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続編/燈子過去編
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人事に呼び出されて関連会社の事務所に顔を出したとき正面玄関でばったりと。入り口で会った瞬間、お互いに声を発した。
「「あ」」
向こうも私を覚えていた。
雨の中ずぶ濡れで、挙句泣きじゃくってボロボロだった私をその人はちゃんと覚えてくれていた、そしてもちろん私だって覚えていた。
ハッキリ言って忘れられるわけがなかった。
あの時と同じように綺麗なスーツに身をまといとても紳士的な姿に改めて見惚れてしまった。
「ピアス、よくお似合いですよ。本当に良かったですね」
耳に心地よい声でそんな優しい言葉を投げられて勝手に胸がドキドキした。
「その節は本当にご迷惑をおかけしました、本当にありがとうございました、諦めの気持ちで探していたので見つけてもらえて本当に嬉しくて……」
「僕は大したことは……持ち主のもとに戻りたかっただけでしょう、良かったです」
優しい声は発する言葉まで優しい。
「こちらにお勤めだったんですね」
「はい、本体の方へ出向しております。美山と申します」
「今回こちらの監査で参りました、織田と申します」
私なんかにも丁寧に名刺をくれてそこに記された法律事務所が多数の法律顧問先を抱えている大手の法律事務所だとのちに知る。その人は平凡な日常生活をしている私とは関わることのないようなビジネスロイヤーだった。
「スーツ……大丈夫でしたか?」
「え?」
名刺を受け取ってからの開口一番がそれで予期していなかったのか少し驚いた表情を見せた。
「気になってたんです、きっと仕立てのいい高いスーツだったんじゃないかって。あんな雨の中濡れさせてしまって……台無しにしてしまったんじゃないかって」
「いえ、お気になさらず。出先で雨に降られることなんかよくありますから気にしないでください」
「でも……あの時もなにもお礼も出来ずで、ずっと気になっていたんです」
「なら、今晩空いていませんか?」
(え?)
「甘えます、あの時のお礼も兼ねて、付き合ってもらえませんか?」
突拍子もないその人の突然の誘い。断る理由も見つけられず、断る術もわからず、なによりあの時のお礼を前に振りかざされたら何も言えない。
私は頷いて夜に待ち合わせる約束をした。
それからだ。
その人――織田さんと関係が始まっていくのは。
「「あ」」
向こうも私を覚えていた。
雨の中ずぶ濡れで、挙句泣きじゃくってボロボロだった私をその人はちゃんと覚えてくれていた、そしてもちろん私だって覚えていた。
ハッキリ言って忘れられるわけがなかった。
あの時と同じように綺麗なスーツに身をまといとても紳士的な姿に改めて見惚れてしまった。
「ピアス、よくお似合いですよ。本当に良かったですね」
耳に心地よい声でそんな優しい言葉を投げられて勝手に胸がドキドキした。
「その節は本当にご迷惑をおかけしました、本当にありがとうございました、諦めの気持ちで探していたので見つけてもらえて本当に嬉しくて……」
「僕は大したことは……持ち主のもとに戻りたかっただけでしょう、良かったです」
優しい声は発する言葉まで優しい。
「こちらにお勤めだったんですね」
「はい、本体の方へ出向しております。美山と申します」
「今回こちらの監査で参りました、織田と申します」
私なんかにも丁寧に名刺をくれてそこに記された法律事務所が多数の法律顧問先を抱えている大手の法律事務所だとのちに知る。その人は平凡な日常生活をしている私とは関わることのないようなビジネスロイヤーだった。
「スーツ……大丈夫でしたか?」
「え?」
名刺を受け取ってからの開口一番がそれで予期していなかったのか少し驚いた表情を見せた。
「気になってたんです、きっと仕立てのいい高いスーツだったんじゃないかって。あんな雨の中濡れさせてしまって……台無しにしてしまったんじゃないかって」
「いえ、お気になさらず。出先で雨に降られることなんかよくありますから気にしないでください」
「でも……あの時もなにもお礼も出来ずで、ずっと気になっていたんです」
「なら、今晩空いていませんか?」
(え?)
「甘えます、あの時のお礼も兼ねて、付き合ってもらえませんか?」
突拍子もないその人の突然の誘い。断る理由も見つけられず、断る術もわからず、なによりあの時のお礼を前に振りかざされたら何も言えない。
私は頷いて夜に待ち合わせる約束をした。
それからだ。
その人――織田さんと関係が始まっていくのは。
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