唾棄すべき日々(1993年のリアル)

緑旗工房

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第16話 愚痴

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派遣先で俺が設計していたシステムは設計書がほぼ出来上がり、プログラム製造フェーズになってきた。
プログラム製造は派遣先の下請けがする予定だったが、他のシステムの仕事が予想以上に膨れ上がって、そちらに手を取られてしまった。
宙に浮いた俺の設計分は、俺の会社で作ることになった。
会社は仕事が入って喜んでいたが、俺は派遣先での作業に加えて会社に戻ってプログラマの製造支援もする羽目になり、忙しさが加速した。

会社と派遣先を行ったり来たりする生活が始まって肉体的にはしんどかったが、でも会社で情報収集ができるのは嬉しかった。
それよりも嬉しかったのが、愚痴が言えることだ。

派遣先ではうかつに愚痴も言えない。
もし派遣先の会社にボーナス大幅カットなんてネガティブ情報が伝わったら、そんな危ない会社に仕事は出せないとなりかねない。

もちろん愚痴を言い合ったところで、なんの解決にもならない。
しかし今はそれしかはけ口がない。
会社で同僚や後輩と愚痴を言い合っていると、その間だけは少し心が救われる気がした。


会社で作業していたある日、派遣先から戻っていたポンちゃんがいつものようにメガネをズリ上げながら俺のそばに来た。

「ボーナス8割カット発表の翌日、ウチの課の忘年会だったんですよ。
もう最低のタイミングで、みんな暗くてお通夜のようでしたよ。
自宅待機になっている連中も参加したんですけど、黒井課長がその連中に『もう会社には戻れないから新しい仕事を探せ』ってハッキリいってました」

黒井のことだ、自宅待機組が辞めてくれれば人件費削減で自分の手柄になると思ったのかもしれない。
あるいは本心からのアドバイスなのかもしれない。


このころになると自宅待機組の今後について様々な噂が飛び交っていた。
全員クビが決まっていてあとは時期を待つだけという噂もあったが、とりあえず4月までは様子を見るという話もあった。
全員クビにするという説やクビ組と復帰組に選別しているという説もあった。
どうなるのか会社にも分らないというのが正解なのかもしれない。

会社では様々な経費削減が行われていて、昼休みは蛍光灯を消してコピーは裏紙を使っていた。
そんなことをしてもたかが知れてるのだが、社員に意識付けしたいのか、それとも本当に1円でも節約したいのか。
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