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第3巻第3章 キサラギ亜人王国の危機
ベルフェゴールVSマヤ
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「ちっ!」
「いっけー!」
マヤの魔物とベルフェゴールの魔物がぶつかって数十分。
徐々に徐々に、マヤの魔物たちがベルフェゴールの魔物たちを追い込み始めていた。
「流石に魔物使いというだけで一国の王になっただけのことはありますね」
ベルフェゴールは少しだけ焦りの表情を浮かべている。
まだ別の手がある様子だが、それはそれとして魔物同士の戦いで劣勢に立たされていることに驚いているのだろう。
「でしょ? 逆にベルフェゴールは魔王なのにこんなもんなの?」
「ふふっ、言ってくれるじゃないですか……」
マヤの煽りの受流したベルフェゴールは、冷静に戦況を分析する。
(そもそも、魔物1匹の強さがあちらの方が上のようですね)
ベルフェゴールの魔物とて、決して弱いわけではないのだ。
数々の魔物を作り出し、その中でも特に強いものだけを残してきた。
それを数百年レベルで続けてきたベルフェゴールの魔物達は、そこらの魔物とはレベルが違うのだ。
にも関わらず、信じられないことにマヤの魔物の方が強い。
(その上あの強化魔法、あれが厄介すぎる)
ベルフェゴールの魔物がマヤの魔物を攻撃し、傷をつけることができたとしても、マヤが強化魔法を使うだけで、一瞬で傷が治ってしまうのだ。
ベルフェゴールの魔物を上回る強さの魔物と、ダメージの回復までできる強化魔法。
この2つがあるせいで、数で勝っているベルフェゴールが押されているのだった。
(本当は殲滅したいところですが、仕方ありません)
魔物を全て殺し、守りを失ったマヤを殺そうと考えていたベルフェゴールだったが、作戦を変更することにした。
ベルフェゴールが頭の中で指示を出すと、魔物たちの動きが変化する。
今までマヤの魔物を一定距離で囲み、連携して攻撃を仕掛けていたベルフェゴールの魔物たちが、一斉にマヤの魔物に襲いかかったのだ。
「……なるほど」
マヤはベルフェゴールの作戦に気が付き、少しまずいかな、という顔をする。
「すぐに気がつくとは流石ですね」
「まあ、これだけわかりやすかったらね。確かに、こうされちゃ私の魔物たちはとりあえずしばらくは動けない」
そう、マヤの言う通り、マヤの魔物達はしばらくの間身動きが取れない。
1匹1匹の強さで勝っていても、数の暴力で押さえつけられてしまってはどうしようもないのだ。
「その通りです。そして、その間にあなたを殺せば私の勝ちです!」
ベルフェゴールは一瞬でマヤとの距離を詰めると、そのままの勢いでマヤを殴りつけた。
「がはっ!」
マヤはお腹にその拳をもろにくらって吹き飛ぶと、そのまま地面にうずくまる。
(痛い痛い痛い痛いいったーーーい! てか息できない! やばいやばい! 最初から強化魔法使うのもどうかと思って受けてみたけど、これは死ぬ、次で死ぬ! よし、もう強化魔法使おう)
マヤは隠しておけるなら隠しておこうと思っていた奥の手を使うことを一瞬で決断すると、さっそく自分に強化魔法をかけた。
マヤを強化魔法の光が包み込むと、マヤは全身の痛みが引き、呼吸が楽になるのを感じた。
同時に、思考速度もあがったマヤは、ベルフェゴールがうずくまるマヤの腹を蹴り上げようとしているのに気がついた。
「流石にそれは酷いんじゃない?」
マヤはベルフェゴールの蹴りを転がってかわし、転がった勢いのまま立ち上がる。
「ほう、もう動けるとは、なかなか頑丈ですね」
「頑丈なだけじゃないよ?」
「っ!?」
次の瞬間、一瞬でベルフェゴールの背後に移動したマヤは、背伸びしてベルフェゴールの耳元でささやいた。
驚いたベルフェゴールがそのまま右手をマヤへと振り抜くが、その時にはもうそこにマヤの姿はなかった。
「何をしたっ!」
再びベルフェゴールの目の前に移動したマヤに、ベルフェゴールは声を荒げる。
「さあ? なんだろうねー」
「ふざけた真似をっ!」
ベルフェゴールがマヤへと距離を詰めて拳を振るうが、その尽くをマヤはその場で回避してみせた。
「はあはあはあ、いったい何が……」
「魔王ってそんなもんなの? じゃあ、私から行っちゃうよ?」
