唾棄すべき日々(1993年のリアル)

緑旗工房

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第17話 生ゴミ

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経費削減で派遣組の机はなくなっていたが、派遣先と会社を行き来することになって俺の机はまだ生き残っていた。
俺の設計分は社内だけでは手が足りず、一部は下請けに製造をお願いしていた。
大した量ではなかったがなにしろ仕事が枯渇していたので、下請けの社長は大喜びしていた。
どこも厳しんだな。

ある日、仕事をしている俺の横にポンちゃんが来て話しかけてきた。

「定例課長会議はやめるみたいですよ。
課長もほとんどが派遣に出されているから、そっちを優先しろってことですかね。
それとも会議で話すようなこともなくなったのかも。
それに」

ポンちゃんは少し小さな声で続けた。

「それに、毎日のように役員会議をやっているみたいですよ」

俺は言った。
「どうせ資金繰りのことだろ、他に議題なんかないさ。
あ、そういえば見た?、入り口のホコリ取りのダスキンマット。
今までの半分の大きさに変えてやんの。
凄いよね、このセコさ」

ポンちゃんは本当ですかと言いながら入り口まで見に行き、笑いながら戻ってきた。
「よく見つけましたね、見事に半分でしたよ」

「見つけた俺も凄いけど、あそこまで削る会社も凄いよね」

俺達の横には下請け会社の女性が作業していたが、彼女は立場上聞こえないふりをしていた。
しかしマットが半分という滑稽かつ悲惨な話を聞いて笑いが込み上げてきたらしく、後ろ姿の方が震えていた。

俺は彼女に聞こえるようにわざと大きめの声で続けた。
「ダスキンマットを半分にするより、課長を半分にした方がいいんじゃねえかな。
ダスキンマットの方が会社に貢献してるみたいだし」

女性は身悶えしながら必死に笑いを堪えていた。

ウチにいる一部の無能な課長のことは、下請けさんにも伝わっていた。
そりゃ、あんなのと一回でも仕事したらあいつらの無能さはすぐに分かる。
社外の人にすら分かる無能さなのに、なぜ会社幹部には伝わらないんだろう。

俺はさらに続けた。
「粗大ゴミならともかく、ネクタイ締めた生ゴミが2つあるよな。
臭くってたまんねぇよ」

女性はたまらずに吹き出していた。

誰と誰のことをを生ゴミと思っていたのかはわからないが、俺は黒井と業田のことを言ったつもりだ。
きっとポンちゃんも同じ気持ちのはずだ。
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