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続編/高宮過去編

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「弟さんはなんて名前?」

 終わる……と思ってたんだけど?ああ、これ以上聞いちゃだめなやつ~なんて思考にならなかった彼女は真っすぐに突っ込んで来るのだ。

「え?まだ続くの?」
 面食らったのは俺の方。

「なにも聞けてないけど」
「えー、話すことないって」
「ないわけない。聞く、これからご飯の時は駿くんの家族の話をテーマに食べる」
「……勘弁して」
 食に大して興味のない俺にさらに興味のない家族の話をさせる時間までついてきたらますます食に興味がなくなる。


「名前は?いくつ?今はなにしてるの?」
 諦める気はないらしい。そもそも彼女は決めたことはブレずに実行する。だからきっと家族に会うことも絶対諦めない、それは心のどこかで俺も諦めてはいることだった。


 はぁー、とデカいため息をこぼして俺もどこかで覚悟を決めた。大好きな子と結ばれたらまさかこんな面倒なことと向き合わないといけないなんて。それでも彼女を手離す理由にはならないから仕方ない、長年向き合わずにいた家族の話を俺は彼女にすることになる。


「弟の名前ははやて、俺の五つ下で今は何をやってるかは知らない。最後に会ったのは俺が大学受かって家を出る時だから……十三年前?家族とはもうそれ以来会ってない」
「一度も?実家に帰ったこともないの?」
 聞かれて頷く。


「連絡とかもないの?」
「あー、たまに父親からメールが来るかも。でもそれも生存確認みたいな感じじゃない?」
 ひと月に一度、数ヶ月に一度、半年に一度くらいと年月が過ぎる度回数は減るが父親からたまに「元気か」くらいのメッセージは届く。それに「元気だよ」とだけ一応返す。お互いの安否確認、そんなくらいの業務感覚で返事はしている。


「生存確認って……お母さんとは本当に連絡取ってないの?」
「取ってないね」
 あっさり言うから困った顔をされた。


「ね、燈子さん。家族がいたってさ、こんな風に生きてるヤツもいるんだよ。みんながみんな家族と仲良しこよしてもんでもない。血が繋がってたって他人みたいな家族もいるよ」
 俺からしたら彼女の方がよっぽど家族みたいで繋がりあえていると感じる。

 かまわれて、心配されて、抱きしめられて。


 ――愛されている。


 そんな幸せを俺はずっと知らなかった。だから俺は初めて家族を知った気がする。
 俺にとって彼女だけが唯一の家族、そう思っていた。
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