あの夜をもう一度~不器用なイケメンの重すぎる拗らせ愛~

sae

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本編

38話・あなただから(高宮)

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 人に好意を抱いても、それが好きかわからない。好きと伝えることができなくなった俺にそれを確認する術がなかった。だって受け止めてくれる相手がいないから。

 好きと言われることはたくさんあった。これが恋なのか、愛なのか……身体を重ねても、好きと耳にしても心まで震えることはない。一時の寂しさと虚しさを埋めるだけ。埋まったと思っても塞ぎきれない心の隙間はまたすぐにその感情を流し込んでくる。

 けれど自分から踏み込むことが怖くてできない。
 拒絶されたくない、理解できないだろうと線を引かれたくない、こっちへ来るなとまた言われたらと思うと距離なんか詰められない。

 わからなくなるばかりだ。人との気持ちの通わせ方が、通ったところでなにでそれを繋ぎとめればいいのか。

 結局――離れていくんだろう?

 そう思ったらもう……誰の手も取れなくなってしまった。


 人は勝手に自分の理想像を創り上げて俺にそれを求めてくる。
 無意識にそれに応えてまた自分の首を絞めた。
 どんどん生きづらくなる、理解し合える人が減っていく、求められることだけが増えてまた苦しくなる。
 相手の要求ばかりに応える日々にふとしたとき気づく。


 ――俺は、いつそのままの自分を晒せる日が来るのだろうか。


 そんな俺を救いあげてくれるような人はもういないのだろうか。なんにもない、無防備な俺を抱きしめてくれる人はいないのだろうか。


「あんな風に……体を預けた俺を善意で支えてくれたのは美山さんが初めてだった」


 あの夜、必死に、心から心配してくれてた瞳はいまでも脳裏に焼き付いている。背中をさすられて労わられて苦しみの中から解放されるような感覚が体を襲ってきた。与えられることに慣れていない、それを当たり前と思って受け入れてきたことがない。だから戸惑いもあった。これを体に馴染ませてしまったら――戻れなくなる、そう思った。


 忘れられるわけがない。忘れられるわけがなかった。


「誤解を……されてるかと」
「え?」
「多分、いや絶対」
 それだけはどうしても伝えたい、伝えねばならないしその誤解こそ解きたいから。

「勘違いしないでください」
「……え?」
「美山さんだからです」

 美山さんだったから――目の前の彼女を見つめて真剣に言った。

「あなただから抱いたんです。あれはその場のノリとか雰囲気とかでもなく、あなたのことを抱きたくて抱きました」

 彼女の瞳が未だかつてないほど見開かれた。
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