あの夜をもう一度~不器用なイケメンの重すぎる拗らせ愛~

sae

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本編

20話・溢れそうになる想い(高宮)

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 言えるわけがない。彼女に――”忘れたくないんです”そんなセリフ言っていいわけない。
 言ったところでどうにもならないし、俺自身どうしたいかもわからない。

「色々悩ませたみたいですね。すみませんでした。私は大丈夫なので、高宮さんもどうかこれ以上お気に病まないでください」
「美山さん……」
「それがいいんです、そうしてください」
 ピシャリと言い切って深々と頭を下げると、彼女は席を立ってしまった。背を向けてしまう、呼び止めないと――と、頭の中ではわかっている、でも声をかけれなくてまた一人俺は取り残された。あの朝と同じように声もかけれず、立ち去る腕も取れない。

 また、追いかけられない。
 
 あの日の朝が再現されるようだ。寝室の扉を静かに閉めた彼女が駆け足で部屋を出て行ったのが足音でわかった。まるで逃げるようだった。それを追いかけてくるな、そう取った。でもそれも自分の都合のいい解釈だろう、そう思っていたのにあながち間違いでもないのか。

 そうか……美山さんは――。


「――情けな……」


 自分にうんざりする。
 謝るつもりが逆に謝られて慰められて挙句気を遣われた。何が情けなくて虚しいって、彼女ばかりに俺の気持ちを汲ませたこと、そして、彼女は俺と越えた一線をただ忘れたいと思っているのだと知らしめられただけということだ。


「もう、私の方には来ないで」

 ありがとう、もう別れよう?――そう言って別れたあの時の彼女は最後にその言葉を吐いて俺に背を向けて離れていった。その言葉通り俺を避け、距離をあけ、目も合わせてくれなくなった。そこまで明らかな態度と俺に対しての決別の意思を強く感じたらもう何を言えばいいのかわからない。何を言ってももう俺たちの心が通い合わないと感じた。

 あの時の言葉がずっと胸に引っかかって離れない、それは大人になった今でもだ。


 好きでたまらなかった、その子にもう来るなと言われた。同じ世界に生きているのに、なぜそんな線引きをされるのか。俺と君との間にはどんな見えない壁があるんだ。その壁は俺にだけ見えなくて、突き放された言葉はそれから俺の生き方に浸透していってしまった。


 そして今また、あの時と同じような虚無感に襲われている。

 同じだ、彼女もまた俺とはもう関わりたくないと思っているのだ。関係を断ち切りたい、そう思っている。それをこの時瞬時に悟ってしまった。

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