あの夜をもう一度~不器用なイケメンの重すぎる拗らせ愛~

sae

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本編

39話・熱い手に抱きしめられて(燈子)

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 真剣な言葉に絶句した。
 彼の口から溢される気持ちの数々にも驚きはあったけれど最後の言葉はすべてを吹っ飛ばすほど驚いた。

「……え?」
「――やっぱり誤解してますよね?」
「え、だって……」
「ちゃんと頭は覚醒してたんで。吐いたあとはわりかしクリアになってましたし、酔ってましたがボケてはないです」
 そうだったのか――と、間抜けにも思った。


(もう半分以上寝ているものだと思っていたんだけど……そうなんだ)


「も、もう感覚でされてるのかなって……」
「誰にでもガッツいていたと?」
「……えっと」
 聞かれて言葉を選ぶもののうまい言葉が見つからない。つまり図星である。

「ひどくないですか?」
「え?!ご、ごめんなさい」
「いや……俺、クズみたいな付き合い方してきましたけど、ワンナイトとかはしたことないんで。誰でもいいとか一番したことないです」
「あ、そ、そう、なんですか」
 そんな告白を聞かされてより困惑。えっと、それはつまり、どういうことだ?

(ワンナイトでは、ない?女の子とは遊ばない?え?じゃあなに?私とは、なんだったの?)

 頭がこんがらがってきた。

「背中をさすられて、かけてくれる声がめちゃくちゃ優しくて、あー、すごい心配してくれてるんだなぁってわかって気が緩んで……帰るって言われたらもう手を取ってました。帰したくないなって本気で思ったからです」
 あの日と同じような熱い手に手を触れられた。

「抱きたいって衝動的に思いました。細胞が言う感じ?ぶっちゃけ彼女もしばらくいないし、仕事のストレスもあったしで溜まってたってのは事実ですけど――においが……」
 そう指先をいじりながら困惑したように言う。

「なんかめっちゃ甘い匂いするんですよ、美山さんって。なんなんですか?なにかつけてます?」
「な、なにも……香水とか苦手なので。あ、柔軟剤?」
「そんなもんにいちいち興奮しませんよ」
「でも本当になにも……ひゃ!」
 耳の裏あたりに彼がいきなり鼻を摺り寄せてきて身が縮んだ。


(い、いきなり急接近はやめてほしい!!)


「なんだろう……甘い……美山さんにしかない俺にしか感じない匂いがする」


(―――そ、そのセリフ……なんかダメ、めちゃくちゃ恥ずかしい!!)


「本能的に感じるのかなぁ、ずっと嗅いでられますよ俺。このまま、ずっと」
 そう言って腰に腕が巻き付いてきて彼にそっと身体を引き寄せられた。

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