聖剣を錬成した宮廷錬金術師。国王にコストカットで追放されてしまう~お前の作ったアイテムが必要だから戻ってこいと言われても、もう遅い!

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イシスが古代魔法を覚える

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「はぁ……はぁ……着きました」

 様々な苦難を乗り越え、黄金の原石の四人は北の塔へと行き着く。古びた塔だった。

「ここに何があるんですか?」
「わかりません。ですがこの塔は恐らくは2000年前のものです。2000年前、勇者と魔王が戦っていた時代に関係するものでしょう。とにかく中に入らない事にはわかりません」

 四人は北の塔に入る。中はらせん階段になっていた。とにかく上を目指す。そして上に辿り着いた時の事だった。
 フロアの中央には大きな水晶のようなものがあった。そして文字が刻まれている。古代文字だ。

「……なんでしょう、これは。読めません」
「古代文字です。解析します」
「やっぱり先生はかっこいいです。知的な男性って素敵です! 憧れちゃいます」
「リーネ、先生の邪魔をしないで」
「わかりました!」

 しばらくしてエルクは解析を終える。そして水晶の操作を始めた。映像が流される。

「これは! 一体!」
「どうやら2000年前の映像のようです」

 それは魔王と勇者の闘いの映像だ。その中には勇者パーティーの闘い。そして四天王との闘い。最後に魔王と思しき男の姿も映った。
 中央に立体映像が出現する。若い男の姿だ。鎧を着て剣を腰に備えた男の姿。

「……僕の名はアレク・ユグドラシル。勇者だ」
「勇者様!?」
「この塔を訪れたという事は世界はまた混沌に陥っているという事だろう。僕達は冒険の末に四天王を倒し、そして魔王を倒した。だが完全に消滅させる事はできなかった。永遠の命を持つ魔王を消滅する事はできずに、魔王を五つの魂に分断し、封印した」
「それが魔王の宝玉というわけですか」
「だが、封印はいずれ解かれる。それが1000年後なのか、2000年後なのかはわからない、必ずだ。その為、僕達は世界の各所に魔王と闘える為の力を残してきた。恐らく、これを見ている君の世界は今の僕達とは全く異なる魔法体系をしているかもしれない、武器の類も失われてしまっているかもしれない。もしかしたら僕達よりも強くなっているかもしれないが、平和な世界の中ではそれも難しいのかも知れない。退屈や平穏は人を弱くもするし脆くもする。残念だけどそれが現実だ。君達は魔王が目覚めた時に闘える力を失っている事だろうと思う。闘う為の力をここに残してきた」
「勇者様が、そんなものを」
「この塔に残してきたのは僕の勇者パーティーの一人。大魔道士カーンの残した魔法だ。僕達の時代の魔法。今から君達に魔石を授ける。そこにカーンの魔法を授けた。頼んだよ。世界が混沌に陥った時に再び平和を取り戻せるのは君達だけだ」
 
 映像が終わる。しばらくして、宙から赤色の魔石が降り立ってきた。それを手に取る。

「大魔道士カーンの魔法。そしてそれを封じ込めた魔石ですか」
「先生! それが魔石ですか」
「ええ。どうやらこれはイシスさんに必要なようです」
「どうやって使うんですか?」
「待っててください。今調べます」

 エルクは魔石を調べた。

「適合者が手に持つと自然と効果が発動するらしいです」
「じゃあ、私が持てばいいんですね」
「はい。持ってください」
「はい!」

 イシスは魔石を手に取った。魔石が砕け、赤色の粒子となった。そしてイシスの身体の中に取り込まれていく。

「こ、これは……力が溢れてきます。凄いです。先生」
「……そうですか。それは良かったです。いずれは実戦の機会もあるでしょう。まあ、その前に試し打ちくらいしますか」
「はい! 先生!」

 大魔道士カーンの魔法を授かったイシスは試し打ちをする為外へ出た。

「じゃあ、適当にその辺の山にでも魔法を打ってください」
「はい!」

 イシスは古代魔法を発動する。

「大爆発(エクスプロージョン)!」

 ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!
 大爆発が起こった。

「山が消えちゃいました」
「すごい威力です」
「はぁ……流石は古代魔法。ランクは『EX』といったところです」
「すごい威力です。これだったらあの四天王が相手でも効き目がありそう」
「そうですね」
「やった! 先生!」
 
 イシスは抱きつく。

「これでもう私は足手まといじゃない! 先生の! 皆の役に立てる!」
「……よしよし。よかったですね」
「ううっ」
「どうしたのですか? リーネさん」
「ううっ……差をつけられてしまいました」

 リーネは嘆いていた。

「いいではないですか。いずれまた力を得る機会はあります。勇者様も世界のかしこに古代の力を残してきたと言っています。ですからその中にあなたに適合する力もある事でしょう」
「ううっ……そうだといいんですが。しばらくイシスさんに見せ場を取られて、先生の好感度を取られるようで気が気ではないんです」
「ありがとうございます。これも先生のおかげです」
「私は何もしてませんよ。勇者様が力を残してくれていただけです」
「ああっ! もうっ! いつまでベタベタとくっついてるんですかーーーー! 離れてくださいーーーーー!」

 リーネは叫んだ。
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