あの夜をもう一度~不器用なイケメンの重すぎる拗らせ愛~

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続編/燈子過去編

迷わない心(高宮)―1

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 駆り出されるかもしれないと冷や冷やしていた外部監査は案外スムーズに終わりそうで俺は大した招集もかけられず基本自分の業務だけをする日々を送っていた。打ち合わせから戻ろうとしていたとき、事務所の中がなにやら騒がしい。女子社員の子たちがなんだか黄色い声を上げて賑わっている。


「本当ですか!ぜひお願いします~」
 貴島さんの良く通る声が耳に届いてまた仕事もせず彼氏探しに躍起になっているのかと内心呆れ気味で事務所に足を踏み入れたら城内さんがいた。


「お疲れ様です」
「どうも、お疲れ様です」
 にこりと微笑まれたので刷り込まれた処世術で同じようににこりと返す。癖づいた習慣はもはや息をするくらい簡単にできてしまうから恐ろしい。それでも昔よりずっと気楽に出来るようになった。実際事務所の女の子たち曰く、「最近の高宮さんなんだかつめた~い」だそうだ。

 俺はもともと冷たい人間です、と心の中で呟くけれどそんな風には見えないように過ごしていた手前仕方ないのか。彼女と暮らすようになってからは自分が周りにどんな風に映っても本当にどうでもよくなっていたし、そこまで周囲に気を使って生きることがなくなっていた。


「お借りしていた資料の返却にきました。あとこちらのUSB、高宮さんにお預けしてもいいですか?」
「大丈夫ですよ、お預かりします」
 差し出されたUSBを受け取ろうとしたらグッと力を込められた。その違和感に気づいて城内さんを見ると綺麗にメイクされた瞳がジッと奥を見つめてくる。


「もう少しだけ資料運びが残っているので手伝っていただけません?一回で運ぶには人手が欲しくて……お忙しいですか?」
「――いえ、わかりました」
 これはもうハッキリ断らないとめんどくさいな、そんな風に感じて仕方なくそう返事したら貴島さんが嬉しそうに城内さんに声をかけてくる。

「本当に楽しみにしてます~、よろしくお願いしまぁす♡」
 その言葉に城内さんは妖艶に微笑んで一緒に事務所を出て歩き出してから聞いてみた。


「なんですか?なんかうちのものが余計なこといいました?」
「いえ、合コンをね、セッティングしてくれって。弁護士とお近づきになりたいみたいで貴島さん?」
「あぁ……なんかすみません」
 頼むから外部にまで恥を晒さないでほしい……そんな気持ちで謝った。

「いいえー、ギブアンドテイクですよ。私だって慈善事業するほど暇じゃないしお人好しでもいい人でもないです。色々お話ししてくれましたよ?彼女」
「え?」
 なんだか嫌な予感しかしなかった。貴島さんは本当に口が軽い。仕事のことでもプライベートなことでもどこでも誰にでも話してしまうところがある。余計なことしか言っていない気がして思わず聞いてしまった。


「何言いました?なんか社外秘でもしゃべりました?」
「ふふ、まぁ秘密って言えばそうなるのかなぁ」
 会議室の扉を開けながらおかしそうに言う。机には確かに数冊のファイルが積まれているだけで人は誰もいなかった。静かな部屋に二人きり、城内さんがじっと俺を見て問いかけてくる。


「お付き合いしてる方がいるのは本当ですか?」
 城内さんがためらいなく聞いてくる内容に貴島さんから聞き出したネタはそれか、となんだか笑えてきた。社外秘かと思って一瞬焦った気持ちを返してほしいくらいしょうもない内容だった。


「本当です」
「本気のお付き合い?」
「はい」
 ふぅん、と不思議そうに見て言ってくる。


「高宮さんって会った瞬間に思いました、同族かなって」
 城内さんが不敵な笑みを掲げて言ってきた。
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