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本編
19話・舞い戻る記憶(高宮)
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「……警察に行きます、俺のこと訴えてください」
テーブルに頭を擦り付けてそう言った。同意どころか了承も許しもない完全なる強姦ではないか。
(久世じゃないけど、マジでゲスだった――シャレにならん)
悶々と項垂れている頭の上に、プッ、と笑い声が落ちてきたから恐る恐る見上げると彼女が堪えきれないように笑っている。
「訴えるって……そんな……ふふ」
(――全っ然笑えないんですけど)
「あ、ごめんなさ……だってそんな高宮さん、その初めて見たから」
彼女はおかしそうにまた笑った。
「あーーー、えっと……あーー、本当になんとお詫びしていいのか……」
「謝らないで下さい」
言葉を選ぶ俺に彼女はピシャリと言った。
「私だってもういい大人なんです。そんな風に一人で責任感じたりしないでください。お願いします」
逆に頭まで下げられて戸惑ってしまう。彼女が頭を下げないといけない理由は一ミリもない。むしろ頭を下げられて余計居たたまれなくなって頭を抱えてしまった。
「いや、そういう話とはまた違いますから。介抱してもらって迷惑かけてる上に俺――」
「朝まで私が部屋にいたのは……その、気を失ってしまってそのままで。目が覚めた時にもう帰ろうとは思っていたんですけど……腕の拘束が……解けなくて、すみません」
(いや、もう謝るのは俺の方で美山さんが謝ることはなにひとつないのだが)
話を一通り聞いたらとたんに扉が開くように記憶の風景が見えてくるから不思議だ。あんなに思い出せなかったはずなのに彼女の口から聞かされるあの夜が朧気でもだんだんクリアに思い出されてくる。
彼女が必死で鍵を出そうとしていたこと。
俺の身体を細い体が一生懸命支えようとしていたこと。
吐く俺の傍にずっとついて背中をさすっていてくれたこと。
(なんであの時間を忘れていられたんだ……クソ過ぎて死ねる)
「とにかく、そんな訴えるとか物騒な話ではないです。むしろそこまで高宮さんが思い詰めるならやっぱり忘れて下さい。それが一番いいです、お互いに」
真面目な顔で真っ直ぐに言われて言葉に詰まった。彼女から忘れたいと言う気持ちをヒシヒシと感じたからだ。俺とのことは何もなかったことにしたい、そう聞こえる。
(美山さんには忘れられるって言うことか――)
俺と過ごしたあの夜のことを。
あんなに肌が焼け溶けてしまいそうなほど熱く抱き合ったのに。
(俺は全然忘れられそうにないんだけどな……)
その思いを言葉になど出来るはずがなかった。
テーブルに頭を擦り付けてそう言った。同意どころか了承も許しもない完全なる強姦ではないか。
(久世じゃないけど、マジでゲスだった――シャレにならん)
悶々と項垂れている頭の上に、プッ、と笑い声が落ちてきたから恐る恐る見上げると彼女が堪えきれないように笑っている。
「訴えるって……そんな……ふふ」
(――全っ然笑えないんですけど)
「あ、ごめんなさ……だってそんな高宮さん、その初めて見たから」
彼女はおかしそうにまた笑った。
「あーーー、えっと……あーー、本当になんとお詫びしていいのか……」
「謝らないで下さい」
言葉を選ぶ俺に彼女はピシャリと言った。
「私だってもういい大人なんです。そんな風に一人で責任感じたりしないでください。お願いします」
逆に頭まで下げられて戸惑ってしまう。彼女が頭を下げないといけない理由は一ミリもない。むしろ頭を下げられて余計居たたまれなくなって頭を抱えてしまった。
「いや、そういう話とはまた違いますから。介抱してもらって迷惑かけてる上に俺――」
「朝まで私が部屋にいたのは……その、気を失ってしまってそのままで。目が覚めた時にもう帰ろうとは思っていたんですけど……腕の拘束が……解けなくて、すみません」
(いや、もう謝るのは俺の方で美山さんが謝ることはなにひとつないのだが)
話を一通り聞いたらとたんに扉が開くように記憶の風景が見えてくるから不思議だ。あんなに思い出せなかったはずなのに彼女の口から聞かされるあの夜が朧気でもだんだんクリアに思い出されてくる。
彼女が必死で鍵を出そうとしていたこと。
俺の身体を細い体が一生懸命支えようとしていたこと。
吐く俺の傍にずっとついて背中をさすっていてくれたこと。
(なんであの時間を忘れていられたんだ……クソ過ぎて死ねる)
「とにかく、そんな訴えるとか物騒な話ではないです。むしろそこまで高宮さんが思い詰めるならやっぱり忘れて下さい。それが一番いいです、お互いに」
真面目な顔で真っ直ぐに言われて言葉に詰まった。彼女から忘れたいと言う気持ちをヒシヒシと感じたからだ。俺とのことは何もなかったことにしたい、そう聞こえる。
(美山さんには忘れられるって言うことか――)
俺と過ごしたあの夜のことを。
あんなに肌が焼け溶けてしまいそうなほど熱く抱き合ったのに。
(俺は全然忘れられそうにないんだけどな……)
その思いを言葉になど出来るはずがなかった。
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