そう告げたマヤは、難なくベルフェゴールの背後に回り込むと、その背中に肘打ちを叩き込む。
「ぐっ……っ!」
なんとか倒れるのをこらえたベルフェゴールだったが、あまりの威力に思わず膝をついてしまった。
ただの一撃で、魔王が膝をついたのだ。
今のマヤの攻撃は、それほどまでに重たい。
しかしそこは腐っても魔王、ベルフェゴールの身体を淡い光が包むと、ベルフェゴールはすぐに立ち上がった。
「まさか俺が自己治癒魔法を使うことになるとはな」
「なんだ、全然大丈夫そうじゃん。っていうか、それが素の喋り方? そっちのほうがいいと思うよ?」
「黙れ、お前に指図されるいわれはない」
ベルフェゴールはマヤの言葉を一蹴すると、どこからともなく取り出した2振りの剣を構える。
それは魔石でできた漆黒の剣だった。
「お前は本気で相手をする必要があるようだ」
ベルフェゴールは2振りの剣を構えながら、その身に魔力をみなぎらせる。
同時に、ベルフェゴールが両手に持つ剣にも魔力が流し込まれていくのをマヤは肌で感じた。
「えー? 今までも本気だったでしょ?」
軽口を叩くマヤだが、その目は油断なくベルフェゴールを観察している。
「まさか、あの程度がこの俺、魔王ベルフェゴールの本気なわけがないだろう? 見せてやるよ、俺を本気をな!」
ベルフェゴールが叫ぶと、その身体に魔力が吸い込まれていく。
「なるほど、まあ、私ができるんだから、ベルフェゴールができてもおかしくないか」
ベルフェゴールもまた、自身へと強化魔法を使っているのだ。
その上、彼の手には魔石でできた剣がある。
「はは、これはちょっとまずいかも?」
思わず冷や汗をかくマヤに、ベルフェゴールは哄笑する。
「なんだ、怖気づいたか? 今降伏するなら命くらいは助けてやらんこともないぞ?」
「はは、まさか。仲間をいいように弄ばれて、国をこんなに踏みにじられて、私もいい加減頭にきてるからね。引けないし、引かないよ! 強化!」
マヤは最大出力で強化魔法を放つと、そのすべてを自身へと吸収させる。
溢れんばかりの強化魔法を浴びたマヤの身体に、変化が起き始める。
白い髪は光を発するほどより白く、白い肌も光を通しそうなほど白く変わっていく。
闇をまとうベルフェゴールと光をまとうマヤ、2人がほぼ同時に飛び出すと、爆音と共に戦闘が始まったのだった。
「いっけー!」
マヤの魔物とベルフェゴールの魔物がぶつかって数十分。
徐々に徐々に、マヤの魔物たちがベルフェゴールの魔物たちを追い込み始めていた。
「流石に魔物使いというだけで一国の王になっただけのことはありますね」
ベルフェゴールは少しだけ焦りの表情を浮かべている。
まだ別の手がある様子だが、それはそれとして魔物同士の戦いで劣勢に立たされていることに驚いているのだろう。
「でしょ? 逆にベルフェゴールは魔王なのにこんなもんなの?」
「ふふっ、言ってくれるじゃないですか……」
マヤの煽りの受流したベルフェゴールは、冷静に戦況を分析する。
(そもそも、魔物1匹の強さがあちらの方が上のようですね)
ベルフェゴールの魔物とて、決して弱いわけではないのだ。
数々の魔物を作り出し、その中でも特に強いものだけを残してきた。
それを数百年レベルで続けてきたベルフェゴールの魔物達は、そこらの魔物とはレベルが違うのだ。
にも関わらず、信じられないことにマヤの魔物の方が強い。
(その上あの強化魔法、あれが厄介すぎる)
ベルフェゴールの魔物がマヤの魔物を攻撃し、傷をつけることができたとしても、マヤが強化魔法を使うだけで、一瞬で傷が治ってしまうのだ。
ベルフェゴールの魔物を上回る強さの魔物と、ダメージの回復までできる強化魔法。
この2つがあるせいで、数で勝っているベルフェゴールが押されているのだった。
(本当は殲滅したいところですが、仕方ありません)
魔物を全て殺し、守りを失ったマヤを殺そうと考えていたベルフェゴールだったが、作戦を変更することにした。
ベルフェゴールが頭の中で指示を出すと、魔物たちの動きが変化する。
今までマヤの魔物を一定距離で囲み、連携して攻撃を仕掛けていたベルフェゴールの魔物たちが、一斉にマヤの魔物に襲いかかったのだ。
「……なるほど」
マヤはベルフェゴールの作戦に気が付き、少しまずいかな、という顔をする。
「すぐに気がつくとは流石ですね」
「まあ、これだけわかりやすかったらね。確かに、こうされちゃ私の魔物たちはとりあえずしばらくは動けない」
