あの夜をもう一度~不器用なイケメンの重すぎる拗らせ愛~

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続編/燈子過去編

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 伝えたところで伝わらない思いの虚しさも俺は知っている。

 自分で伝えないことを選んだならそれを受け止めるのは自分の責任だ。それでも結局残るのは虚しさしかないんだけど。


「肩書とかイメージってただの仮面みたいなものなんですけどね。周りは結局そこしか見てくれてないじゃないですか。本音を知ったらそんな人と思わなかったとか勝手すぎません?」
 俺の言葉に織田さんはクスリと笑って頷いてくれる。


「本当にそうですね……なのに僕は肩書を選んだんです。肩書ばかり見られて嫌気がさしていたのに、その肩書を手放せなかった」


 国道は時間帯のせいか少し混んでいる。
 夕焼けがひどくきれいに見えた。こんな時間に帰るのは久しぶりだった。静かになってしまった車内。慰めじゃないけれど織田さんに言った。


「……織田さんほどの肩書なら仕方なくないですか?俺でも選んでるかもしれない」
「それだけ残されても日毎その肩書に苦しめられてますけどね」
「それはしんどいなぁ」
 笑ったら織田さんも笑っている。後悔している風には見えない、でも失くしたものへの悔しさは感じる。


「城内さんが……タイミングって言ってましたよね。織田さんから教わったって」
「あぁ、そんなことも言ったかな」
「それが答えじゃないんですか。失う時も手に入れる時も、どの時もきっとそのタイミング、必然な気がします」


 ―目的地が近づいています


 機械的な声が車内に響いてしんみりしていた空気と会話が途切れる。


「ここから先は路地になっちゃうんでもうその辺で良いです、入り込むと出にくいかも」
「そうですか。ではちょっと停めるので待ってくださいね」
「本当に助かりました、ありがとうございます」
「いえ、高宮さんとはもう少し話ししたかったから会えてよかった、僕も嬉しかったです」
 社交辞令には聞こえなくて単純に嬉しかった、そういう気持ちを人に持ったのは本当に久しぶりだったからだ。そのまま織田さんと別れて店に向かったら彼女はいなかった。


「駿くん!元気ー?」
 久しぶりに会う麻里奈ちゃんは相変わらず元気そうだ。


「仕事中にごめんね」
「ごめん、燈子にコンビニに支払い頼んで今出てるの。それ戻ったら上がってもらうから、奥で待ってて」
「そうなの?ごめん、俺も予定が変わってはやく着けたからさ……携帯に連絡入れておいたんだけど……」
 そこまで言ってズボンのポケットを探ってハッとする。


(やば、携帯がない)


 織田さんの車に落としたかもしれない。


「麻里奈ちゃん、ほんと悪いんだけどさ……俺の携帯に電話かけてくれない?」
「え?ないの?」
「うん、心当たりはあるんだけど手元にあるかもしれないし鳴らしてくれる?」
「いいけど……番号は?」
「090-XXXX-XXXX」
 麻里奈ちゃんが携帯をかけてくれているが自分の身の回りで鳴っている気配がしない。


(最悪だ――運転してたら気づかないよな)


「あ、もしもし」

 そう思っていたら麻里奈ちゃんが電話口に声をかけて繋がったことが分かる。すぐに引き取るサインをしたら麻里奈ちゃんが携帯を差し出してくれた。


「もしもし、高宮です」
『あぁ、良かった。動く前に気づいたからすぐに追いかけたんですけど見失って』
「本当にすみません、送ってもらった上にご迷惑をおかけして。もしかして車から降りてくれてますか?あー、申し訳ないです!戻ります、車停めてもらったとこまで行きますので織田さんも戻って下さい、はい」
 連絡が取れて安心した。借りていた携帯を麻里奈ちゃんに返そうとしたらその手を掴まれた。


「駿くん、今何て言った?」
「え?」
「今……その」
「ごめん、ちょっと携帯受け取りに行くからあとでもいい?すぐ戻るから」
 麻里奈ちゃんの言葉に愛想みたいな返事しか出来ず神経がもう織田さんに向いていた。店を出て降ろしてもらった場所まで走って戻ると車が見えた。


「織田さん!」
 駆け寄ると顔を上げてくれて目があう。


「本当にすみません、ナビ入れたときかな、うっかり落としていたみたいで……」
「全然、早く気づけて良かったです。はい」
 差し出された携帯を受け取ってお互いホッとした空気が流れたときだった。


 すぐ近くでドサッと何かが落ちる音がした。

 その物音になんとなく視線を向けた。織田さんも俺とシンクロするようにそちらを向く。



 そこには青い顔をした彼女がいた。

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