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続編/高宮過去編
放っておけない(燈子)―1
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お母さんとうまくいっていなかった、そんな話をチラッとだけ聞いたのは付き合いだした頃。
私が彼を我が子のように愛してしまって引いていた気持ちを打ち明けたときにそんなことをこぼしてくれた。母親からの愛情をあまり受けていない、自分には関心のない人だったと言っていた。
「母親の記憶ってたいしてないなぁ。もうずっと会ってないし余計ないな、思い出すことさえないくらいないかも」
そのセリフは結構しっかりと覚えている。
私は母を思い出すことが多い。もう思い出しかないからかもしれないけれど、生きていたってよく思っていた。それは一緒に暮らしているのと離れているものの違いなのか、そんな風に思っていたけれどどうやら彼の場合はそういうニュアンスとは違うようだ。
朝が弱い彼が休みの日に何時に起きるのか、最初のころはいつまで寝るのか興味深く見ていてあえて起こさずにいたら昼前になっても起きないから辛抱溜まらず起こしに行った。
結論、起こさなかったら永遠に寝てしまうような人、それが分かったので休みの日は仕事の状況や前日の帰宅時間にもよるけれど10時までは寝させてあげている。
昨日はだいたい定刻の19時くらいに帰宅しているので寝る時間が遅いのは自分の都合、しっかりと10時には起こすことにする。
「駿くん、そろそろ起きようか。もう10時だよ?シーツ洗いたいし起きて」
「――」
「駿くんー、駿くーん」
相変わらずの綺麗な寝顔は見ているだけで癒されるし心がほんのりとあったかくなる。
(お母さんは……こんな風に駿くんを起こしたりはしなかったの?)
こんな無防備に眠っている我が子を愛しく思わない母親がこの世に本当にいるのだろうか。関心がないなんて本当にあるのか、聞けば聞くほど違和感と疑問しか沸いてこない。また勝手に自分をそういう風に乱暴に見極めて冷めているだけなのではないか、そう思っていても問いただせることはできない。
家族との確執はきっと他人の私にはわからないことがたくさんあると思うから。
「駿くん!起きて!!」
「――ン……」
「もう起きよ?ホットケーキ焼けた、チョコソースかけたよ?起きて食べない?」
「……ん、あとごふん……」
(もうこれ口癖なのかな、いっつもあと五分っていうし)
こういう何気ない日常を知ることは大事なことだと思う。暮らしているから知れることはたくさんあったしきっとこれからも知っていける。恋人では知り切れないこと、それは家族だから知れるのだと思うのに、彼にとっての家族への気持ちが薄いことが日に日に気になっていた。
私が彼を我が子のように愛してしまって引いていた気持ちを打ち明けたときにそんなことをこぼしてくれた。母親からの愛情をあまり受けていない、自分には関心のない人だったと言っていた。
「母親の記憶ってたいしてないなぁ。もうずっと会ってないし余計ないな、思い出すことさえないくらいないかも」
そのセリフは結構しっかりと覚えている。
私は母を思い出すことが多い。もう思い出しかないからかもしれないけれど、生きていたってよく思っていた。それは一緒に暮らしているのと離れているものの違いなのか、そんな風に思っていたけれどどうやら彼の場合はそういうニュアンスとは違うようだ。
朝が弱い彼が休みの日に何時に起きるのか、最初のころはいつまで寝るのか興味深く見ていてあえて起こさずにいたら昼前になっても起きないから辛抱溜まらず起こしに行った。
結論、起こさなかったら永遠に寝てしまうような人、それが分かったので休みの日は仕事の状況や前日の帰宅時間にもよるけれど10時までは寝させてあげている。
昨日はだいたい定刻の19時くらいに帰宅しているので寝る時間が遅いのは自分の都合、しっかりと10時には起こすことにする。
「駿くん、そろそろ起きようか。もう10時だよ?シーツ洗いたいし起きて」
「――」
「駿くんー、駿くーん」
相変わらずの綺麗な寝顔は見ているだけで癒されるし心がほんのりとあったかくなる。
(お母さんは……こんな風に駿くんを起こしたりはしなかったの?)
こんな無防備に眠っている我が子を愛しく思わない母親がこの世に本当にいるのだろうか。関心がないなんて本当にあるのか、聞けば聞くほど違和感と疑問しか沸いてこない。また勝手に自分をそういう風に乱暴に見極めて冷めているだけなのではないか、そう思っていても問いただせることはできない。
家族との確執はきっと他人の私にはわからないことがたくさんあると思うから。
「駿くん!起きて!!」
「――ン……」
「もう起きよ?ホットケーキ焼けた、チョコソースかけたよ?起きて食べない?」
「……ん、あとごふん……」
(もうこれ口癖なのかな、いっつもあと五分っていうし)
こういう何気ない日常を知ることは大事なことだと思う。暮らしているから知れることはたくさんあったしきっとこれからも知っていける。恋人では知り切れないこと、それは家族だから知れるのだと思うのに、彼にとっての家族への気持ちが薄いことが日に日に気になっていた。
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