転生したらただの女の子、かと思ったら最強の魔物使いだったらしいです〜しゃべるうさぎと始める異世界魔物使いファンタジー〜

上村 俊貴

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幕間 キサラギ亜人王国の日常

食糧問題

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 ドワーフのキサラギ亜人王国での商売も落ち着いて、マヤが再び手持ち無沙汰になったある日、マヤはキサラギ亜人王国の食料生産の拠点である大農場を訪れていた。。

「こんにちはー」

「マヤ陛下! どうしてこんなところに……」

「ちょっと暇だったからさ。どうかな、順調?」

 マヤは見渡す限りの緑を見て、近くにいた農業担当のエルフに尋ねる。

「そうですね、順調といえば順調なんですが……」

「なにか問題があるの? 見た感じ青々としてて問題なさそうな感じだけど……」

 農業に関しての専門知識などまったく無いマヤの目には、目の前の一面の緑は問題なく農業が行えているようにしか見えなかった。

「農業自体はうまくいってるんですが、なにぶんやることが多すぎて休む暇もないのです」

「休み暇がない? そんなに毎日毎日やることばっかりなの?」

「はい、私も最後に休んだのはいつかわからないくらいで」

「そんなに!? だって国として1週間に2日は休みってことにしてあるじゃん? その休みの日も働いているってこと?」

「そうですね。農業担当者はみんなそうだと思いますよ」

「いやいやいや、それはおかしいって! 私だって農業についてはよくわからないけど、流石にそこまで忙しくないはずだよ?」

「そう言われましても、実際に仕事はあるんです」

「うーん、そうなんだ……そうだなあ、それじゃあさ、ちょっとこの後、農業担当のみんなを集めてよ」

「農業担当者全員をですか?」

「うん、全員を。場所は……そうだね、私のお屋敷の前の広場でどうかな? 国王陛下が呼んでるって言ってくれていいから、お願いできないかな?」

「かしこまりました!」

 マヤの言葉に、農業担当のエルフは急いで踵を返すと、他の農業担当者たちを呼びに行った様だ。

「さて、何が原因で、毎日毎日仕事に追われてるんだろうねえ……?」

 マヤは一人つぶやくと、ひとまず自分の屋敷の戻ったのだった。

***

「だから、それは私達のやり方のほうがいいと何度も……」

「お前ら人間のやり方なんて信じられるか! こっちは何百年も森の中で農家やってんだ! 森の中でやる以上は俺たちのやり方に従うべきだろ!」

「それを言うなら我々オークのやり方も、森の中で農業するのには適していると思いますがね?」

 数時間後、マヤの屋敷の前に集まった農業担当者達を前に、マヤは頭を抱えていた。
 
 マヤが、初めにそれぞれどうやって農業を進めているのか簡単に説明してほしい、とお願いしただけなのに、いつの間にか各種族の農業担当者達は言い争いを始めてしまったのだ。

「これはまた、なんというか……」

「うん、全然、まとまって、ない」

「ああ、これではうまくいくものもいかないだろうな」

「だよねえ」

 手が空いていたオリガ、カーサ、マッシュの3人も様子を見に来ていたのだが、マヤ同様不毛な言い争いを始めた農業担当者達を前に、呆れた様子だ。

「それにあそことか、エルフ同士でも言い争ってませんか?」

「あっちは、オーク同士で、言い争って、る」

「人間は一枚岩かと思ったが……そうでもないようだな」

「そうなんだよね、せめて種族ごとでだけでもまとまっててくれたらいいんだけど」

「それすらできていないということは、おそらく全員自分の担当分を、それこそ耕すところから1人でやっていたのだろうな」

 なるほど、それでは毎日仕事になってしまっても仕方ないかもしれない、とマヤは思った。

 なぜなら、マヤが最初に農地にするように頼んだ面積は、農業担当者全員で協力することを想定してかなり広く用意してあるからだ。

 結果として、農業担当者で等分割したりすれば、1人の担当面積は広大になってしまう。

「でも、最初はみんな協力してた気がするんだけど、どうしちゃったんだろうね?」

「進めていくうちに、お互いのやり方で噛み合わないところが出てきたのだろうな。それでいつしかいがみ合うようになってしまったのだろう」

「やっぱりそういう感じか。うーん、どうしたらいいんだろ? とりあえず誰かにまとめ役を頼まないといけないのは確実として――」

 おそらく今回の事態は、まとめ役がいなかったこともよるものだ。

 なので少なくともまとめ役を作る必要があるというのと、そのまとめ役に全体としての方針を決定してもらい、役割分担をしてもらって、農業担当者が無駄なく働いて適切に休める状態を作る必要はあるだろう。

(なんだかあっちでやってた働き方改革ってやつみたいだね)

 問題は、誰にそのまとめ役をやってもらうかだ。

 農業の知識があって、魔法の知識もあって、できればエルフでもオークでも人間でもない人物が適任なのだが……。

(そんな人いなくない……? いや、1人いるか……)

 マヤがマッシュを見ると、気がついたマッシュがこちらを見返してくる。

「どうしたのだ?」

「マッシュってさ、農業のこととかってわかったりする?」

「まさか私にまとめ役をやれというのか? 確かに魔物師は薬草の栽培なども行うため農業の知識もあるが、生憎私の場合、農業関係は全て妻のブランに任せっき――」

「それだーーー!」

 マッシュの言葉を聞いたマヤの叫びに、近くにいたオリガやカーサだけでなく、集まっていた農業担当者たちも一斉にマヤの方を向く。

 一気に注目されたマヤだが、マヤはそれには気が付かない。

 マヤの頭の中には、この問題を解決してくれるかもしれない人物のことしかないのだった。
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