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第18話 トップセールス
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当然だが、会社も手をこまねいていたわけではなく必死の努力をしていた。
これまで営業にはタッチしなかった社長だが、もうそんなことは言っていられない。
社長自らが得意先を訪問して、必死の営業活動をしていた。
中でも力を入れていたのが、一番仕事をもらっていた大手電気メーカーへの営業活動だ。
これまでは先方の主任か課長クラスまでとしか繋がっていなかった、というかそのクラスと繋がっていれば十分に仕事をもらえていたので必要もなかった。
しかし今となってはそのクラスではいくら頑張っても仕事は出てこなくなり、部長クラスに会っても仕事は出てこなかった。
必死になって努力した結果、なんとそのメーカーの会長に会えることになった。
会長は数年前に社長から退いた人とはいえ、大会社の元社長となれば今でも相当な権限を持っているはずだ。
その会長に泣きつけば多少なりとも仕事にありつけると思った役員たちは、小躍りして喜んだ。
しかし現実は全く違った、甘くなかったのだ。
社長と役員が揃って会長に会ってもらった時、会長が発した言葉は想像以上に厳しいものだった。
「おたくはトップセールスが6ヶ月遅い。早いところは1年前からトップが動いていますよ」
どうやらウチは危機感を持つのが遅すぎたようだ。
会長は検討しておきましょうというニュアンスのことを言ったらしいが、まあ社交辞令で動く気はなかったのだろう。
案の定、その後仕事の話が来ることはなかった。
このころになると業界全体が不況に喘いでいた。
ウチのように大量の仕事に忙殺されて不況に気がつかなかった会社も、それらの仕事が終われば否応なく現実と対面することになる。
気がつく時期は抱えている仕事の量や納期によってタイムラグがあるものの、遅かれ早かれ現実に直面する日が来る。
そして、どの会社の眼前にもバブル崩壊という荒野が広がっていた。
他社の噂もあちこちから伝わってきていた。
大手ソフトウエアハウスが給料遅配に追い込まれたという話を聞いた時はショックだった。
あの会社がそうなってしまうのか。
しかし、そこは大手メーカーの資本が入っていたので倒産だけはなんとか避けられたそうだ。
ウチはお得意様の大手電気メーカーの仕事がほとんどだが、別に資本関係があるわけではない。
形の上では独立系ソフトウエアハウスということにはなるが、そのメーカーにたよりっきりの小判鮫だ。
大手の資本が入っていても苦しいのに、ウチみたいな小さく弱い会社はどうなるのか。
不安しかなかったが、目先の仕事をこなしながら愚痴をこぼしあうことしかできなかった。
これまで営業にはタッチしなかった社長だが、もうそんなことは言っていられない。
社長自らが得意先を訪問して、必死の営業活動をしていた。
中でも力を入れていたのが、一番仕事をもらっていた大手電気メーカーへの営業活動だ。
これまでは先方の主任か課長クラスまでとしか繋がっていなかった、というかそのクラスと繋がっていれば十分に仕事をもらえていたので必要もなかった。
しかし今となってはそのクラスではいくら頑張っても仕事は出てこなくなり、部長クラスに会っても仕事は出てこなかった。
必死になって努力した結果、なんとそのメーカーの会長に会えることになった。
会長は数年前に社長から退いた人とはいえ、大会社の元社長となれば今でも相当な権限を持っているはずだ。
その会長に泣きつけば多少なりとも仕事にありつけると思った役員たちは、小躍りして喜んだ。
しかし現実は全く違った、甘くなかったのだ。
社長と役員が揃って会長に会ってもらった時、会長が発した言葉は想像以上に厳しいものだった。
「おたくはトップセールスが6ヶ月遅い。早いところは1年前からトップが動いていますよ」
どうやらウチは危機感を持つのが遅すぎたようだ。
会長は検討しておきましょうというニュアンスのことを言ったらしいが、まあ社交辞令で動く気はなかったのだろう。
案の定、その後仕事の話が来ることはなかった。
このころになると業界全体が不況に喘いでいた。
ウチのように大量の仕事に忙殺されて不況に気がつかなかった会社も、それらの仕事が終われば否応なく現実と対面することになる。
気がつく時期は抱えている仕事の量や納期によってタイムラグがあるものの、遅かれ早かれ現実に直面する日が来る。
そして、どの会社の眼前にもバブル崩壊という荒野が広がっていた。
他社の噂もあちこちから伝わってきていた。
大手ソフトウエアハウスが給料遅配に追い込まれたという話を聞いた時はショックだった。
あの会社がそうなってしまうのか。
しかし、そこは大手メーカーの資本が入っていたので倒産だけはなんとか避けられたそうだ。
ウチはお得意様の大手電気メーカーの仕事がほとんどだが、別に資本関係があるわけではない。
形の上では独立系ソフトウエアハウスということにはなるが、そのメーカーにたよりっきりの小判鮫だ。
大手の資本が入っていても苦しいのに、ウチみたいな小さく弱い会社はどうなるのか。
不安しかなかったが、目先の仕事をこなしながら愚痴をこぼしあうことしかできなかった。
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