唾棄すべき日々(1993年のリアル)

緑旗工房

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第4話 ソフト業界の現状

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俺の会社はソフトウエア開発業、ソフトウエアハウスとかソフト屋と呼ばれていた。
大型コンピュータのソフトウエアを開発する仕事だが、昔からこの業界は二桁成長を続けていて、同時に慢性的な人手不足が続いていた。
この当時、世間では3K仕事という言葉が流行った。
キツい・汚い・危険の頭文字で、いわゆるブルーカラーのことを指し、嫌われる仕事の代名詞になっていた。
ソフトウエア業界はバリバリのホワイトカラーだが、業界内では自嘲気味に3K仕事と呼ばれていた。
もちろん汚くもないし危険でもない、しかし労働時間が長くキツいのだ。
納期間際になれば残業や休日出勤は当たり前、徹夜だって一晩で帰れる保証などない。
それでキツい・キツい・キツいの3Kと呼ばれていた。
それでもパソコンが普及する前の時代で、コンピュータの技術者という知的で創造的なイメージの仕事なので人気があったし、また成長が続いている業界なので恒常的な人手不足が業界の特徴になっていた。
求人誌にはソフト屋の求人が数多く掲載され、未経験者歓迎・完全週休二日制といった文言が踊っていた。

当時はまだ週休二日制が珍しく贅沢な感がある時代だったが、大手に先んじて中小のソフト屋は争うように週休二日を採用していった。
給料も安く経営的にも安定さを欠く中小のソフト屋にとって、人材を募集するために使えた数少ない武器が週休二日だったのだ。
同じ理由で出勤時間が自由というフレックスタイム制度を採用している会社も珍しくなかった。

俺の会社も週休二日制でフレックスタイム、自由な雰囲気が身上の会社だった。
フレックスタイムと言っても実態は何時に行っても遅刻にならないだけで、運用はいいかげんだった。
遅く出社したら残業か休日出勤で辻褄合わせをしていたし、計画的に遅く出てくるような人は少数派だった。
要するに誰が何時に出社するかわからないような状態ではあったが、それが許される自由な雰囲気が取り柄の会社だった。
もっと言えば、この自由さがあるから安月給でも我慢するという雰囲気もあった。

しかし、その自由さは突然奪われた。
夏のボーナスが支給された直後に、突如会社から出社時間に関する規制が発表されたのだ。
その内容は、各課で決められた時間までに出社しないとボーナスを20%カットするという厳しいものだった。
事実上のフレックスタイム制撤廃とも言える内容で、自由が身上というか自由しか取り柄がないような会社なのにどうしたことだ。

俺の中に戸惑いと胸騒ぎが渦巻いた。
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