そう、マヤの言う通り、マヤの魔物達はしばらくの間身動きが取れない。
1匹1匹の強さで勝っていても、数の暴力で押さえつけられてしまってはどうしようもないのだ。
「その通りです。そして、その間にあなたを殺せば私の勝ちです!」
ベルフェゴールは一瞬でマヤとの距離を詰めると、そのままの勢いでマヤを殴りつけた。
「がはっ!」
マヤはお腹にその拳をもろにくらって吹き飛ぶと、そのまま地面にうずくまる。
(痛い痛い痛い痛いいったーーーい! てか息できない! やばいやばい! 最初から強化魔法使うのもどうかと思って受けてみたけど、これは死ぬ、次で死ぬ! よし、もう強化魔法使おう)
マヤは隠しておけるなら隠しておこうと思っていた奥の手を使うことを一瞬で決断すると、さっそく自分に強化魔法をかけた。
マヤを強化魔法の光が包み込むと、マヤは全身の痛みが引き、呼吸が楽になるのを感じた。
同時に、思考速度もあがったマヤは、ベルフェゴールがうずくまるマヤの腹を蹴り上げようとしているのに気がついた。
「流石にそれは酷いんじゃない?」
マヤはベルフェゴールの蹴りを転がってかわし、転がった勢いのまま立ち上がる。
「ほう、もう動けるとは、なかなか頑丈ですね」
「頑丈なだけじゃないよ?」
「っ!?」
次の瞬間、一瞬でベルフェゴールの背後に移動したマヤは、背伸びしてベルフェゴールの耳元でささやいた。
驚いたベルフェゴールがそのまま右手をマヤへと振り抜くが、その時にはもうそこにマヤの姿はなかった。
「何をしたっ!」
再びベルフェゴールの目の前に移動したマヤに、ベルフェゴールは声を荒げる。
「さあ? なんだろうねー」
「ふざけた真似をっ!」
ベルフェゴールがマヤへと距離を詰めて拳を振るうが、その尽くをマヤはその場で回避してみせた。
「はあはあはあ、いったい何が……」
「魔王ってそんなもんなの? じゃあ、私から行っちゃうよ?」
そう告げたマヤは、難なくベルフェゴールの背後に回り込むと、その背中に肘打ちを叩き込む。
「ぐっ……っ!」
なんとか倒れるのをこらえたベルフェゴールだったが、あまりの威力に思わず膝をついてしまった。
ただの一撃で、魔王が膝をついたのだ。
今のマヤの攻撃は、それほどまでに重たい。
しかしそこは腐っても魔王、ベルフェゴールの身体を淡い光が包むと、ベルフェゴールはすぐに立ち上がった。
「まさか俺が自己治癒魔法を使うことになるとはな」
「なんだ、全然大丈夫そうじゃん。っていうか、それが素の喋り方? そっちのほうがいいと思うよ?」
「黙れ、お前に指図されるいわれはない」
ベルフェゴールはマヤの言葉を一蹴すると、どこからともなく取り出した2振りの剣を構える。
それは魔石でできた漆黒の剣だった。
「お前は本気で相手をする必要があるようだ」
ベルフェゴールは2振りの剣を構えながら、その身に魔力をみなぎらせる。
同時に、ベルフェゴールが両手に持つ剣にも魔力が流し込まれていくのをマヤは肌で感じた。
「えー? 今までも本気だったでしょ?」
軽口を叩くマヤだが、その目は油断なくベルフェゴールを観察している。
「まさか、あの程度がこの俺、魔王ベルフェゴールの本気なわけがないだろう? 見せてやるよ、俺を本気をな!」
ベルフェゴールが叫ぶと、その身体に魔力が吸い込まれていく。
「なるほど、まあ、私ができるんだから、ベルフェゴールができてもおかしくないか」
ベルフェゴールもまた、自身へと強化魔法を使っているのだ。
その上、彼の手には魔石でできた剣がある。
「はは、これはちょっとまずいかも?」
思わず冷や汗をかくマヤに、ベルフェゴールは哄笑する。
「なんだ、怖気づいたか? 今降伏するなら命くらいは助けてやらんこともないぞ?」
「はは、まさか。仲間をいいように弄ばれて、国をこんなに踏みにじられて、私もいい加減頭にきてるからね。引けないし、引かないよ! 強化!」
マヤは最大出力で強化魔法を放つと、そのすべてを自身へと吸収させる。
溢れんばかりの強化魔法を浴びたマヤの身体に、変化が起き始める。
白い髪は光を発するほどより白く、白い肌も光を通しそうなほど白く変わっていく。
闇をまとうベルフェゴールと光をまとうマヤ、2人がほぼ同時に飛び出すと、爆音と共に戦闘が始まったのだった。
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