転生したらただの女の子、かと思ったら最強の魔物使いだったらしいです〜しゃべるうさぎと始める異世界魔物使いファンタジー〜

上村 俊貴

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第4巻第3章 剣聖とウォーレン

ウォーレンの動向

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「それで、ウォーレンさんについてなにかわかったのかな?」

 マヤは未だに少し顔が赤いラッセルを前に、机の上に肘を付き、組み合わせた手の上に顎を乗せる。

 ラッセルはそんな何気ないマヤの動作からも目を背けて顔を赤らめる。

 しかし、しばらくするとふるふると頭を振ってマヤを正面から見据えた。

「はい、ウォーレンさんを一緒に修行していたことがあると言う剣神の元門弟が見つかりまして、色々と情報を集めることができました」

「へえ、流石だね。それで、剣神さんのところでウォーレンさんは何をしてたのかな?」

「その元門弟が言うには、普段は至って普通の剣士だったようです」

「普段は? 普通じゃなくなることがあるってこと?」

「ええ、そうらしいです。以前、何度か剣神の道場に腕試しのごろつきが攻めてきたことがあったらしいのですが……」

 ラッセルはそこまで言って言葉を切ると、キョロキョロと部屋中を見渡した。

 魔法に明るくないマヤには分からなかったが、ラッセルは魔法も使って屋敷中も合わせて確認する。

「どうしたの?」

「いえ、念のためカーサさんがいないか確認してました」

「カーサに聞かれるとまずい感じなの?」

「まあそこまで酷くはないですけど。ウォーレンさんですが、ごろつきが攻めてきた時だけ豹変するらしくて、全くの情け容赦なく、片っ端からごろつきたちの首をはねて、心臓を一突きして殺すらしくて……」

 何やら既視感を感じる殺し方だが、ひとまずそれは後で思い出すとして、マヤは話を進める。

「へえ、なんでなんだろうね? そんなにごろつきが嫌いなのかな?」

 昔カーサの故郷がごろつきに襲われたとか、そのときにごろつきに両親を殺されたとか、そんなところだろうか。

 しかし、それならカーサもごろつきを恨んでいそうだが、そんな話は聞いたことがない。

 そもそも、特定のごろつき個人やグループを恨むならまだしも、ごろつき全体を恨むというのもどこか不自然だ。

「いえ、そういうわけじゃないみたいですよ。その元門弟も疑問に思って聞いてみたことがあるらしいんですが、むしろごろつきたちにもそれぞれ事情があるんだろう、みたいなことを言ってたらしいです」

「なにそれ? よくわからないね……。ごろつきが攻めてきたら皆殺しにするくせにごろつきに同情してるの?」

「そうなんですよ。その元門弟も同じことを思ったようで「そんなこと言ってもこの前皆殺しにしてたじゃないか」って聞いてみたらしいんですが、それを聞いたウォーレンさんは「そうか、またか……時間がないな」とかなんとか言うだけで意味不明だったらしいで
す」

「時間がない? うーん、さっぱりわからないね。他の元門弟にも話し聞けたりしてる?」

「はい、その元門弟に紹介してもらって、各地の隊員が調査中です。今上がってきてる報告書はこんなところですね」

 ラッセルは丸められた報告書がいくつか入った麻袋をマヤへと差し出した。

 マヤは中身を机に広げると、1つずつ目を通していく。

 その内容はどれも似たようなものだった。

 共通しているのは、普段のウォーレンは優しく真面目な人物で、剣の腕は強者揃いの門弟の中でも一目置かれているということ。

 しかし、剣神の道場が襲撃されると、豹変して襲撃者を皆殺しするということ。

 この2つは大体どの門弟も話していたようだ。

「なるほど、ウォーレンさんにもなにか秘密がありそうだね」

「そうですね。次はそのあたりを探ってみたいと思います」

「うん、お願い。頼りにしてるからね」

 マヤが立ち上がってラッセルの頭に手を伸ばすと、その手がラッセルの髪に触れる前に、ラッセルの体が後ろに倒れた。

「陛下、ラッセル隊長はこれから部隊に指示を出さなければいけませんので」

 そう言ってラッセルを大きな胸で受け止めたのは、いつの間にやらやってきていたナタリーだった。

 事務的にマヤへと進言している風を装っているが、その表情はどこか不機嫌そうだ。

 おおかた、マヤがラッセルの頭を撫でようとしたのが面白くなかったのだろう。

 もっと言うと、仕事とはいえマヤとラッセルが2人きりで話していたの時点で面白くなかったのかもしれない。

「ナタリーさん!? いつの間に……それと、その……」

 ラッセルは後頭部を覆うポヨポヨとした感触に、先程マヤにからかわれた時以上に真っ赤になる。

「どうしたのですか、ラッセル隊長?」

 ナタリーは胸の上に頭を乗せたラッセルの肩を、柔らかくしかしながらしっかりと掴みながら、ラッセルを上から見下ろす。

「いやその、できれば離してほしいんですが……」

「これは失礼しました」

 ナタリーがラッセルを離すと、ラッセルはようやくナタリーの胸に密着させられた状態から開放される。

「それではマヤさん、我々はこれからもウォーレンさんの調査を続けます」

「うん、よろしくね。それとラッセル君、私だから良かったけど、ナタリーさんにあんなことしちゃ駄目だよ?」

 わざとらしく頬を染めながら少しもじもじするマヤに、ナタリーの表情が凍りついた。

「ラッセル隊長? ってどんなことですか」

 ニッコリと不自然なほど優しい笑みをラッセルに向けるナタリーに、ラッセルは背中全体から冷や汗が吹き出す。

「ちょ、ちょっと! マヤさん! そんな誤解を招く言い方――」

「えー、ひどーい、誤解じゃなかったじゃん?」

 マヤは明らかに棒読みだったが、もはやナタリーの耳にマヤの声は聞こえていなかったようだ。

「ラッセル隊長、少しお話があります」

「ナ、ナタリーさん? ちょ、ちょっと待っ――ひぃっ」

 どんどんと距離を詰めてくるナタリーに、後退りしていたラッセルだったが、すぐに壁まで追い詰められてしまう。

 マヤが無駄を嫌って国王室といえど不必要に広くしていないことも、今のラッセルにとっては不幸だった。

「さて、行きましょうか、ラッセル隊長? それでは陛下、失礼します」

「ナタリーさん、当たってますって! それに自分で歩け――」

 バタンッ、という大きな音とともにドアが閉められ、ラッセルとナタリーは部屋を出ていった。

 ちなみに最終的にナタリーに捕まったラッセルは、ナタリーの深い谷間に片腕を抱え込まれ、ズルズルと引きずられるようにして連れて行かれた。

「あははは……ちょっとからかい過ぎちゃったかも? まあ、ナタリーさんがラッセル君を傷つけることはないだろうし、別にいいよね?」

 マヤは誰もいなくなった部屋独りごちると、椅子から立ち上がり、自らもドアへと向かう。

「とりあえず、ウォーレンさんが隠してることについて、なにか心あたりがないか、長老に聞きに行ってみよう」

 またしても名前を忘れてしまった、カーサの村の長老のところへと、マヤは出発したのだった。
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