこんな簡単に証拠が見つかるとは、思わなかったけど……カーティス様の危機管理能力については、お粗末としか言いようがないわね。
得意げな顔で、堂々と嘘をついたカイル陛下に、父も母も……そして、私も呆れ返る。
不貞関係の証拠を持っている我々からすれば、カイル陛下の嘘の供述はただの悪足掻きにしか見えなかった。
カイル陛下のことだから、『どうせ証拠はないんだ。適当に言いくるめてやろう』と思っているんだろうけど、実に浅はかな考えね。私達が何の準備もなく、この話し合いに臨むとでも思ったのかしら?
「リナとカーティスに体の関係はありません。兄を取られたくないあまり、リナが妄言を吐いただけです。そうだな?カーティス」
「は、はい……」
突然話を振られたカーティス様は、オロオロした様子で曖昧に頷く。
嘘をついた負い目があるのか、彼は決して目を合わせようとしなかった。
「妄言、ですか……私にはとてもそうは思えませんけど……。あの時のカーティス様は確かに『リナ、それは二人だけの秘密だろ!』と仰っていましたから……嘘であれば、そんなことは言わないと思いますが?」
「はっはっはっはっ!きっと、その時のカーティスは気が動転していたんでしょう。妹と体の関係を持つなんて有り得ませんからなぁ!なあ?カーティス」
「っ……!!は、はい……」
実の父親に『有り得ない』と断言されたせいか、カーティス様は苦しげに顔を歪める。
これでは、『嘘です』と自白しているようなものだ。
「では、キャンベル王家はリナ王女とカーティス様の体の関係を真っ向から否定なさるのですね?」
「はい!当然です!それは事実無根の冤罪ですから」
「分かりました。では────その言葉しっかり覚えておいて下さい」
カイル陛下の口から『事実無根』という言葉を引き出した私は、内心ほくそ笑む。
そして、父に目配せして証拠品提示の許可をもらうと────予め用意しておいた書類に手を伸ばした。
分厚い書類の束をドンッとテーブルの上に置き、私はゆるりと口角を上げる。
さあ、キャンベル王家の皆さん、ここからが本番ですよ。
「カイル陛下、こちらの資料を見てください」
「それは構いませんが、これは一体……」
「こちらはリナ王女とカーティス様に関する、調査資料になります」
「なっ!?調査資料!?」
飛び上がらんばかりの勢いで身を起こしたカイル陛下は、慌てて資料に手を伸ばした。
食い入るような目で資料を眺め、一枚ずつ読み進めていく。
資料を持つ手はワナワナと震えており、焦りと不安に駆られているようだった。
「資料を見て頂ければ分かると思いますが、リナ王女とカーティス様は我が国で一度密会しています。それも結婚式の前日に……」
「な、なっ……!?」
「密会場所に指定したホテルは、貴族や王族も利用する宿泊施設で完全予約制となっております。つまり、お二人は以前からこのホテルでの密会を企てていた。それも予約したのは一部屋だけ……ここまで言えば、もうお分かりですね?」
「っ……!!」
わざと決定的な一言は言わずに、カイル陛下の出方を伺う。
彼は苦虫を噛み潰したような顔をして、真正面から睨みつけてきた。
先程までの余裕は、粉々に砕け散ってしまったらしい。
まさか、ここで証拠が出てくるとは思わなかったんでしょうね。まあ、私達もこんな簡単に証拠が見つかるとは、思わなかったけど……カーティス様の危機管理能力については、お粗末としか言いようがないわね。
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