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幕間 キサラギ亜人王国の日常

食料大臣

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 マヤは早速農業担当者の取りまとめとなりうる人物、というかうさぎに会いに来ていた。
 
「ブランさーん」

 マッシュとの家族が暮らしている家の前で呼びかけると、中で少し物音がしたあと、マッシュの子どもたちが飛び出してくる。

「「「マヤさーん!」」」

「おわっと……みんな久しぶり、元気にしてた?」

「こらこら、マヤさんは王様なんだから飛び込んでいったりしたら失礼でしょう」

 飛び出してきた子ウサギたちの後から、白いウサギがゆっくりと姿を表した。

「そんなこと気にしなくていいよブランさん。私もかわいい子ウサギをもふもふできて嬉しいし」

「そうですか? マヤさんがいいならそれでもいいですけど……」

「うんうん、それでいいのそれでいいの。うふふふふ、もふもふだあ……」

 マヤは足元に群がる子ウサギ達を、しゃがみ込んでもふもふする。

 その柔らかくもふもふとした触り心地に、マヤはとろけた表情で子ウサギたちをもふもふし、子ウサギたちも撫でられて嬉しいのかどんどんとマヤの膝に乗ってくる。

「ここは天国だね。ねえ、この子たち私にくれない? 今なら私の権限でいろいろ――いたっ」

 マヤが子ウサギたちのもふもふに魅了され、やや危ない目でブランに交渉を持ちかけたところで、マヤの後頭部が何者かによって殴られた。

「誰がお前のようなもふもふ狂いにうちの可愛い子どもたちをやるものか! 全く、心配になってついてきてみれば、案の定ブランに危ない交渉を持ちかけおって……」

「マッシュ! ちっ」

「お前! 今舌打ちしただろ!? さては私がいないうちにうちの子どもに手を出すつもりだったな?」

「だってー、マッシュって私にマロンちゃんたちもふもふさせてくれないじゃん」

「それはお前がさっきのようにうちの子どもたちを連れて行こうとするからだろうが!」

「だって可愛いし―もふもふだしー、お持ち帰りしたくなっちゃうじゃん?」

「うちの子どもが可愛いのはわかるが、お持ち帰りしていいわけないだろう」

「あはは……マヤさんは相変わらず面白い方ですね」

「ブランよ、こいつのこれを面白いで片付けていてはいつか大変なことになるぞ?」

「あなたは相変わらず心配性ですね。マヤさんはそんな人ではないと思いますよ?」

「しかしなあ……」

 ブランは心配性なマッシュに苦笑すると、マヤの方に向き直った。

「それで、マヤさんは何で私のところにやってきたのですか?」

「そうだった! 実はブランさんにお願いしたいことがあって」

 マヤはキサラギ亜人王国の農業の現状と、それを解決するためにブランに農業の担当者達を取りまとめてほしい、ということを伝えた。

「なるほど、確かにそれは私も気になっていました。引き受けても構いませんよ」

「本当!? ありがとう、助かるよ!」

「それで、私は具体的には何をすればいいんですか?」

「とりあえず、農業担当者たちをまとめてもらって、キサラギ亜人王国全体として農業の進め方を決めてもらえるかな。その後は、それを効率化してくれると助かるな。それから――」

 マヤはこれからブランにやってもらいたいことを、今思いつく範囲ですべて説明した。

「わかりました。それでは早速取り掛かりますね」

「お願いね」
 
「そうでした、この仕事の時、私はなんと名乗れば良いのでしょうか?」

「そういえば決めてなかったね。そうだなあ……農業大臣、なんてどうかな?」

「農業大臣、ですか? それはどういう意味なのでしょう?」

「簡単に言えば、この国で農業関係者で一番えらい人かな」

「じゃあ農業担当の皆さんにはそう名乗って置きますね」

「うん、そうしてくれると助かるかな。ついでに農業大臣ってどういう意味かも説明しておいてくれる?」

「わかりました。あなた、子どもたちをお願いできますか?」

「ああ、構わんぞ。こっちの仕事は部下に任せられるからな」

「そうだ、マッシュは今日から警備大臣ね」

「なっ!? 突然何を言っているのだ」

「今までやってた仕事と変らないからいいじゃん」

「お前というやつは……」

「それじゃ、そういうことでよろしくね、2人とも」

 こうして、キサラギ亜人王国に2人の大臣が誕生した。

 この後、農業大臣となったブランによって、キサラギ亜人王国の農業は見違えるほど効率化され、農業担当者たちが休日もなく働く必要はなくなったのだった。
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