あの夜をもう一度~不器用なイケメンの重すぎる拗らせ愛~

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続編/高宮過去編

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 あれだけ彼女と繋がりたくて結婚を意識して、やっとその思いが叶いそうなのに結局叶わないまま日だけが過ぎている。叶わないのは俺のせいなのかもしれないけれど、それでも行動に移せないのは俺の人生において一番ネックな問題だからなのかもしれない。


「ただいまー」
 扉を開けたらエプロン姿の彼女が出迎えに来てくれた。


(可愛い)


 毎日こうやって俺の帰りを待ってくれている。俺の帰る場所はここ、ここ以外ないのだ。


「おかえりなさい、おつかれさま」


(もうこんなん嫁じゃん、籍さえいれたら終わるのになんでいちいち面倒くさいことしないとダメなわけ?)


「連絡してくれた?」
 俺の心のうちを読むように彼女がまた聞いてくる。


「あー、うーん、まだ」
「駿くん」
「うーん、ごめん、する……から待って」
「ねぇ、なにがそんなに嫌なの?」
「えーー」

 真面目で古風で割とせっかちな彼女。
 ルーティンや常識に結構うるさい。こうあるべき、とかこうしないと、と決めたことは割と徹底してやるタイプで、基本頑なである。
 まぁいいか、とかやりたくないことややらなくていいことなら徹底してやりたくない俺とは違って周り道もやらないとダメならしっかりやります、そんな性格は俺のこの逃げ回るような姿勢を全然許してはくれない。


「そろそろちゃんと聞きたい。駿くんの家族のこともまだ何にも知らないよ?結婚するんだから教えてほしい」
「教えるってなにを?何を知りたいの?」
「んー、じゃあまずは家族構成は?」
「父、母、弟」
「お兄ちゃんなの!?」


(なにその意外そうな反応)


 そう思ったのが表情でわかったのか苦笑いの彼女はそれを否定するように言う。


「お兄ちゃんって感じしなかったんだもん。甘え上手だから下の子なのかなって気がしてた」
「甘えるのは燈子さんの前だけ。それもこんなになったの燈子さんと付き合ってからだし」
「……なんかそれって私のせいってこと?」
「それは別にいいじゃん。てか、お兄ちゃん感ないの当たり前だよ。お兄ちゃんしてきてないし」
 吐き捨てるように言ってしまったら当然彼女が食いつくのがわかるのに、感情が先に動いてしまった。家族の話をするとそうなってしまう。いつも気持ちばかりが先行してろくな判断を下せない。


「お兄ちゃんしてないって……仲良くないってこと?」
「仲良いとか悪いとか……なんかそういうレベルでもないんじゃないかなー。そんな絡んでないしなー」
「絡まないってどうして?一緒に暮らしてたのに?」
「一緒に暮らすってさ、なんかもっと色々あるでしょ。こうやってつまんないことでも話したり一緒に飯食ったり、うーん、生活を共有するってことだよね?ただ同じ家にいるだけってのは暮らしてるってことになるのかな」
 うまく伝えられなくてとりあえず言った言葉だったけど案外彼女に響いたようで、途端に表情が暗くなった。俺が家族に対して感じている冷ややかな気持ちはどうやら伝わったらしい。

 あぁ、良かった。これでこの話も終わるわ……なんて俺の考えは甘かった。



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